2013/08/01

ICTが教育を変えるスマートクラスルーム Part1. 教室のスマート化へのチャレンジ

今、各地の学校で教室のスマート化が進んでいる。タブレットの導入やデジタル教材の実際を紹介し、未来の教室を垣間見てみよう。

1人1台のタブレットで1人1人に合わせた学習

机の上にはタブレット端末が1人に1台。子どもたちは、教育用アプリケーションを利用して、それぞれに勉強をし、分からなくてつまずいている子どもがいれば、教師が席に行って理解を手助けする。

文部科学省の「教育の情報化ビジョン」に基づき、神奈川県横浜市立白幡小学校で、2011年から実施されているICT(情報通信技術)による教育支援の実証研究の光景だ。ICTが教師や児童にどのように受け入れられ、有効活用されるか検証を行ったものだ。ネットワークやサーバー機器、タブレット、アプリケーションはKDDIが提供した。

実証研究では、朝の勉強時間に4、5年生全員がタブレット端末を用いて反復学習を行ったほか、4〜6年生中心にクラス単位で、タブレットのカメラで撮影した映像を編集・比較して授業内容の理解を深めたり、児童の意見をリアルタイムに集約・グラフ化して授業の進行に生かすことができるアンケートアプリを利用する等のトライアルを重ねた。

反復学習では、小学館が提供した算数ドリルをKDDIがアプリ化して使用。個々の児童の進度に応じた問題が自動的に出題され、自分のペースで問題を解くことができる。また、教師はタブレット上で全児童の進捗状況をリアルタイムで確認できるため、時間がかかったり間違いの多い児童がいれば、個別に指導することができる。ほかにも、独立行政法人 情報通信研究機構が持つ英単語関連データを教材化し、かるた形式で英単語をゲーム感覚で覚えられる「英語かるた」などのアプリが開発され、授業で利用された。

昨年11月に行われた公開授業では、算数ドリルを実施した児童から「紙のドリルは、1回しかできなかったけれど、タブレットだと繰り返し問題も解けるし、正解か不正解がすぐに分かるのでとても良い」という意見や、英語ドリルを実施した児童から「ゲーム感覚で英単語が学べるので、毎回とても楽しみにしている」という感想が上がった。

横浜市立白幡小学校での実証研究の授業風景

タブレットの画面に指で筆算をして算数ドリルを解く

白幡小学校で使用された「英語かるた」。正解してほかの児童との"対戦"に勝利した画面

「英語かるた」の教師用出題画面。各児童の正解・不正解も一覧できる

進みつつある電子黒板、デジタル教科書の整備

小・中・高校の教室は今、ICTの本格導入により、大きな変化を遂げようとしている。

日本における学校教室へのコンピューターの導入は1980年代から始まっている。1人1台とはいかないまでも、学習用コンピューターが整備され、インターネットも利用可能になっているが、その目的は、コンピューターなどの情報機器を活用する能力を育成することであった。

一方、現在進みつつある学校教育へのICT導入の目的は、ICTを利用して教育の質を高めるとともに、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力など、21世紀に必要なスキルを児童生徒に身につけてもらおうとするものである。

そこで鍵となっているのが、電子黒板、デジタル教科書、タブレットの3つだ。

電子黒板とは、PC等の画面を表示でき、画面をタッチパネルとして操作したり、黒板のように画面上に書き込むこともできる大型ディスプレイだ。2009年以降、急速に普及が進みつつある。

指導者用デジタル教科書『デジタル教科書 NEW HORIZON』の表示例。音声や資料映像を再生でき、補充問題等も収録(提供・東京書籍)

デジタル教科書では、教科書の内容に加えて関連教材を収録し、教師によるカスタマイズも可能にした「指導者用デジタル教科書」が、教科書出版社から提供され、授業に取り入れる学校も徐々に増えている。また、デジタル版教材を手作りしたり、ほかの教師と共有する例もある。

これによって、電子黒板に、教科書の内容だけでなく、関連する動画やアニメーションを表示したり、それに教師や児童生徒が書き込みをしながら授業を進めるという教育方法への挑戦が全国で進められている。

2020年には全国の教室が本格的にデジタル化

今後の課題は、児童生徒も1人1台の情報端末(タブレット)とデジタル教科書を利用できるようにすることだ。「教育の情報化ビジョン」では、2020年度に向けて、1人1台の情報端末による教育を本格開始することを目標としている。

2014年に公立小中学校の全児童生徒にタブレットを導入することを決めた佐賀県武雄市や東京都荒川区など、先行して整備を進める自治体や学校も出てきている。

タブレットは、PCよりも直感的に操作でき、画面の上に直接書き込むことで、紙と鉛筆のように使うことができる。1人1台の環境が実現すれば、児童生徒もデジタル教科書(学習者用デジタル教科書)で動画や関連資料を自由に利用したり、個別に進度に合わせた学習をできるようになるだけでなく、子ども同士で意見を交換したり教え合う協働型学習も行いやすくなる。すべての子どもの意見を電子黒板に表示するようにすれば、より多くの意見を取り入れた創発的な授業が可能になる。

NPO法人CANVAS理事長で、デジタル教科書教材協議会の活動にも携わっている石戸奈々子さんは、デジタル化によるメリットとして、以下の3つを挙げる。

楽しく学べる

アニメを用いたりゲーム的な教材にしたり、紙の教科書ではできない工夫が盛り込め、今まで以上に楽しく、分かりやすく学ぶことができる。また、創作、表現がしやすくなる。

みんなで学べる

先生と生徒、学校と家庭、地域、世界中の子どもたちがつながり、学び合い、教え合うことができる。

効率的に学べる

ドリルなどで各々の進度に合わせて問題を変える等、個別学習が可能となる。また自動で採点できれば、教師も採点に取られている時間を、子どもたちと向き合う時間に変えることができる。

※扉の画像: カーンアカデミーの講義ビデオを授業に取り入れたペルーの学校(提供・Khan Academy)

特集: ICTが教育を変えるスマートクラスルーム

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