2017/02/22

脳波でロボットを制御する世界がついにやってくる

脳波でコントロールするレーシングカー!?

写真提供:University of Warwick

イングランドのウォーリック大学で、マインドコントロールの研究が進められている。マインドコントロールといっても洗脳のことではなく、センサー付きヘッドセットを頭に装着して、思考により生じる脳波を検出。この信号をもとに、リモコンで玩具などを操作するというものだ。

ウォーリック大学工学部のクリストファー・ジェームス教授が試作したのは、リラックスや集中で変化するアルファー波をEEG(脳波検査)用センサー付きヘッドセットで検出し、電流に変え、これを増幅して、Scalextric社のレーシングカーのコースに流し込むというものだ。集中度を上げるとスピードも上がる。

コンピュータのカーソルを動かすなど、ヒューマン・マシン・インターフェースに脳波を使う技術は以前から存在していたが、年々、脳波検出の技術が向上して、ゲームや玩具をコントロールする「Brain Control Inter-face(BCI)」として使えるようになってきたという。手で操作するリモコンの玩具、レーシングカーやヘリコプター、ロボットなどは不動の人気を保っているが、近い将来、手の代わりに脳波を使うリモコン玩具が人気を博する日も近いのかもしれない。

脳でイメージすることでロボットアームを操作

脳波を使って操作する技術は、たとえば、手の機能に問題がある人に役立つロボットアームに応用できる。同種の研究は各地で行われており、アメリカのミネソタ大学では、脳波を使ってコントロールするアームで、物をつかんで運び、棚に置くという研究の実演映像が公開されている。

ロボットアームは、2次元で動くコンピューターカーソルの動作に合わせて動くようにプログラムされている。次の段階として被験者は、机の上に置かれたオブジェクトの中から、指定されたオブジェクトをロボットアームを動かして「つかむ」訓練を行った。

被験者は、まず、コンピュータのカーソルを脳波で操作する練習をした。また、ロボットアームが「つかむ」「放す」という動作を明確にイメージする訓練をした。

図版提供:University of Minnesota(CC-BY)

ロボットアームは2次元で動くコンピューターカーソルの動作に合わせて動くようにプログラムされている。次の段階として被験者は、机の上に置かれたオブジェクトの中から、指定されたオブジェクトをロボットアームを動かして「掴む」訓練を行った。

最後に、一連の動作を連続して行う。画面上では目的の位置が「黄色の長方形」、ロボットアームの位置が「赤い丸印」で表示されており、被験者が画面を見ながら赤い丸を黄色の長方形に近づけていくことをイメージすることで、ロボットアームもそのとおりに動く。動きのイメージと「つかむ」「放す」のイメージを組み合わせることで、脳波を使ったロボットアームのコントロールが可能になるというわけだ。最終的にテストに臨んだ8名の被験者が全員、ロボットの腕を操作することができたという。

脳内に電極を埋め込むような手術が不要で、ヘッドギアタイプのコントローラーで動かせる。さらに研究が進んで精度があがれば、身体が自由に動かせなくなった高齢者などのQOL(Quality of Life)向上に大いに役立ちそうな研究だ。

写真提供:University of Minnesota

文:幸野百太郎