2013/11/12

情報通信分野における国際貢献 2 KDDI財団の海外コンサルティングサービス

公益財団法人KDDI財団が行っている国際協力事業についてのレポート。第2回は「海外コンサルティング」についてお伝えする。

日本政府や国際機関の開発援助とリンク

コンサル契約の署名式

KDDI財団では、開発途上国がICTインフラを導入する際に、建設プロジェクトがスムーズに実施されるように、さまざまな角度から支援する海外コンサルティングサービスを提供している。 KDDI財団の実施している海外コンサルティングの多くは、日本の政府開発援助(ODA)や国際機関による援助の対象となったプロジェクトに対して行われている。

開発途上国におけるICTインフラの整備は経済発展のための重要な要素だが、援助国が開発援助資金を提供するだけでは、最適なICTインフラの導入は難しい。そこで、高い技術力を持ち、海外業務の豊富な経験を有している企業や団体が現地国のプロジェクト実施機関に対してコンサルティングサービスを提供することで、ICTインフラを確実に導入することができる。コンサルタントは、途上国政府の情報通信部門など、プロジェクトを実行する側が国際競争入札などを行って選定されることが多く、KDDI財団も競争入札を経て海外コンサルティング業務を受注している。

海外コンサルティングで提供すること

海外コンサルティングには、受注する業務内容により、さまざまなケースがあるが、今回はプロジェクトの案件形成の段階から参加し、総合的なコンサルティングを行っているカンボジア国での現在進行形の事例に焦点を当て、具体的な内容を紹介する。

光ファイバー敷設ルート

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現在、カンボジア国では、2005年10月に締結された日本の円借款による、「メコン地域通信基幹ネットワーク整備計画」(Greater Mekong Telecommunications Backbone Network Project)が実施されており、KDDI財団は、この事業のコンサルティングサービスを、他のコンサルタント会社とコンソーシアムを形成し、提供している。

カンボジア政府は、全ての州都を光ケーブルまたはマイクロ・ウェーブで結ぶ基幹通信網の整備を計画しており、なかでも全人口の45%が居住し経済活動の中心地となっている北西部のコンポンチャムから首都プノンペン、さらにカンボジア国唯一の外港であるシハヌークビル港につらなる中部地域の通信ネットワークの整備は、高い経済成長を遂げているこの地域の持続的な成長にとって最優先で取り組むべき課題となっていた。
KDDI財団がコンサルティングサービスを提供する「メコン地域通信基幹ネットワーク整備計画」は、国内基幹ネットワークとしてコンポンチャムから首都プノンペンを経てシハヌークビルに至る460kmの区間に光ケーブルを敷設、また、通信需要が急増している首都プノンペンに大容量の光ファイバー環状伝送路(メトロリング)と、最新の次世代公衆通信網の核となるIMS(IP Multimedia Subsystem)ならびに光アクセス網を導入して、この地域の通信機能を一気にレベルアップさせるプロジェクトである。

現地コミューン首長との交渉風景。KDDI財団職員(右)がコンサルタントとして活躍。

これらのプロジェクトを策定する段階から、KDDI財団はコンサルティングを行ってきた。カンボジア国は、ODAによって国内のICTインフラ環境を拡充する資金を得ているのだが、その資金の範囲内で何ができるのか、どんなものにするのかを、現地の政府や通信会社とともに考えるのである。そして、既存の設備との親和性等も考慮して技術的な支援をすることで、具体的な計画を煮詰めていくのである。

計画を煮詰める段階で考慮されるのは、新しく導入する設備の事業化という側面である。現状の通信状況を分析して将来の需要を予測し、現地の経済状態や通信会社の財務も分析した上で、事業として成り立つことを目標としたプロジェクトを計画するのだ。世界各国でコンサルティングを手掛けてきたKDDI財団の知識と経験が、存分に発揮されるところといえる。

プロジェクトの内容が策定されると、次は技術的な仕様の検討に入る。どのような設備がふさわしいかを現地で事前調査を行って検討し、最終的に、国際競争入札で機器のベンダーを決定するための技術仕様書、入札図書を作成する。入札が行われると、複数応札者から提出された提案書を評価・分析し、妥当なものであるかどうかを助言する。その結果、ベンダーが決定すると、さらに契約交渉、施工管理、仮受け取り試験、サービスインまでサポートしていく。

現地事情への対応が最大のポイント

このように、海外コンサルティングは高度な専門知識が必要となる作業だ。だが、担当者に話を伺うと、技術的な部分については十分な知識と経験ノウハウがあるため、さほど苦にならないという。この仕事で本当に難しいのは、現地ならではのさまざまな事情で、プロジェクトの進行が遅延し、時には止まってしまうことにあるのだ。

なにしろ、資金援助を受ける途上国は、必ずしも援助された資金の扱い方に慣れているわけでなく、確立したスキームがない場合がある。そのため、実際にプロジェクトを進めてみると、ひとつの許可を得たり、予算を通すのに、どの省庁がどう関係してくるのか不明で、やってみなければ分からないことが多々ある。申請した書類が何カ月も止まってしまうこともしばしばで、調べてみるとまったく関係なさそうな部署が関与していたことが原因であったり、あるいは、特に原因はないが、とにかく何カ月も時間が掛かるのが現地の流儀だったということすらあるという。

必要な決裁が下りず、プロジェクトの進行が止まってしまった場合は、とにかく、途上国の政府機関、雇用主である現地通信キャリアと密接に連携し、コンサルタントが一つ一つ原因を調査して障害を取り除くしかない。現地作業で苦労するかなりの部分が、こうした作業だということだ。

海外コンサルティングの成果

日本の政府開発援助(ODA)とリンクした海外コンサルティング。プロジェクトが成功すれば、途上国への開発援助として成果が上がったことになり、また、KDDI財団の国際協力事業としても成功したことになる。だが、それ以外にも海外コンサルティングを行うことにはメリットがある。

それは、途上国にKDDIという名前が知られ、現地の通信キャリアから信頼を得られることだ。今回取り上げたカンボジア国にしても、数十年前からさまざまなプロジェクトをKDDIがサポートしてきており、過去積み上げた実績と経験、さらに信頼が、今回のコンサルティングサービスの競争入札でもKDDI財団の採用につながった。

途上国は、将来、経済的に大きな発展が見込まれるが、その際、日本が各国の良きビジネスパートナーになれるかどうかは、現在の国際協力事業でどれほどの成果を残せるかが重要になってくるだろう。その中でも、KDDI財団の海外コンサルティングには非常に大きな意義があり重要な活動の一つである。今後も一層の活躍が期待されている。

特集: 情報通信分野における国際貢献

取材・文:宮本橘

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