2018/07/12

『INFOBAR xv』発売記念! デザインケータイの変遷を探る

「高機能・多機能化」が最優先の携帯電話全盛だった時代に、「機能と同時にデザインが起点となるケータイを作る」という志を掲げてスタート。“デザインケータイ”という新ジャンルを築き上げたのが「au Design project」(以下aDp)だ。

記念すべき第一弾として2003年、当時すでに注目を浴びていた深澤直人氏をデザイナーとして迎えて発売された「INFOBAR」は、タイル状のキーやNISHIGOIとして知られる斬新な配色で世界に大きなインパクトを与えた。

そして初代INFOBARの登場から15年。アニバーサリーイヤーを迎える今年、「INFOBAR」15周年の記念モデルが発表された。

その名は「INFOBAR xv(インフォバー エックスブイ)」。発売は2018年秋を予定している。

INFOBAR15周年

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これまで「TIME & SPACE」では、aDpが開発してきた量産モデルからプロトタイプモデルまで、数々の「デザインケータイ」の歴史を振り返る記事を紹介してきた。今回は、aDp発足のきっかけから初代「INFOBAR」誕生までの足跡を振り返ってみよう。

au Design projectの誕生!

「INFOBAR」
初代INFOBAR。写真左から「NISHIKIGOI」、「ICHIMATSU」、「BUILDING」

ディスプレイの解像度を上げ、カメラの画素数を増やす、どれくらい軽量化したか、といった数字がそのまま「ケータイの差別化」となっていた2001年当時。各社が当時、主流の折りたたみモデルのケータイを次々に発表し、しのぎを削っていた。

一方、イームズや北欧デザインなどに代表されるミッドセンチェリーデザインが再評価されるなど、1990年代後半から始まる世界的な「デザインブーム」のなか、日本でもデザイン感度の高い若者たちから「欲しいデザインのケータイがない」との声も。

当時、KDDIが掲げていた『Designing the Future』のスローガンにふさわしい活動として、なにをすべきか? ゼロから考えるところからそのプロジェクトは始まった。デザイン家電が世に出始め、Apple社のiMacのような“トガった”プロダクトが話題を集める背景から、デザイン性を求める人たちのための携帯電話をかたちにしようと、aDpは立ち上がったのだ。

INFOBARの原型はレゴ!? プロダクトデザイナー・深澤直人氏との出会い

深澤直人 プロダクトデザイナーの深澤直人氏

aDpが動き出した2001年、深澤氏は無印良品の「壁掛けCDプレイヤー」(2000年)でプロダクトデザイナー(使い勝手やビジュアルなど、数々のアプローチで製品デザインをつくり上げる仕事)として、その名が知られ始めた頃だ。

「人が『思わずしていること』を基点にデザインする手法に共感を覚えました。デザインのみならず、その文章や考え方もすごく魅力的で。最初の打ち合わせのときは感激でドキドキしました(笑)」(KDDI商品企画本部 砂原哲)

深澤氏のaDpの初仕事は、名機「INFOBAR」のコンセプトモデル製作だった。携帯電話にファッションアイテムとしての価値を持たせた作品は、バータイプモデル。メールを打ちやすいタイル状のキーを備え、折りたたみ型のケータイが主流だった当時の日本市場においては、大きなインパクトを与えたのだった。

レゴで作られたINFOBARのプロトタイプ レゴで作られたINFOBARの最初のプロトタイプ

初期aDpのコンセプトモデルたち

自動車メーカーが新車を発表する際、コンセプトカーをモーターショーなどに出展し、市場の反応を見ることはよく知られている。その手法を通信業界に初めて持ち込んだのが、今から16年前のaDpだった。2002年に最初の発表を行って以来、斬新なコンセプトモデルを次々と発表し、世間を驚かせる。

2012年までに製品化未製品化を合わせて、aDpには36を超えるコンセプトモデルが存在する。「TIME & SPACE」では開発プロジェクトを担当する砂原哲が、「INFOBAR」の発売前後、つまりaDpのごく初期に作られたコンセプトモデルを振り返りながら、コンセプトモデルの“生い立ち”について紹介している。

コンセプトモデル「ishicoro」 「ishicoro」(デザイン:深澤直人)
コンセプトモデル「rotaly」 「rotaly」(デザイン:二階堂隆)
コンセプトモデル「wearable」 「wearable」(デザイン:二階堂隆)
コンセプトモデル「apollo」と「apollo 02」 左/「apollo」 右/「apollo 02」(デザイナー:東泉一郎)

