2017/02/10

あのポッキーでプログラミングを学べる『GLICODE』 お菓子と子どもを本気で考えるグリコの思いが熱い

今や「親が子どもにさせたい習いごと」として英語に続いて人気の「プログラミング」。幼児から遊んで学べるプログラミングおもちゃや、以前こちらで紹介した「Osmo Coding」のようにタブレットを活用したスマートトイなど、どれを選べばいいのか迷うほど、毎月のように関連教材がリリースされています。そんななかでも、今までにない斬新な発想で、一躍話題になったプログラミング教材がありました。

それが「GLICODE(グリコード)」。

「グリコのお菓子」でおなじみの江崎グリコが開発した、本物のお菓子を使ってプログラミングを遊んで学べるアプリです。

プログラミングの世界への入り口を楽しく簡単に

「GLICODE」は、ビスコ、ポッキーチョコレート、アーモンドピーク、グリコの4種類のお菓子を実際に並べ、スマホの専用アプリから撮影すると、画面の中のキャラクターが並べた命令どおりに動くというもの。「とびこえる」「のぼる」といった命令を上手につなげて、キャラクターをゴールに導いていきます。

お菓子は1種類だけでも遊べますが、4種類全部を使うことで、より複雑なプログラミングを組むことができます。コードをまったく知らない人でも、お菓子を並べるだけで簡単にプログラミングできるのがポイント。ましてや、大好きなお菓子でしたら、子どものテンションも上がりっぱなしです。

なぜ、お菓子メーカーがプログラミング教材を?

実は、江崎グリコでは、自社アプリをリリースするのは初めてではありません。これまでにもパズルゲーム「ならべてグリコ」や、くじ引きアプリ「フルフルポッキー」など、グリコの商品を生かしたユニークなアプリを公開し、話題になっていました。

開発のきっかけから、アプリに込めたこだわり、そして「GLICODE」の効果まで、プロジェクトリーダーを務める、江崎グリコ マーケティング本部・広告部の玉井博久さんにじっくりとお聞きしてみました!

江崎グリコ マーケティング本部・広告部の玉井博久さん

「今回、新たに『子ども向けのプログラミング学習』を目的としたアプリ開発を行ったのは、創業以来、江崎グリコが目指す『食を通じて社会に貢献する』という思いがあったからです。お菓子を使用することによって、子どもたちにとって親しみやすく、簡単に理解できて取りかかりやすく、加えて教師の方々にとっても教えやすい。また、タブレット以外に必要なのはお菓子だけなので、手軽に始められます。プログラミングの世界への入り口を、楽しく、簡単なものにしたいという思いがありました」(玉井さん)

もちろん、「使用したあとは、美味しく召し上がってください」とのことでした。

「GLICODE」を使った小学校の授業は大反響

2016年10月に行われた東京都小金井市立前原小学校の授業

GLICODEがリリースされたのは昨年の夏。その直後から大きな反響がありました。GLICODEのコンセプトをまとめた公開映像は、日本を抜いてアメリカからのアクセスがもっとも多いそう。そのほか、韓国やカナダでも人気が高く、全世界的に注目されていることがうかがえます。海外の教育機関からの問い合わせもあるそうで、海外の小学校でグリコのお菓子を使った授業が行われる日も近いかもしれません。

日本では昨年の10月に、東京都小金井市の小学校で、GLICODEを使った公開授業が行われました。

2016年10月に行われた東京都小金井市立前原小学校の授業

「授業時間が終わっても、生徒は誰もやめる様子はなく、『GLICODE』に夢中になっている様子がうかがえました。また、授業後のアンケートでは、9割以上の生徒が『楽しかった』と答えてくれました」(玉井さん)

公開授業では、保護者から「自分の子どもの頃にも、こんな教材が欲しかった」という声があったそうですが、確かにこんな授業があれば、図工や給食よりも楽しみになりそうですね。

先生からは、「こんな教材が欲しかった。従来のプログラミング教材は、文字でのプログラミングが中心で、子どもたちが"自分で指示を出している感覚"がつかみにくい。『GLICODE』は、自分の手を動かすことで"自分で指示を出している感覚"と、"その指示によりモノが動く"ということを直感的に感じることができる点が良い」という意見があったそうです。

この「GLICODE」は、学校や塾、民間のワークショップなどで自由に活用できます。
「授業を行うにあたって必要となる、アプリの進め方や学習のポイントなどを掲載したマニュアルを、ホームページ上にて用意しております。ぜひ学校や家庭での学習で活用してください」(玉井さん)

ただし、タブレットやお菓子などは自分たちで用意すること。広く生徒を募集する際は、食べ物を使うため、子どものアレルギーの有無は事前に確認が必要です。

「GLICODE」は次世代のおもちゃ

小金井市の小学校で行われた授業は、総務省が2016年度から実施している「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業の一環。2020年度から始まる、小学校のプログラミング教育必修化に向けて、一部のモデル校で実際にプログラミング授業を行っているもので、楽しく学ぶツールとして、身近な「食」を使った「GLICODE」の授業は、今後を決める大きな試金石ともいえます。

「江崎グリコは創業以来、『食べることと遊ぶことは子どもの二大天職である』と考えています。創業者である江崎利一は、この思いのもと、『グリコ』は栄養菓子とおもちゃでひとつだと捉えていました。発売以来50億個を超すおもちゃは、子どもたちの創造性を育み、多くの人たちに愛され、親しまれています。『GLICODE』は、次代の『おもちゃ』としても親しんでもらいたいと考えています」と玉井さん。

筆者はグリコのプラスチックおもちゃで遊んでいた世代でしたが、これからは新たに、グリコのおもちゃとして「GLICODE」が加わっていくのでしょう。そして、「GLICODE」で遊んだ子どもたちのなかから、未来のエンジニアが誕生していくかもしれませんね!

文:相川いずみ