2017/02/08
天国で後ろ指さされないために! 今のうちに知っておこう『デジタル遺品』の対処方法
「遺品整理」とは、大切な人がこの世を去ってから、残された家族や友人が故人の持ち物を整理すること。愛用していた腕時計や、撮影したことを忘れていた思い出の写真を手に取ることは、故人を偲ぶ大切な時間になる。ところが、昨今の遺品は「カタチ」がないことが多い。手に取ることもできなければ、どこにあるのかさえわからないなんてこともしばしば。それが今、メディアでたびたび取り上げられている「デジタル遺品」の問題だ。
デジタル遺品とは、故人が使っていたパソコンや携帯電話・スマートフォンに残されたデータを指すが、その種類は多岐にわたる。撮影した画像データやメール・LINEのやり取りにはじまり、インターネットバンキングのIDやパスワードといったものまで。なかには故人にとって「家族には見せたくない」情報もあるだろう。残された家族は必要な情報にアクセスできないし、データの持ち主は天国に行ってしまったのだから、パスワードを教えることはできない(「それは見ちゃダメ!」と止めることも)。さあ、どうする?
老いも若きも「その時」を考えて準備はしておきたい
明日かもしれないし、50年後かもしれないが、あなたも私も、いつか亡くなってしまう。これは紛れもない事実。最近では身の回りを生前整理しておく「終活」が話題になっているが、デジタルデータについても同じことがいえる。"その時"のために準備できそうなことは、たとえばこんなこと。
1.知らないと困るだろうな、と思うことを挙げておく
長年撮影してそのままになっている家族写真やメールのやり取り。自分がいなくなったあとでも、家族が目を通したいと思うような内容は、フォルダごとにわかりやすく整理しておこう。逆に、「これは不要なもの。だけど今のうちは手元に置いておきたい」といった類のデータも、わかるようにしておくと安心だ。いざ家族がデータを見たとき「これは大事なもの? それとも不要なもの?」と区別するのはなかなか難しい。残された家族が困らないように、生前整理をしっかりしておこう。
もちろん、パソコンやスマートフォンのパスワードはなんらかの方法で伝えておくことを忘れずに。パスワード解除サービスを業者に依頼すると、だいたい2万円前後で実施してくれるが、必ず成功するとは限らない。あらかじめ共有しておいた方がいいだろう。
2.お金関係のことはできるだけ共有する
インターネットバンキングのID/パスワード、電子化された株券などは、本人以外がアクセスするための情報開示は途方もなく面倒臭い。場合によっては、弁護士なりのお世話にならないとなにもできないケースもある。そのため、利用しているサービスとそのアクセス方法は、きちんと共有をしておいた方が安心だ。
もちろん、テキストファイルに書き込んで、自分のパソコンに保存しておくのでは意味がない。オンラインストレージに保存しておくのも、万一、不正アクセスにあったときのことを考えると避けるべき。そのほか、口座開設時の書類などはまとめて保管しておくこと。せっかく家族のために資産を運用していたのに、家族に一生渡せない! なんて悲劇があったら、死んでも死にきれないだろう。
3.SNSやブログも放置しておくと面倒なことに
故人が運営していたSNSやブログも、放っておくとマズイ事態に陥る可能性がある。動いていないアカウントを狙って、悪意あるハッカーが乗っ取りを行い、詐欺やスキミングといった犯罪行為の手段に使われてしまうのだ。
とはいえ、実名ならまだしも、ハンドルネームでブログを運営していたら、第三者がそれを見つけ出すのは難しい。せめて運営会社の名前とか、IDくらいは伝えておけば、死後に家族が運営会社に連絡をすることで、ブログを削除する手続きができる場合がある。
4.絶対に見せたくないものは、破壊するしかない!
個別具体的な想定はあえて避けるが、誰にも見られたくないものは、人間誰しもあるはず。それが死後に明らかにされたとき「恥ずかしい」だけの話で終わるのか、生前に関わりのあった人になんらかの影響を与えてしまう話なのか、その辺はよーく見極めてほしい。
そのうえで、「絶対に見せたくない!」と決めたものは、パソコンやオンラインストレージからは一切削除すること。パスワードなりをかけた外部メモリに移し替えておくのが無難だろう。ただし、パソコンのデータを完全に消し去ることは難しい。最近では、データ復旧サービスも普及しているので、意志(遺志)に関係なく復活させられてしまう可能性も否定できない。本当に、本当に、本当に見られたくないなら、保存媒体を物理的に破壊するしかない!
文:吉田 努