デザインとアートの狭間で

「表層的な商品企画でなく、感性価値に主軸を置いた携帯電話を世の中に広めることで、日本のデザイン文化を高めることにも貢献したいと考えたんです」(KDDI商品企画本部の砂原哲)

aDpはINFOBARの深澤直人、talbyのマーク・ニューソン、MEDIA SKINの吉岡徳仁といった、数々の世界的プロダクトデザイナーたちとユニークなモデルを手がけてきた。なかでも、アーティストの草間彌生による「宇宙へ行くときのハンドバッグ」「私の犬のリンリン」「ドッツ・オブセッション 水玉で幸福いっぱい」といった「携帯電話×アート」の試みは、アートファンをはじめ、世の中に大きな衝撃を与えた。

マーク・ニューソンが手がけたtalbyの展示ブース 世界的なインダストリアルデザイナー、マーク・ニューソンが手がけたtalby。「ビジネスショウ2003 TOKYO」で初披露され、展示ブースもデザインコンセプトに合わせ、マーク・ニューソンが手がけた
吉岡徳仁がデザインした「MEDIA SKIN」のコンセプトモデル 「MEDIA SKIN」のコンセプトモデル
草間彌生の「宇宙へ行くときのハンドバッグ」と「私の犬のリンリン」 「宇宙へ行くときのハンドバッグ」(写真左)と「私の犬のリンリン」(作:草間彌生)
草間彌生作「ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい」 「ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい」(作:草間彌生)

スマホの到来を前にaDpが目指した未発売モデルたち

20モデル以上のデザインケータイが世に送り出され、発表のたびに驚かせたaDp。一方、製品として実現しなかったものも含め、実は30を超えるコンセプトモデルが存在する。

特にiPhoneが発表された07年以降、aDpが送り出したコンセプトモデルは、「使っている時間」以上に「一緒に過ごしている時間」が長いケータイの、人と共有する時間をデザインする……と、よりコンセプチャルに。さまざまな試作品が制作された。

森本千絵デザインの「sorato」 常に空が映し出され、天気や時間の変化もリアルタイムで反映されるというコンセプトで作られた「sorato」(デザイン:森本千絵 )
森本千絵デザインの「ヒトカ」 ケータイの中に人が住んでいる、というユニークなユーザーインターフェイスの「ヒトカ」(デザイン:森本千絵 )
チームラボがデザインした「actface」 二つ折りのボディが重なるように2面ディスプレイが配された「actface」(デザイン:チームラボ)。「PLAY」はケータイを使っていくごとに、だんだん町が発展していくという仕掛け。「Rhythm」は、透明なボタンを押すとリズムに合わせて水墨画が描かれる。

また、ケータイがさまざまな機能を内包し、「オールインワン」化していたこの時代。ケータイを“ほかのジャンル”との融合を狙った「ガッキ ト ケータイ」シリーズや、手のひらサイズのケータイがソーラーパネルに変形する「SOLAR PHONE プロジェクト」など、奇想天外なアプローチの「デザインケータイ」を構想していた。

「ガッキ ト ケータイ」シリーズ 「ガッキ ト ケータイ」シリーズ。左/「Key to touch」、中央/「Sticks in the air」、右/「Trio in your hand」(デザイン:ヤマハデザイン研究所)
MILEがデザインした「Voyage」、「gem」と坪井浩尚がデザインした「SOUP」 SOLAR PHONEプロジェクトのケータイ。上左/「Voyage」、上右/「gem」(デザイン:MILE)、下/「SOUP」(デザイン:坪井浩尚)

さて、初代INFOBAR誕生から15年を経て、あらためて登場する新・ケータイ「INFOBAR xv」。

初代INFOBARのソリッドなフォルムとINFOBAR 2の丸みを併せもつ進化したデザインに、LINE、+メッセージ、Bluetooth対応と仕様はまるまる現在進行形。スマホ全盛の現代、ストレートタイプの携帯電話はスマホ・SNS依存から解放してくれるツールとして、世界的にも再評価されつつあり、新しい意味を見出している。「INFOBAR xv」はそうした潮流も見据えた「新・ケータイ」となっている。

メインストリームが捉えきれないニーズをかたちにしたいという思い。aDpの発足当初から貫き通してきたコンセプトが2018年の現在に蘇った。

au Design project

au Design project 15周年特設WEBサイトはこちら

文:TIME & SPACE編集部

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