2022/04/26

スマートグラス「Nreal Air」「NrealLight」を徹底比較!できることや選び方を解説

2022年3月に、KDDIはスマートグラス「Nreal Air(エンリアル エアー)」を発売した。

これは「Nreal社」と共同開発し、2020年12月に発売した「NrealLight(エンリアルライト)」を小型軽量化し、映像のクオリティを向上させ、価格もリーズナブルに設定した進化版のモデルだ。

スマートグラス「Nreal Air」 スマートグラス「Nreal Air」

スマートフォンと接続して使用する、重量わずか79gのサングラスタイプのデバイスで、MRモード(MR Space)とミラーリングモード(Air Casting)のふたつの機能を持つ。

MRモードは、スマートグラス越しに見た目の前の空間に3Dコンテンツやスマホのアプリを重ね合わせて表示するAR体験が楽しめる。いわば、空間をデスクトップのようにして扱える機能。一方のミラーリングモードは、スマホのディスプレイをそのままグラス内のスクリーンに表示する。目の前に巨大な仮想スクリーンが現れ、動画などが楽しめる機能だ。

本記事では「Nreal Air」と「NrealLight」を比較し、それぞれの強みやどんなジャンルで活躍するかを紹介していこう。

「Nreal Air」と「NrealLight」徹底比較

まずふたつのモデルの機能・スペックを比べてみよう。

機能・スペック表

こちらが実際のモデル。左が「NrealLight」で右が「Nreal Air」だ。

「NrealLight」と「Nreal Air」

「Nreal Air」の特長

まずは「Nreal Air」の特長から見ていこう。

「Nreal Air」は「NrealLight」から約2割の軽量化を実現した。見た感じは「Nreal Air」のほうが大きいが、レンズ部分は薄くなっている。「NrealLight」がすでに“普通のサングラス”感覚の軽さと小ささを実現していたが、「Nreal Air」はより軽く薄くなり、さらに自然に装着できるようになった。

「Nreal Air」と「NrealLight」を装着した様子

また「Nreal Air」では、動画視聴の際の“画面サイズ”が大きくなった。スマホで動画を再生しミラーリングモードで視聴すると、グラス内のスクリーンは現実における3m先の130インチスクリーン相当。

さらに画質も向上。スペック表の「PPD(Pixel Per Degree)」とは、視野角1度当たりのディスプレイの画素の密度。「リフレッシュレート」は毎秒の映像の更新頻度。ともに数値が高い方が、より解像度の高い映像となる。併せてスピーカーの性能も上がった。

Nrealシリーズはバッテリーを搭載しておらず、接続したスマホの電源を使用する。Nreal Air」では連続5時間の使用が可能(4,000mAhのバッテリーを搭載したスマホ使用時)。さらに、ケーブルの素材と仕様も変更されている。

「Nreal Air」と「NrealLight」のケーブル

「NrealLight」のケーブルは表面がビニールコーティングで、グラスのツルと一体化した構造だったが、「Nreal Air」ではナイロン繊維のファブリック製のケーブルを採用。これまで以上に自由な姿勢で、動画が視聴できるようになった。

「Nreal Air」で動画を視聴する 「Nreal Air」でリラックスして動画を視聴

「NrealLight」の特長

続いて、「NrealLight」の強みについて紹介していこう。

「NrealLight」の左右のレンズ上部にはそれぞれ深度カメラが、本体中央にはRGBカメラが搭載されている。

「Nreal Air」と「NrealLight」

RGBカメラは通常の撮影用のカメラで、フレーム左右の2基のカメラはユーザーがいる空間の中のどの場所にいてどちらを向き、どこに移動するかを把握する役割がある。

これらを組み合わせることで「NrealLight」では、スペック表にある「平面検知」「画像認識」「自己位置推定(SLAM)」を実現。つまり、スマートグラスを通して見た景色にぴったり合う状態で3Dコンテンツを表示したり、下の画像のように空間に複数のブラウザを立ち上げて立体的に配置し、操作することができるのだ。

「NrealLight」でのMRモードの模様

「NrealLight」の没入感あふれるMRモードは、ビジネスシーンで広く活用され始めている。KDDIおよびパートナーが行っている実証実験も含め、いくつか紹介しよう。

■日本科学未来館「HYPER LANDSCAPE(ハイパー ランドスケープ)」

2021年3月11日〜3月14日に「日本科学未来館」がKDDIとの行った実証実験で一般のお客さまも体験。バーチャルヒューマン「coh」がガイドとして登場し、実際の背景とズレることなく重ね合わせて表示された展示物の解説をしてくれた。

