2016/05/23
「照らす」だけじゃない! 進化した電球がすごいことになってます
家と家との間隔がかなり離れていることが多いアメリカでは、高級住宅地などで不審者の出入りをモニターするために、24時間監視カメラを含むセキュリティー会社のサービスを利用する家庭も多い。だが、この手の月決めサービスはかなり高価で、庶民向きではないことが多いのが難点だ。
自宅の玄関先の壁やガレージに安価な監視カメラをつけて、留守中の様子を手軽にモニターしたいが、「面倒な配線工事をするのは嫌」という庶民のニーズに応えたのが、LED電球にワイヤレスHDカメラが内蔵された「Snap」だ。
LEDに内蔵された広角カメラで、24時間不審者を監視
Snap(提供:SengledUSA)
見た目はごく普通の白いLED電球「Snap」。価格は150ドル。中に1,080pのHDカメラが内蔵されており、自宅のWi-Fiを通して、ビデオや画像を撮影できる。14Wの明るさのLED電球使用寿命は、2万5,000時間。1年間の電気使用は、約2ドル以下だという。
通常のソケットさえあれば、家の外でも内でもLED電球として機能する。玄関ドアの横やガレージの壁に取り付ければ、監視カメラだと気付かれずに、周囲の様子を24時間モニターできるのが特徴だ。外壁のほかにも、室内でペットや赤ちゃんをモニターするのにも使えそうだ。
「夜間に家を留守にする場合でも、カメラが自動的に作動し、センサーが動く物体を察知します。なにか動くものがビデオに映った場合は、アプリからすぐアラートが送られる仕組みになっています。広角アングルのカメラなので、不審者の動きを確実に捉えやすいんです」
と、Snapを販売するSengledのマーケティング・マネージャーのメガン・ジョンソン氏。Sengled は中国・上海に本社のあるLED商品専門メーカーで、この本社からスピンオフして、スマート電球を専門に扱う米国支社が、約2年前に立ち上げられた。
ビジネスモデルはクラウドサービス
SnapのLEDをオンにしたときの様子
撮影されたビデオ映像は、クラウドに保存される。このクラウドサービスは電球とは別売りだ。クラウドサービスで課金するのが同社のビジネスモデルで、クラウドサービスに加入しないと、使える機能もかなり限られてしまう。
14日間の無料お試し期間のあとは、30日間のサービスが約25ドル。7日間だけのサービスもあり、その場合は約10ドルだ。たとえば、まず1週間のクラウドサービスを申し込み、その後、気に入れば、30日ごとのサービスにアップグレードすることも可能。
クラウドサービスを利用すれば、スマホのアプリ上で、撮影されたストリーミングビデオを見ながら音声も聞けるので、数日間から数週間、自宅を留守にする場合なども安心だ。「旅先から、ライブやリプレイで玄関周りの映像を見られる安心感は大きい。電球はウォータープルーフで、汚れたら洗えるし、雨や雪が降ってもカメラには影響はありません」(ジョンソン氏)。
手軽な価格でさまざまな機能を電球に
サンフランシスコに拠点のあるSengled USAは、クラウドファンディングのIndiegogoで資金を調達。このSnapで、昨年のCESのイノベーション賞も受賞している。
このSnapのほかに、同社が発売してヒットした別のスマート電球が「Boost」だ。Wi-Fiリピーターとして使えるアンテナ内蔵のLED電球で、価格は60ドル。家やオフィスの面積が広く、W-Fiのシグナルが隅々まで行き渡らない場合に、この電球を使えば、シグナルを広範囲に行き渡らせることができる。
「このBoostは我が社のベストセラー商品です。いかにもメカっぽい無機質なWi-Fiリピーターと違い、見た目は普通の電球で、実際に電球としても使えるから、自宅のインテリアにフィットし違和感がないんです」(ジョンソン氏)
さらに、もうひとつの人気商品が、スピーカーとして使えるLED電球の「Pulse Solo」だ。Bluetooth スピーカーで、ひとつのLED電球の中に、スピーカーが2つ搭載されているので、即席ステレオになる。ワイヤーもいらず、部屋の中のどのランプでも使える。価格は60ドル。
Boost(提供:Sengled USA)
Pulse Solo(提供:Sengled USA)
Pulse(提供:Sengled USA)
このPulse Soloの前のモデルの商品が「Pulse」で、こちらは電球ひとつにつき、内蔵スピーカーがひとつのみ。電球は2つセットで150ドルだ。このPulse電球の形はまるでチューリップの花のようで、赤い色が鮮やかだ。その見た目のポップさが注目を呼び、若者を中心に口コミで人気に火がついた。
「ひとつの部屋で6つや7つのPulseを一度に使えば、ホームパーティーで音楽をサウンドで楽しめるし、音の大きさも光の強さも、アプリでコントロールできます」と、ジョンソン氏。
同社の、"インテリアの邪魔をしない"多機能なスマート電球のラインアップは、高価なスマートホームシステムを導入する予算がない家庭でも、気軽に電球ひとつから試せるのが大きな利点だ。
文:長野美穂