2016/02/22

【検証】「けん玉」がIoTで『電玉』に進化! アメリカ人トップ・プレイヤーを召還して開発チームがガチバトル

近年、海外でストリート&エクストリーム系スポーツとして人気を博し、日本に逆輸入。小学生のあいだでもブームとなり、高齢者のリハビリにも利用されているものといえば? ......答えは「KENDAMA」。そう、日本人なら一度は遊んだことがある「けん玉」である。

スマホと連携すれば「電玉」同士で対決ができる!

「電玉」開発メンバーの5人。写真上段左から平野太一さん、渡辺諒さん。写真下段左から大河原正篤さん、大谷宜央さん、田邊愛海さん。そもそも「au未来研究所」で開催されたハッカソンで誕生したチームが、アイデアを形にしたいと、今回、「KDDI ∞ Labo」に参加した

そんな「けん玉」の可能性をさらに広げてくれそうなのが「電玉」である。こちらはスタートアップ企業を応援する「KDDI ∞ Labo」第9期のハードウェアプログラムに参加したチームが開発した未来のけん玉で、最大の特徴は、インターネットと融合したIoT製品であることだ。ネットワークにつながり、スマホ画面を介して「電玉」同士でさまざまなゲーム対決ができるという。

たとえば、「ジンダッシュ」は、各自10秒以内のターンで、けん玉の技ごとに設定された陣地を、相手より早く規定回数を成功させて奪うゲームだ。焦るとなかなか技が決まらなかったり、奪われそうな陣地を阻止したりといった戦略も必要となり、やり応えも見応えもあるゲームだ。

いわゆる、"落ちゲー"の「ラッシュアワー」は、「電玉」で技を決めると、相手の陣地に泡を溜めたり、自分の陣地の泡を弾けさせたりできるゲーム。相手の陣地を泡で埋めたら勝利となる。さらに、技が成功すると相手の「電玉」がブルブル振動して、邪魔をするなんていう機能もある。

「電玉」開発チームとアメリカ人けん玉プレイヤーが対決!!

けん玉歴8年のMJさん。「グローバルけん玉ネットワーク」が主宰する世界大会やイベントなどに参加している

こんな面白そうなゲーム、ほっとくわけにはいかない! 早速、開発チームと勝負をすべく、果たし状を送ったところ、あっさりとOKの返事が。どうやら、かなり自信があるらしい......。

ならばこちらも、奥の手を使おうじゃないか。"けん玉で世界をつなぐ"をスローガンに活動する「グローバルけん玉ネットワーク」にお願いして、「最強」との呼び声も高い、アメリカ人けん玉プレイヤーのMJさんを紹介してもらった。MJさんは、音楽に合わせてアクロバティックな技を決める"ストリートけん玉"の名手である。

さて、けん玉の技にはそれぞれ名前がある。わかりやすいものなら、玉をまっすぐ上げてけん先にさす「止めけん」。玉を小皿→大皿→中皿の順に乗せていき、最後にけん先にさすのが「世界一周」だ。MJさん、一体どれほどのウデの持ち主か、まずは対戦前に見せてもらうことにしよう。まずは「世界一周」。

オーソドックスな技だが、MJさんがやると安定度がハンパない。ひざのクッションを上手く使いながら、危なげなく成功させている。

さらに大技の「らせん飛行機」。「飛行機」という技は、玉をもって剣先を玉の穴に入れる技で、「らせん飛行機」は、その技の途中で指を支点にして糸を使い、けん玉をくるりと回転させるという大技だ。え、よくわからない? じゃあ、動画を見て!

どうッスか?
ぶっちゃけ、負ける気がしねぇ。

"落ちゲー"の「ラッシュアワー」対決は、まるでクラブイベント

今回、対戦してくれるのは、「電玉」技術担当の大河原正篤さん。技術担当なら、相当やりこんでいるに違いない。対戦ゲームは"落ちゲー"の『ラッシュアワー』だ。いざ、勝負!

ゲームがスタートすると、ダンスミュージックさならがらのノリがいいBGMが流れる。そして、技が決まるたびにLEDで赤く光る「電玉」。MJさんが技を決めると画面左に、大河原さんが決めると画面右に泡が溜まる。

また、溜まった泡は技を成功させることで弾けさせて消すこともできる。泡が溜まったり弾けたりする量は、技の難易度によって左右される。

まずは、互いの実力を探るべく、ジャブのごとく小技を決める2人。「電玉」の技と連動して、ゲーム画面には泡が溜まっていく。※開発中のため、ゲーム名称や本体の仕様、ゲーム画面などは変更する場合があります

ノリノリなBGMと相まって、なんだかクラブイベントで映像の演出を見ているような感覚。試合を観戦しているこちらも楽しいぞ。実は「ラッシュアワー」は、大勢のギャラリーが観戦する前提でつくられたという。

と、そろそろ本気を出してきたMJさん。「止めけん」や「世界一周」など、テンポ良くコンボを決め、大河原さんの陣地に一気に泡が溜まる。

一方の大河原さんは、大皿と中皿に玉を乗せる繰り返し。なるほど、ポイントをコツコツ稼ぐ作戦か。さすがは開発者、勝負を知ってるな......。と感心する我々取材陣。点差は開いていく一方だが......。いや、なんか大河原さんの動き、ぎこちなくない??