■豊田スタジアム

2021年3月、名古屋グランパスの開幕戦で「NrealLight」を装着して試合を観戦する試みが行われた。グラス内にはピッチに合わせて各種データが表示され、スタジアム内のさまざまな座席に設置したカメラの映像と切り替えることができる別スクリーンでも試合を楽しむことができた。

■Sony presents DinoScience 恐竜科学博 ~ララミディア大陸の恐竜物語~

恐竜科学博で活用された「NrealLight」

2021年7月〜9月に開催された。特別展示コーナーのトリケラトプスの実物化石とティラノサウルスの標本展示を「NrealLight」をかけて見ると、実物大の恐竜が目の前に出現した。

■世界遺産・二条城「NrealLightと文化財が融合した生きた歴史体感」

世界遺産・二条城「NrealLightと文化財が融合した生きた歴史体感」

Living History in 京都・二条城協議会が主催する、生きた歴史体感プログラムが二条城で開催。実際に大政奉還の意思が表明された国宝・二の丸御殿で「NrealLight」を掛けると代々徳川家の弓馬術礼法師範を務めた小笠原流が演じる徳川慶喜を3Dデジタルデータ化するボリュメトリック技術で目の前に再現。「NrealLight」により我が国の歴史の転換の舞台を本物の場所で堪能できる。
事前申込限定で、大政奉還MR込みの特別体験プランが令和4年8月に開催される。

■佐渡金山「ISLAND MIRRORGE 異世界への洞窟探検」

佐渡金山「ISLAND MIRRORGE 異世界への洞窟探検」

「NrealLight」を装着して実際に佐渡金山の道遊坑を歩くアトラクションで体験可能。金の精霊「アウル―」の後について、本物の金山の湿度や地形を体感しながら、ダークファンタジーの世界を楽しめる。

■メタバガーデン for MRグラス

ガーデニングやエクステリア関連製品の開発・販売などを行う株式会社タカショーが提供するアプリ。庭や家の外装の改修の際、お客さまが「NrealLight」を使って、バーチャルでその場に商品を配置して試すことができる仕組み。

■歩くプラネタリウム

歩くプラネタリウムでの「NrealLight」の活用

天文学に基づいた2492個の星たちの位置データを「NrealLight」で可視化した、世界初の立体的な宇宙儀を実現(※MiRu place調査) 家族や恋人、友人と一緒に歩きながら宇宙旅行を疑似体験できる。VRIA京都の卒業生が開発を担当し、「NrealLight」を使用した集客イベントとして開催を依頼することもできる。

歩くプラネタリウム

■全但バス「グリーンルーム」

全但バスでの「NrealLight」の活用

2021年12月28日〜2022年2月28日まで行われた、全但バスと兵庫県豊岡市の芸術文化観光専門職大学、KDDIによる実証事業。バス内に個室を設けて「NrealLight」をレンタル。観光モデルコース動画や、YouTube、Netflixなど多様なコンテンツを楽しむことができた。

■少し未来の水族館ツアー「AR City ソラ水族館」

ソラ水族館での「NrealLight」の活用

実験都市を目指す都市型フェスティバル「078Kobe」にて、神戸の商店街のアーケード内を丸ごとAR水族館にするイベントを実施した。この実証実験では、NrealLightを装着し全長約200mを歩きながら鑑賞する次世代型水族館ツアーを通じて、未来の観光や都市景観を体験。
現在は、専用のスマートフォンに接続されたMRグラス一式をレンタルし、誰でも簡単にARの水族館ツアーを体験できる。

スマートグラスとともに生み出すワクワク体験

KDDIはなぜスマートグラスに力を入れ、またこの先、通信の進化とともにどのような未来像を描いているのだろうか。

KDDIでスマートグラスを担当する王 健、白石里咲、山本尚弘に聞いた。

KDDIの王 健、白石里咲、山本尚弘 KDDI 5G・xRサービス企画開発部 王 健(左)、白石里咲(中)、山本尚弘(右)

2020年12月に発売された「NrealLight」に、KDDIは開発から携わり、日本の通信会社のなかで唯一販売を行った。まだまだ一般的ではないスマートグラスになぜこだわったのだろうか。

「スマートグラスは自分が見ている空間すべてに対して3Dデジタルデータを置けるところが魅力だと思いました。スマホでもARは体験できますが、空間をディスプレイで四角く切り取ったなかで視聴することになります。先に紹介した『恐竜』や『二条城』のように、まさに現場の雰囲気を味わいながら映像が視界いっぱいに広がる体験が今後一般的になっていくと考えたんです」(白石)

