2021/03/18

スマホ充電できない時に試すことは?プロに聞く対処法と充電の仕組みなど解説


TORQUEを充電している画像

auショップに修理で持ち込まれる原因のひとつが充電不良だ。外観ではスマホやケーブルに破損がない状態で、なぜ充電できないのかわからないケースも散見される。スマホの充電不良とは、いったいどういう時に起きるのか。充電不良が起きる原因と、試すべきことについて、京セラとKDDIのスマートフォン品質管理担当者に話を聞いた。

KDDI プロダクト品質管理部 山西一郎 と 京セラ 通信品質保証部 髙橋 哲哉 京セラ 通信品質保証部 髙橋哲哉 と KDDI プロダクト品質管理部 山西一郎

充電不良が起きる原因は?

―――まずは、充電不良の原因を教えてください。

山西:スマホを充電するには、3つの要素があります。

・充電器:電気を送る。
・充電ケーブル:電気を通す。
・スマホ:電気を受ける。

この3つが正常に接続し、動作することで充電できるのですが、充電不良の原因の多くは、充電器と充電ケーブルの不良です。

スマホ充電の3つの要素

髙橋:実際に充電不良理由で京セラに送られるスマホを確認しても、スマホ本体には不良が見られないことがあります。

山西:他のスマホメーカーについても、同じ傾向です。過去2年間で「充電できない」との申告で各メーカーに修理品として届いたもののうち、スマホ自体に問題が確認できなかったものが26〜41%ありました。修理に出す前にお客さまセンターとのやり取りで解決した例もありますから、本体よりまずは充電器と充電ケーブルの不良を考えたほうが、早く解決する場合があります。

充電不良申告のうちスマホに問題が確認できなかった割合(KDDI調べ)

―――では、充電器と充電ケーブルでは、どちらの原因が多いのでしょうか。

髙橋:特に弱いのは、充電ケーブルです。見た目で断線や破損がわかるものから、充電ケーブルを覆う配線カバーの内部で断線しているケースもあります。見た目には断線していなくても、充電ケーブル内部が傷むと抵抗が大きくなり、電気が流れにくくなります。充電が遅くなるばかりか、発熱する場合もあり危険です。

山西:ケーブル断線のなかでも、特にコネクタ部分で断線が起きやすい。ケーブルの抜き差しにはどうしてもこの根本に力が加わりますので、コネクタ部分の破損がよく見受けられます。

スマホ充電ケーブルの破損イメージ

―――充電器はどうでしょうか?

髙橋:充電器の内部に『電解コンデンサー』という部品があるのですが、この部品が熱に弱く、市販品によっては寿命が短いものもあるようです。

山西:不良申告のなかには「充電が遅い」との申告もありますが、手持ちの充電器を最新に変えることで解決する場合があります。ものにもよりますが、充電にかかる時間が半分に短縮される場合もありますので、よろしければお試しください。

―――スマホ自体の充電不良の原因は何でしょうか。

髙橋:充電関連の部品に不良が起きるケースがあります。たとえば、落下によって充電関連のIC部品と基板間のハンダ付けにクラック(割れ)が入るケースや、充電ケーブルの抜き差し時に大きな力が繰り返し加わることで、充電端子が基板から剥がれてしまう、というケースです。このような症例を見るたびに、メーカーとしても設計を見直し、新機種ではより壊れにくくなるよう工夫を重ねていますが、どうしても落下や外部からの力による破損は防ぎきれないところがあります。

スマホ充電不良対策によるメーカーでの改善例 スマホ充電不良対策によるメーカーでの改善例①

スマホ充電不良対策によるメーカーでの改善例 スマホ充電不良対策によるメーカーでの改善例②

髙橋:また、落下など外部の力以外の原因としてよく挙がるのがゴミや異物などの付着による充電不良ですが、こちらに修理に来たスマホを確認すると、ゴミやホコリが付着することで充電できなくなった症例は、あまり見つかりません。少々ゴミが端子に付着しても、ケーブル抜き差しによるクリーニング効果などで解消することもあり、それが原因で充電不良が起きる、というケースは少ない状況です。

―――では、ケーブルのないワイヤレス充電での充電不良症例はあるでしょうか?

髙橋:修理に出す方は少ないですが、充電できない、充電が遅いなどのお問い合わせはあります。ワイヤレス充電の場合、正しい位置にスマホを置かないと、充電時間が長くかかります。また、位置がずれると発熱量が増え電池へのダメージや膨れ発生の危険性もありますので、たとえば弊社のTORQUEの場合は背面TORQUEロゴの「R」文字を充電台の中心に置くなど、必ず正しい位置に置いて充電ください。

TORQUEのワイヤレス充電イメージ

充電できないときの対応策は?

――では、充電できないときに何かできることはあるのでしょうか。

山西:充電できないケースでも、修理に出す前にできることがあります。まずはどういった原因で充電できないのか。順番に試すことで、解決する場合があります。

①充電ケーブルや充電台の接続確認
・充電機器はコンセントにしっかり刺さっているか(コンセントは通電しているか)
・充電ケーブルはしっかりささっているか。
・充電台を利用している場合は、正しくスマホがはまっているか
・ワイヤレス充電台を利用している場合は、置き位置が正しいか
・充電ケーブルにゴミや汚れがついていないか
・3~5回程度、充電ケーブルを抜き差ししても充電しないか
(力の入れすぎや、斜め挿しに注意)

②充電ケーブルや充電台の変更
他の充電機器につなぎ変えることで充電できれば、充電器や充電ケーブルに不良が起きていると言えます。充電台と充電ケーブルが分離できるタイプの場合は、充電台なしで直接ケーブルから充電できるかどうかを試し、どちらに原因があるのか、さらに切り分けをしましょう。

③スマホの再起動やソフトウェアアップデート
①〜②を試しても充電できない、となった場合に試していただきたいのがスマホの再起動です。それでも駄目な場合には、ソフトウェアアップデートを試してください。ソフトウェアが最新になることで充電できるようになる可能性がありますが、ソフトウェアアップデート実施する場合は、事前のバックアップなど、HPや取扱説明書などの注意点を確認の上、実行ください。

ここまでやってダメならば、スマホを修理に出しましょう。

TORQUEを充電するイメージ画像

充電不良を未然に防ぐ方法は?

――最後に、できるだけ充電不良が起きないよう、普段から心がけると良いことなど教えてください。

山西:充電不良の一番の原因であるケーブルを丁寧に扱うことをぜひともお願いしたいです。また、不具合が起きたときもある程度原因を切り分けていただくことで、お問い合わせや修理をしなくても、時間をかけずに自分で解決できる方法があることを知っていただけたらと思います。

■充電ケーブルの扱い方
①抜き差しでは力を入れすぎない。
②コネクタの先端はできるだけ触らない。
③スマホを挿したまま充電ケーブルを引っ張ってたぐり寄せたりしない。
④ケーブルをスマホなどにグルグル巻いて持ち運びなどしない。
⑤傷んだかな、と思った時は早めに交換。

毎日使うものだからこそ、スマホの充電機会も多いなか、少しでも充電に関する正しい知識を得ることで、スマホの付き合い方との参考にしてほしい。


文:TIME&SPACE編集部