2017/06/27
スマホで育てた野菜を食べてみた! リアルとバーチャルが融合した畑『Ragri』
通常は農家の人たちの手で生産された作物が我々の食卓に並ぶわけですが、ちょっと想像してみて下さい。自分で土に種をまき、やがて芽が出てすくすくと育ち、たわわに実った作物を収穫するところを。間違いなく美味しいですよね。でも忙しい現代人、自分で家庭菜園を試みるのはなかなかハードルが高い。
いつかは農業やってみたいけど、時間も敷地もないし、定年後の楽しみに取っとくか・・・・・・なんていうメンズも、虫とか無理〜、なんていう女子も、諦めることなかれ。スマホやPCでバーチャルの畑を所有して、画面越しに水やりなどのお世話をしたら、収穫した作物が実際におうちに届くという、すごいサービスがあるんですよッ!
「Ragri(ラグリ)」
楽天とテレファームが運営する、スマホやPC経由で有機野菜等を栽培できるサービスです。料金は、たとえば葉物野菜なら、送料込みで月々1,000~2,000円。こだわりの農作物を育てる生産者を選び、スマホやPCサイト上で栽培・収穫できます。生産の流れは後述しますが、Ragriのバーチャル畑で作物を育てることで、疑似農業体験ができるというわけです。
山奥で生まれ育ち、友達との待ち合わせは畑、手土産に作物や鶏卵を持参し、搾りたての牛乳などとトレードしていたというプリミティブな経歴を持つ筆者にとって、畑について考察を巡らせるのは実に20年ぶり。郷愁と相まって畑育ちの血が騒ぐゥ! さっそくやってみましょう。
作物と生産者を決めよう
1.作物を選ぶ
季節の旬の野菜がたくさん用意されていて、小松菜、玉ねぎなどの野菜から、みかんや柿などの果物まで40種類(2017年6月1日時点)の作物から選べます。栽培期間は作物によりますが、葉ものは2カ月など比較的早く収穫でき、反対に果物などの実ものは収穫までに3カ月から半年ほどかかるようです。今回はサラダ菜を選択!
2.生産者を選ぶ
ユーザーが画面越し行う作物のお世話を実際にしてくれる農家さんを選択し、利用料を支払います。現在Ragriには愛媛県を中心にたくさんの農業のプロが控えていて、エントリーされる農家の人は意外に若い人が多いのだとか。頻繁にネットに触れる層だからこそ、次世代の農業マーケティングに感度が高いということでしょうか。今回は長坂知洋さんというイケメンを抜擢。これからこのイケメンにサラダ菜を育ててもらおうと思います。
レッツ! Ragri!!
1.種をまこう
さっそく育てていきましょう。最初は種まきの段階から。画面はこんな感じです。
成長度は1〜7のフェーズに分かれ、発芽から収穫可能状態まで、今自分が育てている作物がどのステータスにあるのかをリアルタイムで確認できます。成長度が更新されると生産者から写真付きでコメントが届くので、作物を育てている感がみなぎり、満足するというもの。
2.お世話をしてみよう
お世話の内容は基本的には「水分」「肥料」「雑草」の3つ。それぞれの状態は下に設置されたバロメーターから確認できるので、最適量を目指してお世話をします。少なすぎても多すぎてもダメで、そのお世話のきめ細やかさが「元気度」に反映されます。この「元気度」が収穫時に高いほど、実際の収穫量が多くなるので、気を抜いたらあきませんよ。
※実際の畑の収穫量は、天候や虫・病気による被害によって変動します。同じ畑で同じ作物を育てている人のなかで、「元気度」が高い人に作物が優先的に多く振り分けられるという仕組みです。
時々虫が発生するので、「虫を取る」作業をお願いすることも。「虫とか無理〜」などという女子でも、実際には農家さんがやってくれるので安心ですね。
筆者はRagriのページをホーム画面に設置し、朝と夜の通勤時間にチェックしていました。時々お世話を忘れそうになり、ヤベッという日もありましたが、万が一忘れたとしてもリアルな畑では農家さんが責任を持ってお世話をしてくれているから大丈夫。バーチャルな畑の元気度が低くても、最低収穫量は保証してくれるので安心ですが、なるべくこまめにチェックしたほうがたくさん収穫できます。
3.収穫!
成長度がMAXになると、いよいよ収穫が可能となります。生産者から収穫のお知らせが届いたら、あとは手元に届くのを待つだけ。自分がスマホで育てた野菜はどんな味がするんでしょうね。楽しみすぎて熱が出ちゃう!
待つこと数日・・・・・・
届きました!
とれたてのサラダ菜10袋強。コンクリートジャングルのなかで開封したダンボールからは愛媛県の土壌の香りが漂い、その鮮やかな緑に、激務や失恋により荒んだアラサーの心が癒えていくようです。ありがとう、Ragri。
今回は取材用として特別にRagriで同じく提供している紫小松菜と紫みずなもいただいちゃいました。さっそく食べてみましょう。
サラダとスムージーをつくりました。サラダ菜はやわらかくて甘みがあり、新鮮でみずみずしいので1株ひとりで平らげました。スムージーにした紫小松菜も、葉もの特有の青臭さが全然なく、栄養満点の味がして五臓六腑に染み渡ります。これなら野菜をまったく食べない上司を「ジュースですよ」と騙して飲ませることができそう。
Ragriは未来の農業のかたち
今回、取材に当たって、楽天株式会社新サービス開発カンパニーの丸山毅さんに開発に至った経緯を聞いてみました。
「もともとは株式会社テレファームの『農業を変えよう』という強い思いに共感し、共同でサービスを運営していくことになりました。テレファームも楽天も、目的としたのは『インターネットを活用した農業支援で、地方創世への貢献を目指す』ことです。担い手も少なく、農業が衰退している現状を解消するために、Ragriでは、ユーザーと農家をつなぐ場所を提供し、ゲーム性を導入することでより多くの方に気軽に参加できるように開発しました。ユーザーもインターネットを通して農家の顔が見え、成長過程を確認することができるため、食育や安心・安全な野菜を購入するのに最適な仕組みになっています」
とのこと。また、Ragriは2017年9月頃を目途に、農家のブログや掲示板を設けてユーザーと農家がコミュニケーションできる場を設ける予定とのことなので、ますます農家とユーザーの距離が近くなることが期待できますね。
これまで、さまざまな農園ゲームなどで作物の生産を疑似体験することはできました。画面をタップして作物の世話をしたとき、小さな芽が葉を広げ、茎を伸ばして、作物が実っていく。ここまでは従来も体験することができました。しかしながら、Ragriは自分がスマホで世話をした作物の状態が、写真や生産者のコメントとともにリアルタイムで確認でき、実際に収穫して、手元に届けられるのです。ユーザーは土を触ることなく農業を疑似体験でき、生産者たちは生産量を上げられるうえ地域の活性化につなげられる。Ragriは、農業従事者の減少が続く農家と安心な食を求めるユーザーを通信でつなぐ、未来の農業のさきがけと言えるかもしれません。
文:内山内内子