KDDIの白石里咲 KDDIの白石里咲

「NrealLight」発売後にKDDIがユーザーに対して用途をリサーチしたところ、9割以上の回答が「ミラーリングでの大画面動画視聴」だった。「Nreal Air」はそのニーズに応え手登場した。大画面での映像視聴というわかりやすい特長を前面に押し出し、多くの人々にスマートグラスへの親しみを持ってもらいたいのだという。

では、MRモードはどのように楽しむのがよいだろう。

「MRを楽しむには、アーティストがさまざまな作品を公開している『STYLY for Nreal』というプラットフォームや、スマートグラスをかけてリラックスできる瞑想アプリの『TRIPP on Nreal』が個人的におすすめです。今後もやはりイベントベースで体験いただく機会が多いでしょうね。でも、それでよりMRの面白さが体感いただけると考えています」(王)

そして、XRを活用したエンターテインメントや課題解決の分野にKDDIは積極的に協力していくという。

「活用を考えている自治体や企業のみなさんと協力していく準備はできています。ちらほらお声がけもいただいていて、今後みなさんにスマートグラスでのMR体験をしていただく機会は増えるのではないかと思います。

またエンターテインメントだけでなく、聴覚に障がいを持つ方々にスマートグラスで視覚情報を補足するものも考えています」(山本)

KDDIの山本尚弘 KDDIの山本尚弘

では通信の進化に伴い、スマートグラスはどうなっていくのだろうか。

「5年前、10年前にスマホが今みたいに普及していると想像もしていなかったように、5年後、10年後にはスマートグラスは当たり前のものになっていると考えています。みんなが普段から掛けていて、たとえば実際にショッピングに行ったとき、いいなと思った商品を一定秒数以上見つめていると、ネットショップでそれが自動的にカートに入っていて、あとでまとめて買うかどうか検討できるなんて面白いですよね。また、スマホみたいにいろいろなメーカーさんから発売されて、もっと自由に選べるようになると楽しいですよね」(白石)

「そもそもスマートグラスにSIMカードがささるようになれば面白いですね。今、通信や処理はスマホ頼りですが、クラウド側で映像の処理まで行って、データも全部クラウドのストレージに置けるようになれば、スマートグラスだけ装着することでスマホがなくても今のスマホがやれることを全部できるようになるんじゃないかと、かなり本気で考えています」(山本)

KDDIの王 健 KDDIの王 健

「それが実現すれば、コミュニケーションのあり方が大きく変わるでしょうね。音声や映像の通信ではなく、スマートグラスをかけていれば、離れて暮らす家族や友人が自分のすぐそばに現れて話ができたり、一緒に映画を観られたりする。いまよりもずっと豊かで温かみのあるコミュニケーションができるようになると思います」(王)

KDDIは先端テクノロジーで未来をずっと面白く

まだまだ一般的ではないスマートグラスだが、その未来にはワクワクが満ちている。今後もますますスマートグラスは面白いことになりそうだ。新たな実証実験やサービスの提供などがはじまれば、またここでお伝えしよう。

通信とテクノロジーを用いて、今後もKDDIはより楽しくワクワクした未来へとつないでいく。

「Nreal Streaming Box(エンリアル ストリーミング ボックス)」登場

「Nreal Air」と「Nreal Streaming Box」

これまで「Nreal」のスマートグラスと接続できるのは一部の5Gスマホだけで、しかもAndroidのみだった。だが、「NrealLight」「Nreal Air」をこのストリーミングボックスと接続し、ペアリングすれば、iPhoneはもちろんWi-Fi機能と画面キャスティング機能を有したタブレット、ノートPCでも使えるようになった。
※NetflixやAmazon Prime Videoの映画など、DRMで保護されたコンテンツには対応しておりません。
※Nebulaアプリ、およびMRモードには対応しておりません。ミラーリングモードのみとなります。

「バンクシー展 天才か反逆者か」にビジュアルガイドが登場

「auビジュアルガイド」のイメージ

世界でもっとも注目されているアーティストのひとり、バンクシーの巡回展が、モスクワ、マドリード、香港、ニューヨーク、LA、日本各都市を経て札幌で開催中。初めて展示される70点以上の作品が登場。KDDIは今回、「NrealLight」を用いて、この展覧会で 「auビジュアルガイド」を提供。スマートグラスをかけて作品を鑑賞すれば、ガイドによる解説をMRで体験できる。

文:TIME&SPACE編集部
撮影:瀬谷壮士

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