2022/10/15
音楽フェス「SWEET LOVE SHOWER 2022」にauの電波を届けろ スマホが快適に使える裏側
「SWEET LOVE SHOWER」は、山中湖畔を舞台にした人気の音楽フェスだ。ステージの向こうには山中湖が広がり、さらに富士山を望むという壮大なロケーションで音楽を楽しむことができる。このフェスが3年ぶりに現地で開催され、2022年8月26日から28日の3日間、54組のアーティストが出演し、延べ約6万人が集った。
多くの人々が集まることが想定されるイベントの開催時、 KDDIではお客さまのスマホが快適に使えるように臨時の電波対策を行っている。今回の「SWEET LOVE SHOWER 2022」においては、2台の5G対応の車載型基地局で、会場に電波を届けた。その設営はフェス開催の2日前からはじまった。
なぜイベント会場での電波対策が必要なのか
こちらが今回の会場となった「山中湖交流プラザきらら」。山中湖畔に広がる11.3ヘクタールの広大な敷地に、野外劇場やサッカーのフィールド約2面分の天然芝の広場などを有した施設だ。
普段からauがつながるエリアだが、一度に多数の人々が集う音楽フェスなどでは、スマホがつながりにくくなってしまうことも。
そうした事態を想定し、今回は小型トラックに無線機やアンテナなどを搭載した「車載型基地局」を用いて臨時の電波対策を行った。移動した先で2日ほど設営工事を行うことで、電波が発射できるようになり、付近のスマホをつなぐことができる。
こちらが「SWEET LOVE SHOWER 2022」の会場全体図だ。「Mt.Fuji」ステージは既存の野外劇場を利用するが、それ以外の2カ所のステージや入場ゲート、フードコートにワークショップを行うコーナー、物販のショップなどは、もともと何もなかった場所に建てられる。
KDDIは今回、会場の南北2カ所に5G対応の車載型基地局を設営。auだけでなく、UQ mobileやpovoのユーザーが快適に通信を行えるよう、4G LTEと5Gの電波を発射した。
作業初日、車載型基地局を設置し回線をつなぐ
車載型基地局を設営するのは、会場に隣接した駐車場だ。自家用車で参加する観客が利用し、団体客を乗せたツアーバスの到着場所にもなっている。この日は、車載型基地局を所定の位置に設置し、光回線と接続するまでの作業を行う。
①到着
開幕2日前の朝、まだ会場も設営中というタイミングで、7名のスタッフが車載型基地局2台を伴って現地入りした。現場の指揮を執るのは、KDDIエンジニアリングの小畠直人だ。
車載型基地局は自走することができ、設営場所の自由度は高いが、事前に総務省へ申請した場所に設営しなければならないため、会場に隣接した駐車場の所定の位置に停車する。
②設営場所に固定
屋根に備えたアンテナを伸ばすと高さは最終的に10m以上となるため、車両下部に装備したジャッキで車体を固定する。車内の水平器できちんと車体が水平を保持しているかも確認。
③光ケーブルと接続
車載型基地局は光ケーブルを接続し、交換局とつなぐことでスマホのエリアを構築することができる。
駐車場内を走行する車に踏まれないよう、光ケーブルは駐車場の外周に沿うようにして電柱とつなぐ。駐車場内を通す部分は写真のようなカバーをつけて保守する。最寄りの電柱までは直線距離で数十mだが、駐車場の外周沿いにつなぐため、ケーブルの長さは150m以上になる。
④アンテナ(ポール)を立てる
光ケーブルと車載型基地局をつなぐと、アンテナの立ち上げだ。地上3m以上の屋根の上での作業のため、体を固定する作業用ベルトは必須。屋根に上るときにはハシゴに、車上では専用の金具に必ずベルトをつないで作業を行う。
車両の屋根に上り、折りたたまれていたポールを立てる。ポールに固定されている四角いプレートがアンテナだ。
⑤アンテナの向きと角度を調整する
事前の計画にあわせてアンテナの向きを調整する。アンテナの裏側には角度を示す目盛りが付いていて、それを元に上下左右の向きを整える。今回、この車載型基地局には3基のアンテナを設置する。
