2017/05/08

スマホ連携で生まれ変わった、オースティン市のスマート交通サービス

アメリカでもスマートシティ構想に力を入れるテキサス州オースティン市は、住民に役立つ新たな交通移動手段として、通信の力を駆使したスマート交通化が進んでいる。

もともとオースティン市ではUberやLyftをいち早く導入し、地元タクシー会社との共存を進めていた。ところがその一方で、両サービスでのトラブルが懸念されるようになり、2015年12月にはドライバーの犯罪履歴調査と指紋の提出(と巨大なステッカーでの表示)などを義務づける規制案が提案された。それに反発した両社は規制を撤回するよう提案したが、住民投票で却下され、2016年5月に相次いで同市から撤退してしまった。

オースティン市ではこのままオンデマンドタクシー・サービスが消滅するかと思いきや、新たなサービスが登場し、そのまま普及しているというのだ。

ドライバーの事故歴、犯罪履歴を徹底精査! 安全性を重視する「FASTEN」

写真提供:Fasten
写真提供:Fasten

そのひとつである「FASTEN」は、安全性が特長。オースティン市が指紋提出の根拠にしていた犯罪歴の有無について、過去7年間にさかのぼり、交通事故歴も含めてチェックしている。また、乗車履歴などのデータについても扱いを明確にして、ドライバーと乗客の信頼の構築にも寄与。ボストンでもサービスを開始しており、少しずつ利用者を伸ばしている。

売上を地元の慈善団体に還元する「Ride Austin」

写真提供:Ride Austin

もうひとつの「Ride Austin」は、 Ride Share Austinという名のNPOが運営している。ドライバーはもちろん有給で雇われており、運営コストを抑えることで利用料金を抑え、さらに収益の一部を寄付するというユニークな運営体制をとっている。サービス業としての利益は発生しておらず、市民サービスと位置付けられている点もユニークだ。

ありそうでなかったバスの多機能アプリ

市内を縦横無尽に走っているバス専用のアプリも登場し、市民の足を助けるという点で役立っている。「CapMetro」は、リアルタイムの運行状況がわかるだけでなく、地図の検索やオンラインでチケットの購入ができるほか、旅行のスケジューリングをしてくれる機能も搭載されている。事前登録が必要だが、支払いはクレジットとPaypalから選べて小銭を用意する必要がないので、旅行者にも喜ばれている。多くの停留所とバスに無料のWi-Fiサービスが導入されているのも注目だ。

スマホが起こす交通革命!?

ほかにもオースティンでは電気自動車を使ったカーシェアリング「CAR2GO」やシェアサイクリングが用意され、週末や大きなイベント期間中はペディキャブと呼ばれる電動自動車を使った簡易タクシーも利用できる。街全体で公共交通移動システムの改革に取り組んでおり、道路もそれにあわせたレーン整備が行われている。

いずれのサービスもスマホがあることで実現できるサービスであり、ほかのサービスとも連携しやすいためか、経路を検索した結果からそれぞれのサービスを比較できるようにもなりつつある。主要サービスの撤退によって、かえって便利で快適になったオースティン市の動きは、オンデマンドやライドシェアを越える、「都市における交通サービスの進化」を続けている。ぜひ日本でも参考にしてほしいところだ。

文:野々下裕子