2017/04/21
世界最大のテック系イベントSXSWに広報部員が突撃取材 波動拳を体得しました
SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエストと読みます)、みなさんは知っていますか? 毎年3月にアメリカ、テキサス州、オースティンで開催される、世界最大級のテックのお祭りです。2007年にTwitterがブレイクしたことでも知られ、最先端のテクノロジー企業、イノベーター、投資家が集まります。名だたるサービスを輩出してきたイベントということで、以前から一度参加してみたい!と思っていたSXSW。今年はT&S編集部員の大ちゃんと一緒に取材に行かせてもらうことになりました。
→最新のデジタルテクノロジーが集う"音楽フェス"、「SXSW」とは?
それではさっそく、SXSWで見つけてきたものについてご報告します!
KDDI ∞ Labo卒業生! 「電玉」がSXSW進出!
KDDIがベンチャービジネスを支援するために設けたプログラム「KDDI ∞ Labo(無限ラボ)」。この第9期の卒業生で、成果を発表するDemo dayでは、オーディエンス賞を獲得した電玉がなんと日本から遠く離れたオースティンの地でブースを出していました。
電玉は、高齢者のコミュニケーションを変えたいという思いから生まれたそうです。「昔のおもちゃで孫や子どもと遊びたいのに、なかなか一緒に遊んでくれない、という方が多いことがわかりました。そこで、伝統あるけん玉をIoT化することを考えました」と、電玉代表の大谷さん。
けん玉の競技人口は、日本だけで300万人。実は世界中でブームになっており、けん玉の世界選手権でもトップ10は米国人なんだそうです。(大谷さんは世界ランク300位らしい・・・・・・)。なるほど、確かにブースにはたくさんの子どもたちの姿が!
この電玉、専用のアプリと連動して世界中のけん玉プレイヤーと遊ぶことが可能です。さらに、2017年3月16日よりクラウドファンディング(Kickstarter)で資金調達開始しています。大谷さんは「SXSWで世界中の人たちに見てもらい、拡散されることで、ゆくゆくは日本に逆輸入をするかたちでムーブメントを起こしたい」とのこと。電玉の今後の動向、目が離せませんね!
→【検証】「けん玉」がIoTで「電玉」に進化!? アメリカ人トップ・プレイヤーを召還して開発チームがガチバトル!
障がいをもつ人の気持ちがわかる、障がいを助けてくれるサービスも
「吃音(きつおん)」って知っていますか? 「吃音」とは、言葉がうまく出せなくなってしまう症状のことです。原因は不明ですが、不安や緊張などの心理的影響が強いと考えられてるそうです。
今回、東京大学のチームが「STACHA」というサービスを発表していました。「STACHA」は健常者が装着して、吃音症の方の気持ちを理解できるようになるデバイスです。専用の機械を首もとに近づけるだけで声が出にくくなります。
開発者ご本人も幼いころから吃音に苦しんでいたそうで、その苦しみを少しでも理解してほしいということで、このサービスを思いついたそうです。
吃音症の方はアメリカで7,000万人、日本では120万人いるといわれており、ニーズはとてもありそうです。
開発者の方は、「吃音症の人は公の場で話すことに神経質になっている。教師や親のプレッシャーからくることもあります。このサービスはそんな教師や親に体験してもらうことで、吃音に対する理解を深めてもらいたい」と語っていました。
ほかにも弱視の方に向けた、網膜に映像を投影する最先端のメガネも出品されていました。「Retissa(Retinal Projection Eyewear)」は、眼鏡の中央部にカメラが内蔵されており、カメラで見た映像をそのまま網膜に投影します。網膜に投影されているだけなので、見ていて疲れることはありません。弱視の方の世界を広げてくれること間違いなしです。テクノロジーがさまざまな障がいやハンデを持つ人の助けになればすばらしいことですよね。
ほかにも日本企業が続々進出中!
日本の企業もSXSWには多く出展していました。なんと今年のSXSWへの日本人の参加者は700人を超えているそう。日本の企業が出展していたなかで一部、ご紹介します。
・資生堂のテレビ会議用"すっぴん隠しメイク"サービス
自宅からテレワークをする際にすっぴんでも会議に参加ができる商品です。最近はオフィス以外でも仕事ができる「テレワーク」を導入している企業が増えてきています。テレワークでは、テレビ会議をすることも多いはず。でも、自宅ではすっぴんで仕事をしている女性も多いのではないでしょうか?
わざわざ数分のテレビ会議のためにメイクをするのも面倒くさい。そんな女性の味方が、「TeleBeauty」です。「TeleBeauty」を使えば、モニター上で自然なメイクを施してくれます。女性の手間をなくしてくれる画期的な商品です。このメイクをすれば、表情が豊かになり、会議も円滑に進みそうですね!
・"波動拳"をVR体験! 博報堂アイ・スタジオ
「INVISIBLE FORCE」というVR体験を、大ちゃんと一緒にしました。VRゴーグルを装着したあと、飛ばしたい物体と約3メートル離れて立ちます。するとVRの画面上にバリアが出現。手をかざすことでバリアを剥がすことができます。
力をためて手を振りかざすと、離れたところに置いていた大ちゃんが高く飛び上がりました。これは、仮想世界のモノと現実世界のモノが相互に影響を及ぼすMRプロダクトです。大ちゃんが飛び上がる姿に多くの見物人が沸いていましたよ!