⑥回線の開通
いったん屋根から降りて、光ケーブルとのネットワークをつなぎ、無線機を今回の仕様にあわせて設定するデータベースの投入を行う。
⑦アンテナの仮上げ
再び安全装具を身につけ車上の作業。アンテナから伸びるケーブルを絡まないようにしながらポールを伸ばし、実際に使用する高さまでアンテナを仮上げして、アンテナの向きが問題ないかを確認する。
現場到着から約7時間、初日の作業はここまで。アンテナをいったん下げて解散。
電波を発射し、会場をくまなく歩き回って電波測定
前日の作業で、基地局の物理的な設営はほぼ完了。だが、ここからがむしろ本番となる。開幕前日のこの日は、実際に電波を発射し、会場の隅から隅まで歩き回って意図した方向に電波を発射できているかをチェックする。
では、この日も順を追って作業をみてみよう。
①車載型基地局のアンテナを伸ばす
前日、アンテナの“仮上げ”は行ったが、今回は本番。3つのアンテナを設置した2本のポールを1本ずつ14mの高さまで上げる。その際にケーブルが絡まないよう、地上からスタッフが指示を出す。2本のポールが高さ14mに達するまで慎重に作業を行い、20分を要した。
②電波発射
アンテナを伸ばしただけでは、まだ電波は発射されていない。その後に車載型基地局に積み込んだPCでプログラムを立ち上げアンテナから電波を発射するための指示を出す。これで、この車載型基地局から会場に電波が届けられるのだ。
通常は、車載型基地局のセッティングが完了した時点で、現場から「テクニカルセンター(TC)」と呼ばれる施設に連絡し、電波発射を要請する必要がある。
今回は、TCが有する電波発射や調整を行う装置に現場のPCからリモート接続をして、作業を実施した。
③正常性確認と周辺局の調整
そして、無線機から電波が発射されているかどうかをチェックする「正常性確認」を行う。フォルダ型のアイコンが緑色に光っているのが、電波発射が行われている証だ。今回運用する2局の車載型基地局からきちんと電波が発射されていることが確認できる。
さらには「周辺局の調整」。今回の会場付近には2局の既設基地局があり、電波を発射している。そこに車載型基地局からの新たな電波が干渉すると、電波品質が落ちてしまうことがあるため、既設局の電波の調整を行う。
この作業も電波発射と同様にTC側で行っていたが、今回はすべて車載型基地局に搭載したPCで制御できるようになった。
KDDIエンジニアリングの小畠は、「TCに電話連絡で依頼していた作業を現場でできるようになったので、待ち時間が発生せず、現場の進捗に合わせて作業ができるようになりました。それだけでなく、現場の状況に応じてお客さまへきめ細やかに電波を届けることができるようになりました」と語った。
④会場をくまなく歩き回って電波測定
電波対策は、5G車載型基地局を設営して終了というわけではない。事前のシミュレーションどおりに会場に電波が届いているかを測定する。
KDDIエンジニアリングの小畠は会場全域を歩いて電波測定を行った。同行するのは堰合 伶。彼が抱えるバッグには電波を受信する専用機器が収められており、小畠が持つタブレットはその専用機器と連携しており、端末にデータが記録される仕組みだ。その画面上には彼らが歩いた場所と各地点における電波の受信状況がマッピングされていく。
3つのステージすべてとフードコート、物販会場、入場ゲート付近など、会場をくまなく歩く。
こうして取得したデータをPCで分析。事前に設計した各エリアへの電波強度と齟齬がないかを確認する。結果、一部エリアが計画通りの電波強度になっていなかったことがわかり、担当間で連絡を取り合って電波の調整を行った。その後、改めて会場内を歩いて電波測定を行い、想定どおりに電波が届いていることを確認してこの日の作業は終了した。
開幕日!お客さまに快適に使っていただくために
