2022/12/01

省人店舗の実現を支えるAI(人工知能)を活用したピッキングロボットとは

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auミニッツストア 渋谷店における店舗オペレーションの自動化は、ROMS社が提供するソリューションによって支えられています。

ROMS社は2019年に設立されたスタートアップ企業です。ピッキングロボットなどのロボット技術と自動倉庫の技術をコアにした自動化ソリューションを、日本の小売事業者に特化した形で提供しています。

auミニッツストアのピッキングロボット

「日本の小売業が直面している労働力不足やそれに伴う労働単価の上昇はとても深刻な問題で、その問題から2018年頃にはコンビニエンスストアの24時間営業の停止やオーナーの廃業などが相次ぐようになっていました。そうした状況の打開にロボット技術で何とか貢献したいと考えたことが、当社を設立したきっかけです」と、システムインテグレーション部長 勝藤裕之さんは語ります。

株式会社ROMS システムインテグレーション部長 勝藤裕之さん 株式会社ROMS システムインテグレーション部長 勝藤裕之さん

同社がauミニッツストア 渋谷店に対して提供した仕組みは、menuアプリ経由で入ってくる注文に従い、商品をピッキングして袋詰めを行うロボットと、商品の補充・回収に必要なケースを自動で作業台に運ぶシステムで構成されています。

「こうした当社のシステムによって自動化された店舗は、大型の自動販売機であると考えていただければ理解が早いかもしれません。例えば、お客さまがスマートフォン(menuアプリ)で自分の欲しい商品のボタンを押すと、背後でロボットが動き、オーダーされた商品を袋に詰めて、お渡し、あるいは、お客さまのもとに配送な可能な状態にします。また、自動販売機でも品切れの商品のボタンには“品切れ”を示すサインが点灯しますが、auミニッツストア 渋谷店でも同様に、商品が品切れになると、その情報がmenuアプリにリアルタイムに反映されるようになっています」(勝藤さん)

荷詰め作業の様子

ディープラーニングによるAIでロボットを制御

このように、ROMS社のソリューションによって実現されることはシンプルですが、それを支える仕組みには高度な最先端技術が使われています。例えば、ピッキングロボットは、ディープラーニング(深層学習)の技術を使ったAI(人工知能)によって制御されています。

auミニッツストアのロボット

「一般的なコンビニエンスストアは、ピッキング対象となる商品の種類、形状が多岐にわたり、『ストック キーピング ユニット(Stock Keeping Unit:SKU)』の数は3,000ユニットに上り、うち100から200ユニットが毎週変更されます。そのため、倉庫や工場でのピッキングを自動化するときのように、ピッキング対象の情報をロボットに事前登録することは実質的に不可能です。ロボットへの情報登録に多大な工数がかかり、店舗オペレーションの省力化、省人化を阻害するようなことになりかねません」(勝藤さん)

「そこで当社では、ディープラーニングの技術を使い、ロボットが自らの学習によって注文された商品を正しく認識し、ピックアップできるようにしました。ロボットが商品を識別するための眼の役割は、カメラと3Dセンサーが担っています」(勝藤さん)

株式会社ROMS システムインテグレーション部長 勝藤裕之さん

また、ロボットによるピッキング作業を可能な限り効率化するために、売れ筋商品の傾向などから商品の搬送、並びを最適化するROMS社独自のアルゴリズムもシステムに組み込まれています。さらに、ロボットを含む自動化の設備が万が一ストップした場合に、システムが自己修復して自動復旧を行う仕組みも備えられています。

結果として、auミニッツストア 渋谷店は、(2022年10月時点で)1分間に3~4ピック、1時間にして180ピックの注文に対応した袋詰めを可能としています。また、向こう半年以内には1時間200~240ピックできるようになる予定だと勝藤さんは語り、こう続けます。

「auミニッツストア 渋谷店のプロジェクトはステークホルダーの数も、お客さまの数も相当数に上り、その分、当社が担うべき責任は重く、相当の緊張感をもってさまざまな試みに取り組んでいます。この機会は、当社にとって大きく成長できるチャンスととらえています。また、menu社のように多くの生活者を集客する力をもった会社と、KDDIのように社会インフラを提供する企業が協業して、小売業の変革に取り組むことで、店舗オペレーションのイノベーションが勢いよく進むと期待していますし、当社としても、その取り組みにこれからも貢献したいと願っています」(勝藤さん)