2014/08/15

スマートフォンの電池もち改善を助けてくれる『電池もち診断』で無駄をカット

「スマートフォンに変えたら電池もちが悪くなった」「フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換えたいけど、電池もちが気になって踏み切れない」という人もいるだろう。だが、スマートフォンで電力がどのように使われているか正しく知り、無駄を見直すことで、スマートフォンの「電池もち」は改善できる。auでは、提供中の「スマートフォン自動診断」の新機能として、KDDI研究所の研究成果を活用した「電池もち診断」を8月から新たに提供する。開発を担当したKDDIプロダクト品質管理部の新保恭一、太田 駿と、KDDI研究所の土岐 卓に話を聞いた。

一筋縄ではいかないスマートフォンの電力消費

スマートフォンの電池もちを改善できる「電池もち診断」アプリの開発を担当する(左から)KDDI研究所の土岐 卓と、KDDIプロダクト品質管理部の新保恭一、太田 駿

フィーチャーフォンの時代から、「電池もち」は携帯電話を選ぶ時の重要な評価ポイントだった。改良を重ねた結果、フィーチャーフォンは、普通の使い方をしていれば数日から一週間は充電しなくても使えるようになっている。それに比べてスマートフォンは、電池もちが悪いといわれることが多いのだが、「実は同条件で比較すると、最近のスマートフォンはフィーチャーフォンよりもむしろ電池もちが良いのです」と新保は説明する。

ではなぜスマートフォンを利用するお客さまの多くが、端末に対する不満点として「電池もち」を挙げるのだろうか。それは、「アプリを入れてさまざまな使い方ができる」「アプリと連携して多彩なデバイス(GPSなど)が動作する」というスマートフォンの特性そのものに起因する。フィーチャーフォンであれば、主な利用用途は電話やメールで、利用パターンは少ない。電池もちをよくするためには、電池容量を上げてデバイスの消費電力を下げれば、一般的な利用方法であれば、ほぼ想定通りの電池もちを実現できる可能性が高い。だが、スマートフォンの場合は、多彩な機能をアプリの組み合わせで実現しているため、各アプリの消費電力が電池もちに与える影響が大きい。

また、SNSやゲームなど、さまざまな使い方ができるスマートフォンでは、どうしても画面を点灯して利用する時間が長くなる。画面が点灯している時間が長くなればそれだけ電力消費が増える。また、最近のスマートフォンでは液晶自体のサイズも大きくなり、必要なバックライトの数が増えることなどで消費電流も大きくなっている。さらに、SNSやメールなどの「通知」を利用する設定にしていれば、定期的にネットワークに接続するため、「スマートフォンを使っている」と意識しない状態でも電池の電力を使ってしまう。このため、よく使用するアプリの消費電力が大きかったり、複数のアプリで頻繁に通知を受けるなど、電力を多く消費する設定をしていた場合、いくら端末自体の電池もちを改善しても、「電池もちが良くない」と感じてしまう。

「スマートフォンはさまざまな使い方ができる分、お客さまが意識しないところで電力を使ってしまい、それが『電池もちが悪い』という不満につながりがちです。不満解消のために、まずはお客さまにスマートフォンでどのように電力が使われているかを、正しく知っていただくことが必要だと考えました」と、太田。電力の使われ方を知り、普段の使い方でどれだけの電力が必要なのか、無駄に電力を使っている設定がないかを見直すことで、電池の性能を適切に発揮できるようにする。

「使われていないのにオンとなっている機能」を判定

電池もち診断では、実際の端末の利用状況に基づき、「何にどれだけ電流を消費しているか」を計算して表示する「電池もちアドバイス」と、電池そのものが劣化していないかを診断する「電池劣化診断」の2つの機能を提供する。

「電池もちアドバイス」は、ディスプレイ、Bluetoothなどの要素ごとの消費電力モデルを適用して、3日間の利用履歴を基に電力消費状況を計算する。診断の結果、使っていないのにオンになっている機能や設定のリストが表示される。そのリストをチェックするだけで、不要な機能をオフにすることができる。

KDDI研究所では、診断精度を上げるために、端末ごとのより精緻な消費電流モデルの開発だけでなく、端末がスリープした状態になっても利用状況から消費した電力をソフトウェアで測定し続ける独自技術も開発している。

ポイントは、単純に「何がどれだけ電力を使っているか」を計算するだけでなく、「使っていないのに無駄にオンされて消費されている電力はどのくらいか」まで判定すること。「例を挙げると、Bluetoothがオンになっている時間がどれだけかということだけではなく、『通信をしていないのにオンになっていた時間がどれだけあるか』も計算することで、無駄がどれだけあるかを診断します」と、土岐は語る。