「SWEET LOVE SHOWER 2022」開幕日、朝9時の開場に備えて、スタッフは7時に集合した。前日同様、きちんと電波を発射しているか「正常性確認」を行う。
準備はすでに完了しているが、「大切なのは、実際にお客さまが入られた状態できちんと電波の品質が保持できること」と小畠は言う。
そのために、この日に行う作業は、お客さまと同じ環境でスマホに電波が入るかを測定する「体感品質調査」。
今回はコロナ禍での開催ということもあり、入場時にフェスの公式アプリに登録した本人情報の確認があった。他にも、会場内での待ち合わせの連絡や、フードコートや物販でもキャッシュレス決済など、すでにあちこちでスマホが使用されている。
会場でスマホを使っていた方の声を聞いてみた。
こちらは山梨から来られた3人。
「会場に来たらエリアマップとか検索するし、めちゃめちゃスマホ使います」
「ここまでの道中のほうがつながりにくくて、会場に入った途端しっかり電波があったからびっくりしたよね」
こちらは東京からバスで参戦のみなさん。
「ドリンクを電子決済で買いました」「私、入口のゲート撮ってインスタで上げたよ」「見たいステージが分かれる時間帯があるので、別行動・再集合のときにスマホがしっかり使えると安心ですね」と口々にスマホが使える快適さを語っていただいた。
そして、「SWEET LOVE SHOWER」歴約15年というおふたり。
「ガラケーの頃は入場時のアプリでの確認も電子決済もSNSもなかったし、つながらなくてもそんなに気にならなかったよね」
「うん。スマホは、普段はもちろんフェスには欠かせないので、ちゃんとつながってるかはすごく気になりますが、今もつながってます!」
愛知県から来た同級生コンビ。
「フードコートでスマホ決済しました!写真いっぱい撮ってインスタに上げたいです」
「うん、インスタ!それから公式アプリでタイムテーブルはよく見ます!スマホつながっててうれしいです」
会場で思い切り楽しんでもらえるように
今回の対策を担当したKDDIエンジニアリングの小畠直人と堰合 伶に、イベントへの電波対策に対する思いを聞いた。
「以前からこのフェスには電波対策を行っていましたが、今年初めて5Gの電波を発射することになりました。開催の約4カ月前からプランを練り、5Gの電波の特性を考えて、アンテナを少し上向きに設定するなどの工夫を盛り込んで取り組みました。
また、会場が広いので隅々まできちんと電波をお届けできるよう最大限の注意を払って対策しています。いま実際に、会場でお客さまの声を聞き、スマホを使っていらっしゃる表情を見て少しホッとしています。普段と変わらず使っていただくことで、よりフェスが楽しめるよう、私たちは電波を整備してお届けしたいと思っています」(小畠)
「みなさん、普段の仕事や学校を頑張ったうえで、思い切り楽しむためにフェスに来られていると思います。スマホをきちんとつなげるために電波をお届けすることで、フェスを楽しむお手伝いができればうれしいです。インフラとして、つながって当たり前ということを損なわないように努力していきたいと思います」(堰合)
お客さまの喜ぶ顔や会場の素敵な雰囲気に、小畠と堰合は笑顔を浮かべた。だが、この時点では、イベントはまだはじまったばかり。両名とも、会場がさらに盛り上がり、さらに多くのお客さまが集まる瞬間が訪れても、ずっと快適に通信がつながり続けるよう見守る。
「SWEET LOVE SHOWER」は無事に開催され、KDDIは車載型基地局を使って会場全体に電波を届けた。こうした大規模なイベントにおいて、今後もKDDIはエリア対策を行う。
どんな場所でも電波をつなぎ続けることで、より快適な環境を提供し続けていく。
今回の「SWEET LOVE SHOWER 2022」の電波対策について、作業の様子や車載型基地局の仕組み、会場のお客さまからの声をまとめた動画はこちらから。
文:TIME&SPACE編集部
撮影:正慶真弓
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