2014/09/05

KDDIの災害時の通信確保への取り組み

9月は防災月間。身の回りのさまざまな防災対策を見直す時期でもある。東日本大震災では、KDDIでも、東北地方を中心に、au携帯電話基地局や、auひかりをはじめとする固定回線、さらには国際通信を担う海底ケーブルにも障害が生じた。KDDIは総力を挙げて復旧・復興を行い、au携帯電話基地局は、震災発生から2カ月弱後の4月末には復旧フェーズを完了、半年後には復興を完了したが、このときの教訓を生かして、復旧・復興対策の強化を続けている。KDDIの防災対策を、これまでに掲載した記事を中心に振り返る。

基地局の強化

東日本大震災時には、東北6県で1,933局のau携帯電話基地局が停波したが、その77%は停電によるものだった。その教訓を踏まえ、KDDIでは、電力会社から供給される電力、基地局に設置した太陽光発電、同じく基地局に設置した蓄電池という3つの電源を利用する「トライブリッド基地局」の整備と、役所や主要駅など災害時の防災拠点となる場所の基地局のバッテリー24時間化に取り組んだ。2013年3月までに全国でトライブリッド基地局100局の設置と全国2,000基地局のバッテリー24時間化を完了した。



また、首都圏における大規模災害対策として、基地局10局で首都圏エリアをカバーする「大ゾーン基地局」の運用を開始した。これは主に緊急用通信の確保を目的としたもので、4G LTEによるデータ通信にも対応している。

災害時のエリア確保

東日本大震災後に被災地での通信確保に活躍したのが、地球上どこでも通話ができる衛星携帯電話や、停電した基地局に電力を供給して復旧する移動電源車・非常用発電機、速やかに現地に移動して携帯電話エリアを作るau車載型基地局などである。KDDIは、これらの設備の増強を進めており、平常時には、花火大会やイベントなどでのトラヒック対策に活用している。2014年7月には、4G LTEでの大容量での通信を可能にする「キャリアアグリゲーション」対応の車載型基地局を導入した。

さらに、陸上からのエリア復旧が困難な場合を想定して、海上保安庁などと共同で、海上の船舶に可搬型基地局を設置して沿岸部にエリアを形成する「船上基地局」の実証実験を2012年11月、2014年5月の2度にわたって行っている。2014年の実験では、オムニアンテナ(無指向性アンテナ)を用いて10㎞以上の距離で通信が可能なことが確認された。

いざという時に備えた訓練

KDDIの各拠点では、日頃から災害時を想定した復旧訓練を行っているが、毎年3月には全国のエンジニアが参加して、首都圏直下型地震を想定した大規模な模擬訓練を行っている。その内容は、車載型基地局や可搬型基地局による災害時の拠点通信の確保や断線した光ケーブルの復旧などだ。









また、今年8月には、「集まれたスタッフだけで災害対策を行う」という、より現実に即した抜き打ち訓練も行っている。

他にも、津波の影響を受けない海底線中継所の新設、無線エントランス回線の増強、au災害復旧支援システムの導入など、さまざまな取り組みを行っている。

災害時における公衆無線LANの活用

災害時には、公衆無線LANも活躍する。KDDIでは2012年に大規模災害時における「au Wi-Fi SPOT」の無料開放を発表。災害時には他社ユーザーでも、au Wi-Fi SPOTを無料利用できるようにした。



また、2014年6月には、通信会社各社が参加する無線LANビジネス推進連絡会が災害用SSID「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)を発表した。災害時には各社の提供している公衆無線LANを統一IDで相互に利用できるようになる。2015年3月に仙台で開催される「国連防災世界会議」で、災害用統一SSIDによる無料開放実施を予定しており、各通信事業者が準備を進めている。

自衛隊との協力体制

災害時の被災地における通信手段復旧のために、防衛省および陸上自衛隊の各方面隊と「災害時における通信確保のための相互協力に関する協定」を締結している。具体的には、通信手段を確保するために活動するKDDIに対して、自衛隊は物資の輸送や各種施設・設備の使用、燃料・資材等の物資および機材の貸し出しなどの協力を行う。KDDIは自衛隊に対して、衛星携帯電話やau携帯電話の貸し出しを優先して行う。

災害情報アプリの提供

緊急地震速報をはじめとする「緊急速報メール」には、auで現在販売している携帯電話・スマートフォン全機種が対応。災害用伝言板、災害用音声お届けサービス、自治体が発信する情報や災害情報ポータルを一覧できる災害情報アプリも提供している。

新たな挑戦

災害時にもつながりやすいネットワークを実現するための技術として、KDDI研究所でも複数のネットワークを利用して通信を確保する「重層的通信ネットワーク」が研究されている。

災害時のより早い復旧、そして災害時にもつながる通信を目指し、これからもKDDIはたゆまぬ努力を続けていく。

文:板垣朝子

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