MJさんが「世界一周」を連発し、大河原さんの「電玉』がブルブル! 玉はポロリ。ん? 大河原さん?

「Hey You!」
おっと、ここでMJさんから大河原さんにアドバイス。「もっとヒザを使って。全身でやるんだ!」。アドバイス通り、ヒザを使う大川原さん。しかし、反撃むなしく、容赦なく大技を決めるMJさん。

あっ、あああ......。

「YEEEESSSSSS!!!!!!!」

勝利の雄叫びとともにアッサリ試合終了。早っ! 大差でMJさんが勝利。思わず「圧倒的じゃないか、我が軍は」と呟いてしまうほどの完勝だ。ガックリと肩を落とす大河原さんを横目に、「HAHAHA!! 『電玉』サイコーだよ!」とMJさんはハイテンション。ではさっそく、実際にプレイした感想を聞いてみよう。

「技が決まったときにLEDが光るのがチョーCOOL。プレイ中にゲーム画面が見えないから、チョット焦って楽しいネ。BGMもいいし、イベントでやれば盛りあがりそうだよ。しかも、ひとりでやるけん玉が、みんなでつながれるのはVERY新しくて楽しいネ。スマホにつなげてカウントできれば、KIDSたちの練習のモチベーションが上がりそうだよ!」

一方の大河原さん、「すみません。僕、『電玉』の開発に携わるようになってからけん玉を始めたので、まだ経験は8カ月くらいなんです......」。逆に、初心者なのに、なぜストリートけん玉の達人の挑戦を自信たっぷりで受けた!? という言葉を飲み込み、その勇気を讃える我々オーディエンスだった。

IoTの技術で"遊び"の可能性を広げたい

「電玉」開発の責任者を務める大谷宜央さん

さて、数あるけん玉の技を感知して、ゲームと連動させているのが「電玉」だ。しかし、どうやって技を判別することができるのだろうか? その仕組みをチーム代表の大谷宜央さんに聞いてみた。

「『電玉』には、大皿、中皿、小皿、剣先の部分に、金属を検知するセンサーとLEDが内蔵されています。玉の部分にアルミを使うことで、玉が皿に乗ったり剣先に入ったりしたことを検知し、技を判別したりLEDを光らせたりしているんです」

たしかに、皿に玉が乗った順番で決まる「世界一周」や「日本一周」のような技ならば、金属を感知するセンサーで判断が可能だろう。しかし、けん(本体)を持って玉を振り、玉の穴に剣先を入れる「止めけん」と、玉を持ってけんを振り、玉の穴に剣先を入れる「飛行機」は、金属検知のセンサーでは判別は難しいはず。

「おっしゃる通りです。実はけんの部分に、姿勢検知センサーを入れているんです。これは、地面に対して剣先がどちらを向いているかがわかるセンサー。さらに、先ほどのゲームで相手が技を成功させたときに『電玉』が震えていたのは、モーターを内蔵しているから。当然、通信モジュールやリチウムイオン電池、またそれらを統合するマイクロコンピュータも入っています

なんと、「電玉」はセンサーの塊だった。よくもまあ、けん玉をこれだけハイテク武装しようと思ったものだ。

「そもそも『電玉』は、高齢者と孫がコミュニケーションをとる手段として考えたもの。昔のおもちゃで孫と遊びたい、と話す人が多かったので、そのなかでスマホと連携させたら面白いものはなんだろうと話し合ったときに、けん玉が浮かび上がったんです。で、調べたら、国内だけで競技人口は300万人以上と言われており、海外でも人気になっている。高齢者のリハビリにも使われるなど、市場がしっかりと存在するので、ビジネスとして成立するだろうと判断しました」

驚いたことに、今年2月には「株式会社電玉」を設立。今後は、ビジネススキームを詰めていき、3月にはクラウドファンディングで資金を集め、10月を目処に製品化を目指しているという。

製品化されたら、スマホと連携することで、通信ゲームのように離れた場所にいる相手とのゲーム勝負も可能となる。日本にいながら、けん玉世界チャンピオンと勝負なんてことができるかもしれない。また、練習のためのカウント機能や技の確認などができるアプリも検討中だ。

「いずれは、『電玉』のAPIを開放する予定です。いろんな人に対応アプリをつくって欲しいですね。そうすれば、思いもよらない使い方ができるかもしれません」

日本の伝統的なオモチャであるけん玉が、IoTを活用することでここまで進化を遂げるとは......。いつか、世界中の人たちが「電玉」で遊ぶ時代がくるのかもしれない。そのポテンシャルは想像以上に高い。 ※API=アプリケーションプログラムインターフェイスの略語。既存のプログラムをベースに、個々の開発者はAPIに従って機能を呼び出す短いプログラムを記述するだけで、自分でプログラミングをせずに、その機能を利用したソフトウェアを作成することが可能。

文:コージー林田
撮影:玉井幹朗
取材協力:グローバルけん玉ネットワーク

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