2017/08/28

新たな予感も! 『au Design project』15周年イベントをレポートします

時代をときめくクリエイターやアーティストと、ケータイの新しいカタチを模索し、「INFOBAR」や「talby」といった名機を世に送り出してきたau Design project(以下aDp)。今年は立ち上げから15年目にあたる。

その開発の舞台裏には、レゴを使用したり、石けんにアンテナを刺して試作品のイメージを固めるといった、新しいものをつくり出そうと奮闘するクリエイターの姿がある一方で、当時の技術的な問題などで製品化に至らなかったいくつものコンセプトモデルも存在する。

2017年7月21日(金)〜31日(月)に東京・有楽町で行われた「ケータイの形態学 展 - The morphology of mobile phones -」は、そんなaDp15年の歴史を紐解くイベントとなった。会場では未発表のコンセプトモデルを含め、ズラリと70台のデザインケータイが並び、来場者を驚かせた。

今回は来場できなかった方のために、会場でも大きな話題となっていた「未発表モデル」を中心に紹介していこう。

デザインケータイの歴史を彩る、伝説のモデルが勢揃い

有楽町駅からほど近い場所にある会場には、入り口から歴代モデルが時系列を追って展示されている。最初は、aDpの礎を築いた「INFOBAR」シリーズだ。

aDpの原点にもなったINFOBARのプロトタイプの展示。マテリアルのイメージとなったアイテムも並べられている
aDpを代表する「INFOBAR」シリーズは、多数のコンセプトモデルや販売モデルが飾られ、タカラトミーとコラボした「au x TRANSFORMERS PROJECT」で開発中のINFOBAR型トランスフォーマーの展示も

プロダクトデザイナーの深澤直人さんが参画して開発が進められた「INFOBAR」は、「ケータイにファッション性を」を合言葉に、テクノロジー主導ではなく、デザイン主導で進められた画期的なプロジェクト。当時主流だった2つ折りタイプではなく、“バー”というコンセプトモデルの意匠をそのまま引き継いで製品化された。当時としては極めてセンセーショナルな製品であり、“デザインケータイ”という言葉を世に根付かせたマイルストーン的なモデルだ。

「iida Art Editions YAYOI KUSAMA」

アーティストとコラボしたモデルとしては、草間彌生氏の「iida Art Editions YAYOI KUSAMA」シリーズ。売場を限定してリリースしたものだ。ケータイも現代アートも“コミュニケーション”の文脈にあると捉えたとき、ケータイに“魂を揺さぶる”ような価値を持たせられることを実証するために生まれた、こちらもaDpのラインだ。

02年に発表されたaDp初期のコンセプトモデル「ishicoro」
見た目も斬新でユニークな「rotaly」(左)と「wearable」(共に二階堂隆のデザイン)

aDpには、製品化には至らなかったもののユニークなコンセプトモデルがたくさん存在する。その一例としては、河原で拾った石ころを3Dスキャンして誕生したという愛嬌たっぷりの折りたたみ型ケータイ、その名も「ishicoro」(デザイン:深澤直人)、動画の閲覧に特化すべく、大型の画面が回転ヒンジを軸にクルッと回る仕掛けがついた「rotaly」。また「rotaly」と同時期に発表された「wearable」などは、当時にわかに話題になっていたウェアラブルコンピュータを意識してつくられたコンセプトモデルだ。

そして未発表モデルの姿も・・・・・・!

「SUPER INFOBAR」

会場のなかでも特に来場者の目をひいていたのが、今回初公開となる未発表のコンセプトモデル。auのAndroid搭載端末初号機として検討された「SUPER INFOBAR」。画面比率がAndroidの仕様に合わなかったことや、ハードウェア面での課題があったことが理由で日の目を見ることはできなかった伝説のモデル。

「INFOBAR family」

こちらは発売に向けて開発が進められていたものの、「開発中に登場した『iPhone 4』に側面のデザインがそっくり・・・・・・」という理由で残念ながらお蔵入りとなった「INFOBAR family」。やむをえない理由で世に出なかったが、「Appleのデザインと同じ方向を向いていた」という点で、プロダクトデザイナーの深澤直人さんの先見の明が光ったモデルでもある。

スペシャルイベントでは“今後”への言及も・・・・・・!?