同じく博報堂アイ・スタジオが出品していた「Talking POP」は、ショッピングが楽しくなるデバイス。陳列棚の下にあらかじめ鉄板を配置しておき、その上に置いた食材に触れたり持ち上げたりすると、「Hello!」などと話しかけてくれます。野菜を触ったときに人の体から流れる微弱な電流を感知し、それをスイッチに音声が流れる仕組みだそうです。
そもそもは「食の風評被害を減らすこと」を目的として開発したとのこと。このサービスが普及して、生産者の思いや美味しく食べるための調理法などが売り場で直接、生活者に伝わるようになれば、お買い物がもっと楽しくなりそうです。
・パナソニックのお弁当!?
「Bento」は、お弁当をシェアするIoTデバイス。オフィスに専用の冷蔵庫を設置しておけば、適宜、お弁当を補充してくれるというサービスです。購入者はどのお弁当にするか、スマホ上で選択します。各弁当に使っている食材はなにか、カロリーはどのくらいか、事前に確認することが可能で、オンライン上での決済もできます。
冷蔵庫の中にモジュールを積み、お客さまの要望によってはカメラを取り付けることも可能だそうです。2017年度中には商用化を目指しており、お弁当をシェアする以外にも、なんと本棚としても使用できるとか。オフィスだけでなく、シェアハウスやAirbnbといった複数の人が集まる場で、セキュリティ的にもばっちり役立ちそうですね!
SXSWに見る、「VR」のトレンド
今年のSXSWはたくさんのVR体験ブースがあり、どこも長蛇の列ができていました。ひとりで使うものから、複数人で遊ぶもの、また、社会問題をコンテンツ化したものなど、その内容はさまざま。印象深かったものをご紹介します。
・Facebookは社会問題をVR映像化
Facebookのブースでは、オキュラスのヘッドマウントディスプレイを使って、メキシコの環境問題、LAの教育問題、LGBTの差別問題について、5分から10分程度のVR映像を提供していました。
VRのコンテンツで社会問題を取り上げることによって1冊の本、1本の映画を観たような満足感がありました。VRは語るよりも簡単に、よりわかりやすく課題を伝えるにはぴったりなツールだと、改めて実感することができました。
・ソニーは"視覚交換鬼ごっこ"
ソニーブースのWOWFactory内にあった、「Superreception」。
これは、4人で迷路のなかに入り、VR上に全員の見ている視界の映像をシェアしながら鬼ごっこをするというもので、ひと言でいえば「視覚交換鬼ごっこ」。スポンジの剣を持った鬼がプレイヤーを追い、刺すことができれば鬼チェンジです。鬼の視界を見ながら逃げることができるので、簡単に逃げることができるかと思いきや案外難しく、私は中盤まではうまく逃げていたものの、残り1分であえなく捕まってしまいました・・・・・・。
他人と視覚を交換すると、人間はどのような行動をとるのか体験できます。ゲームをより面白くしてくれる実況付きで、観戦しているオーディエンスも大盛り上がり! VRの新しい遊び方の誕生を感じました。
大物に会える! それもSXSW!
SXSWには多くの著名人が参加します。なかでも私がぐっと来たのが、あの、世界的デザイナーのマーク・ジェイコブスの講演。‟The Fashion Designer in the Age of Social Media"というテーマについて語っていました。1,000人は入るんじゃないか? という会場もほぼ満員でした。
印象的だったのはジェイコブスの最後の言葉。オーディエンスから、「トランプ大統領に洋服はつくらないの?」と聞かれ、「トランプ大統領につくる服はない」と例の騒動を一刀両断。会場が沸いていました。
つまりSXSWとは!
SXSWに参加をしてみて、最先端のテクノロジーに遊び心を加えることで、私たちの生活はより豊かになる、ということを実感しました。テクノロジーは私たちの生活のとても身近なものなんですね。
また、イベントに参加している多くのスタートアップがクラウドファンディングを利用しており、生産者が販売に至るまでの障壁が低くなってきていると感じました。すばらしいアイデアさえあれば、誰でも挑戦ができる! その象徴がSXSWというイベントなのかもしれません。
おまけ:大ちゃんとの珍道中
SXSWの開催期間中、オースティンの街は朝から晩までお祭り騒ぎ! レポートの最後は街や会場の様子を「おまけ」としてご紹介します。
・会場ではいろんなものがもらえる!
SXSWでは道を歩いているだけでTシャツやサングラス、CD、チップス、お菓子、ボトルなどなど、いろいろなものを貰っちゃいました。しかもどれもなかなかオシャレ! 帰国してからも大事に使わせてもらってます。
・クルマは必須です
今回、宿泊していたホテルから、会場となるダウンタウンまでは、6マイルほどの距離が。街を移動することになるのでこの赤い相棒を借りて、ずっと一緒に行動をしていました。
・会場で出会ったヘンなもの諸々
以上、広報部の堀内がSXSWのレポートをお伝えしました!
文・写真:堀内優里