2013/09/24

ICTが教育を変えるスマートクラスルーム Part2. 子どもの自ら学ぶ力を引き出す

ICTは、子どもたちに創造のきっかけを与え、能力を引き出す力も持っている。教室外でも進む学び方の変革例を紹介しよう。

ICTで海外の子どもとつながって学ぶ

日本と海外の子どもたちが絵を自由に交換してアニメーションを制作するCANVASのワークショップ(提供・CANVAS)

アニメーション制作ワークショップでは、デジタル機器や映像機器を使って、一つのストーリーを作り上げた(提供・CANVAS)

“遊びと学びのヒミツ基地”を掲げるNPO法人CANVASは、参加型創造・表現活動のワークショップを中心とした「子どもたちの活動の場」の提供と、その活動の普及を行っている。ワークショップにはICTを取り入れたものも多い。

一つの例が、複数の国の子どもたちによる創作活動だ。日本、イタリア、カンボジア、ブラジルの子どもたちをつないだワークショップでは、各国の子どもたちが描いた絵をすべてデジタル化してネットを介して共有し、それを素材にして、それぞれにアニメーションを作成した。

日本の子どもが描く人物の髪の毛はみんな黒く、カンボジアの子どもが描く家はすべて高床式になっている等、絵にも国の文化が現れる。アニメのストーリーにも、国ごとの個性が出る。

子どもたちは、ICTの力を借りてアニメーションを創作する面白さを体験すると同時に、その過程で他国の文化を知り、子どもたちと交流する。創作が他の国の人ともっと交流したいというモチベーションにもつながる事例だ。

CANVAS理事長の石戸奈々子さんは、「ワークショップでやりたいことは、きっかけを提供すること」と言う。そして、その理由をこう説明する。

「子どもたちは、学ぶ動機さえ得れば学ぶものです。学びというのは本来ワクワク楽しいもの。遊びと学びは同じものでした。ワークショップに参加している子どもたちは、何かを創り、表現するために、たくさんのことを自分で調べます。また、それぞれの得意分野に合わせて役割分担をしたり、何時までにここまで終わらせようよとリーダーシップを発揮したり、自ら進んで学んでいきます。学び方を学ぶということが非常に大事です」

CANVASで提供しているワークショップでは、ICTの利用が、表現のハードルを下げてくれる場合も多い。その好例が音楽だ。子どもたちが歌詞と曲を持ち寄る「おとコトひろば」では、ICTを利用することで、誰でも簡単に曲を作れる仕組みを実現している。これも、きっかけの提供である。

大人から教わらなくても学び方を発見する子どもたち

きっかけと環境さえあれば、子どもたちは自発的に学ぶということを証明する好例が、海外にもある。

それは、現在、イギリスのニューキャッスル大学教授となっているスガタ・ミトラが、1999年にインドで行った一つの実験に始まる。大人から教えてもらわなくても、子どもはコンピューターを使えるようになるか、というのがテーマ。当時勤めていたニューデリーのスラム地区にあるIT企業NIITの外壁に、インターネットを利用可能なPCを設置し、誰でも自由に使えるようにしてみたのである。ガラス越しにモニターを見られるようにした実験用PCの姿から、「ホール・イン・ザ・ウォール」実験と呼ばれている。

Hole in the Wallの最初の実験(提供・Hole-in-the-Wall Education Limited)

デリー近郊に設置されたラーニングステーションを利用する子どもたち(提供・Hole-in-the-Wall Education Limited)

この地区の子どもの多くは学校に行っておらず、コンピューターを利用した経験もなければ、英語も話せなかった。子どもたちはこのPCを、最初は自由に遊べるゲーム機だと思っていたようだが、1時間以内には、誰の助けも受けないで、インターネットをブラウズし始めていたのである。

PCをよく利用していたのは、近所に住む6歳から12歳の子どもたち。立ち寄っては、試行錯誤を繰り返して、使い方を"発見"していった。そして使い方を教え合い、ウェブだけでなく、ウェブ上で利用できるゲームをしたり、お話や漫画を見たり。あるいはニュースを見たり、音楽や動画を楽しんだりするようになった。ヒンズー語のニュースは、映画情報サイトと同じくらい人気があり、お絵かきソフトも非常に人気があった。中には、簡単な指導を受けるだけで、ウェブページを作る子どもさえ出てきた。

子どもたちが身につけたのは、PCの利用方法だけではない。ゲームを通じて知っている語彙を増やし、絵を描くなどの創造的な行動を楽しむことを覚えたのだ。子どもたちとは対照的に、大人たちは、言葉が分からない、使い方が分からないといって、使ってみようとはしなかったという。

ミトラは、その後も各地で同様の実験を重ね、ほとんど何も教えなくても、子どもたちはPCの使い方を身につけ、ネットを通して多くのことを学んでいけるという確信を得る。大学生向けの英語の教育プログラムを見続けた子どもの中には、英語が話せなかったにも関わらず、大学生並みの知識を習得する子どもも現われたという。

そして2001年には、NIITと世界銀行グループの国際開発機関IFCによって、Hole-in-the Wall Education Limited(HiWEL)が設立され、インドだけでなく、多くの途上国に、ミトラが開発した方法(最小介入教育)を実現する教育用コンピューターセット「ラーニングステーション」を設置している。そして、PCを自由に使いこなして、自ら学んでいく子どもたちを生み出しているのである。

現在、HiWELでは、子どもたちがコンテンツの消費者であるだけではなくコンテンツのクリエイターとなることを目的に、子どもたちが協力して地域の情報を集めて発信するウェブページを作成するプロジェクトや、最小介入教育に適した教育用プログラムの開発も行っている。

※扉の画像: カーンアカデミーの講義ビデオを授業に取り入れたペルーの学校(提供・Khan Academy)

特集: ICTが教育を変えるスマートクラスルーム

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