さて、今回の展覧会ではaDpにゆかりの深い人物のトークショーも行われた。大勢の人が詰めかけたのが、多くのaDpのデザインを手がけたプロダクトデザイナー・深澤直人氏と、aDpの全端末の企画・開発に関わったKDDIプロダクト企画部の砂原哲との対談。

ここではaDp誕生前夜の苦労話や、今だからこそ語れる裏話などで会場を大いに沸かせてくれた。

左:プロダクトデザイナー・深澤直人氏 右:KDDIプロダクト企画部の砂原哲。深澤さん「こんなにファンの方が集まるとは思っていませんでした。ひとつのムーブメントを起こした自覚はあります」

深澤さん「aDpは、“持つこと”でユーザーが参加した意識になれるプロジェクトだったと思います。“モノ”が出て終わりではなく、ユーザー同士が無意識的に繋がるコミュニティになったからこそ、こういうムーブメントになったのだと思います。色んなことが皆さんの気持ちを引き寄せて、“引っかかって”もらえたんだと思います。次の仕掛けに、ぜひ引っかかってください(笑)」

砂原「深澤さんと30周年に向けて、今回初公開した『SUPER INFOBAR』、そして新たに発表した『シンケータイ』など、どんどん出していきたいですね。出るか出ないかはみなさんの応援次第ですので、応援よろしくお願いします(笑)」

深澤さん「ケータイをデザインする仕事は、すごく刺激的でした。多くの人の興味を持った分野を手がけられたことも、楽しかったですよ。そんな仕事をさせてくれるauって、すごく“柔らかい”企業ですよね。お堅いイメージの通信会社なのに、ケータイのさまざまな可能性を世に示しているわけですから。」

来場者から「こんなケータイが欲しい!」と声も多数あったaDp最新のコンセプトモデル「シンケータイ」

対談のなかで出てきたaDpの今後を予感させる新たな深澤さんデザインのコンセプトモデル「シンケータイ」も展示。

砂原「『SNS疲れ』や『デジタルデトックス』という言葉も出てきているなか、たまには休んでみては? というメッセージを込めて制作しました。機能をそぎ落としてカメラは27枚撮り、SNSもできない仕様。「繋がりすぎない贅沢」を追求した、コンセプチュアルなモデルです。」

au Design projectは「終わらない」

会場にはファンやデザイン好きが大勢詰めかけ、その斬新なデザインを写真に収める姿が数多く見かけられた。また、通りから足を止めて中を見る人もチラホラ。ケータイにおけるひとつのトレンドをつくったプロジェクトは、今なお心に響いているようだ。

「INFOBARは今見てもちっとも古く感じない。すばらしいデザインが持つチカラを感じます」(男性参加者)、「こんなふうにau Design projectのケータイがたくさん集まっていると歴史を感じますね。自分が持っていたモデルもあって、当時を懐かしく思い出しました」(男性参加者)、「実はこのソニーの『G9』を最近まで使っていたんです。GSMに対応していたので、海外に持ち出せて便利でした。今日はせっかくなので持参してきたんです」(女性参加者)など、多くの参加者がauのデザインケータイへのそれぞれの思いを語ってくれた。

かくして盛況のうちに、イベントは幕を閉じた。しかし、aDpそのものが終わったわけではない。au Design project 15周年特設サイトでは、これからの「au Design project」に期待することや、「●●が欲しい!」といったご要望を募集中。今後の製品検討・開発に皆様のご意見を参考にさせていただきますので、是非メッセージをお寄せください。

文:吉州正行

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