電池もちアドバイス診断(画面イメージ)

電池劣化診断(画面イメージ)

機種ごとのデータを基にした正確な電池劣化診断

「電池劣化診断」は、満充電時のエネルギー容量が、出荷時と比べてどの程度になっているかを計算することで、電池の劣化状況を診断するもの。診断結果は「電池は良好です」「交換してください」の2段階で表示される。

診断は充電の進行速度を調べることで行う。とはいえ、電池の充電特性はスマートフォンの制御、搭載している電池やACアダプタによって異なるので、スマートフォンの機種と電池ごとに、KDDIの各種共通ACアダプタで測定した充電速度のデータと電池劣化シミュレーションのデータをデータベース化して、診断を行うたびに参照している。そのため、精度の高い診断ができる。

auショップ店頭でもバッテリーテスターによる電池劣化測定の環境を提供しているが、アプリを使えば自分で測定できる。また、最近増えているバッテリーを外せないスマートフォンでも、ソフトウェアでより精度高くバッテリーの状態を診断できる。

スマートフォンの便利さ、楽しさを損なわないで電池もちを向上

電池もち診断開発にあたって心掛けたことは、「お客さまの便利さ、楽しさを損なわないで電池もちを良くする」ことだった。「単に電池もちを良くするだけであれば、通信機能は全部切って、アプリのインストールは最小限にして、各種通知も全部オフにすれば良いのですが、それではお客さまは、スマートフォンの便利さを感じることができません。電力を使う機能は使わない、ではなく、無駄をなくすことで電池もちを良くしたい。起動している機能を、実際にお客さまが利用しているかどうかまで判定するのは難しかったのですが、KDDI研究所の技術開発により、それを実現できました」(太田)。

今後は、電池もちアドバイス機能、電池劣化診断機能の精度をそれぞれ向上させるとともに、タッチやスクロールなどの操作を記録して診断する。「操作状況分析機能」も実現すべく研究開発を進める予定だ。まだ開発の可否を見極めている段階だが、「タッチする位置のずれや、スクロール時にタッチパネルを触っている時間などにより、消費電流は大きく変わってきますので、お客さまの操作の癖を調べて電池もちをよくするご提案をしていきたいと考えています」(土岐)。

電池もち診断のプロに聞いた「電池もちをよくするコツ」

最後に、「電池もちをよくするコツ」を聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。

■画面の輝度を下げる
スマートフォンではディスプレイの消費電力が大きいので、ディスプレイを多く使うアプリは消費電流も多くなる。動画やゲームを楽しむときには、見づらくならない程度に明るさを下げることで、消費電流を減らすことができる。
■背景色は「白」より「黒」を選ぶ
GALAXYシリーズなどの有機ELディスプレイ搭載機種では、「白」は全色を点灯して表現するのに対して「黒」では全色点灯しないので、消費電流に大きな差が出る。背景色が選べるアプリでは、「白」よりも「黒」に設定することで消費電流を減らせる。
■通信を使わない時は、Wi-FiやBluetoothをオフにする
これらは、接続しないままに機能をオンにしていると、接続先を探すために電流を消費する。「使う時にオンにする」ように心掛ければ、利便性は損なわず、消費電流を減らせる。
■不要な通知や同期はオフにする
SNSやメールなどの通知機能は、定期的に通信を行うことで実現している。また、アプリによっては、定期的に「何らかの情報や連絡が届いていないか」を確認するものもある。通知は必要なアプリのみに限定することで、消費電流を減らせる。 同期機能も定期的な通信が発生するため、必要なときに実施することで消費電流を減らせる。
■タッチパネルは「はじくように」操作する
タッチパネルに触っている時間が短いほど消費電流は少なくなるので、フリックやスクロール時にはできるだけ画面を「はじく」ように操作する。ちりも積もれば山となるので、電池もちの改善が見込めるそうだ。
■スマートフォンを時計代わりに使わない
時刻確認のためにスマートフォンの待ち受け画面の時計を使っている人は多いが、一瞬画面を点灯させるだけの操作のように見えても、端末では画面点灯で各種デバイス機動やソフトウェア処理が発生し、画面消灯後に徐々に機能やソフトウェア処理を停止していくという動作をしており、一瞬の操作でも30秒から1分、機種によっては2〜3分間は消費電力が多い状態が続く。これが大いに電池もちに影響している。

このように、通信やアプリ利用を我慢することなく、スマートフォンの電池もちを良くする工夫はたくさんある。電池もち診断アプリを活用することでさらに無駄を減らし、楽しく便利にスマートフォンを活用したい。

文:板垣朝子

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