2022/02/17
11万人のイベントにau 5Gを!「コミックマーケット99」の電波対策に密着
「コミックマーケット(コミケ)」は、マンガ・アニメ・ゲームなど多岐にわたるジャンルの同人誌を販売する世界最大級のイベントだ。2021年12月30・31日に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット99」では、2日間でのべ2万100のサークルと91の企業が出展し、合計11万人の参加者が集った。
多数の来場が想定されるイベント時に、KDDIでは、臨時の基地局を設営してスマホがつながりやすいよう対策している。今回のコミケでも5G車載型基地局や可搬型基地局で対策を行った。
設営から当日まで、電波をお届けした舞台裏に密着した。
コミケのような巨大イベントに電波を届けるには
まずスマホがつながるためには基地局が欠かせない。基地局は、電波を送受信するアンテナと無線機をともなった設備のことで、通常は計画から完工まで年単位の時間を要する。一方、臨時基地局は、大掛かりな工事が不要であることと、イベントのような一時的な通信需要にも柔軟に対応できるのだ。
「コミケ99」に際してKDDIは、車載型基地局と可搬型基地局という臨時基地局で対策を行った。車載型基地局は、アンテナや無線機など通信に必要な設備を搭載した車両だ。今回設営したのは5Gに対応した最新の車載型基地局だが、実際のイベントに運用されるのは、コミケ99が初となる。可搬型基地局とは文字通り「運搬することが可能」な基地局。基地局を構成するパーツを使用したい場所に運び、組み立てて運用する。災害時などにも活躍する。
東京ビッグサイトは、すでに館内全域は、au 5Gエリア対策が完了しており、問題なく5Gが使うことができる。今回、KDDIが臨時基地局で対策を行ったのは「屋外」だ。
早朝から会場に集まる参加者が待機するスポットでスマホを使えるようにするのが目的だ。下の図のように、2台の5G車載型基地局を「東新展示棟」の東側にある駐車場に、4G LTEに対応した3基の可搬型基地局を「西展示棟」の屋上に設営した。
こちらが開催前日の西展示棟屋上の様子。
クルマの停まっているあたりが待機列になるため、写真右の可搬型基地局から電波を届ける。
コミケ99での5G車載型基地局デビューに密着
5G車載型基地局が東京ビッグサイトに到着したのは、コミケ本番2日前の12月28日。到着から29日に行われた設営の模様を紹介していこう。
①到着
車載型基地局は1台の車両に基地局設備を搭載している。
②設営場所に駐車
車両なので自由に移動できるが、電波を発射するには事前に総務省へ基地局の申請が必要だ。設営は申請している場所で行う。
所定の位置に駐車したら、安全面への配慮のため、カラーコーンとコーンバーで囲う。前輪には車止めを噛ませ、車体下部に装備したジャッキを有線のコントローラで操作。車体上部のアンテナが高く伸びるため、しっかり車体を固定する必要がある。
③光ケーブルを引き込む
車載型基地局は現地に車両を設置するだけではなく、光ケーブルを接続し交換局とつながなければエリアを構築することはできない。設営場所近くの光ケーブルを延長することになるのだが、それも間近とは限らない。今回は、数十メートル離れた電柱から光ケーブルを敷設。赤丸印の電柱からフェンス伝いにケーブルを延長する作業を行った。
白い金属製の筐体の中には光回線の分配器が入っている。オレンジ色のケーブルが車載型基地局に接続するためのものだ。
車内には基地局の電波を送受信するための無線機がびっしり並ぶ。車内の機器と先ほどのケーブルを接続しネットワークの設定を行う。ここまでで車載型基地局は交換局につながる光回線との接続ができたことになる。
④アンテナを立てる
光回線との接続が終われば、アンテナの立ち上げだ。車載型基地局の車上は地上3m以上あるため、安全策がなにより大事。まず最初に行うのは、命綱を留めるためのポールの立ち上げ。作業用ベルトとカラビナでつないで作業を行う。平行してケーブルの養生。準備中のコミケスタッフの台車をスムーズに通せるようカバーをかける。
新たな作業員が加わり、アンテナを建てる工程を進める。作業内容を綿密に確認してから、次々とハシゴを上り、車上に折りたたまれていたアンテナを起こしはじめる。
⑤アンテナの向きと角度を調整する
手元のスマホに表示したコンパスを見ながら、アンテナの方向を調整。アンテナの裏側には角度を示すメモリが付いていて、それにあわせて角度も整える。電波を発射するには、設営場所だけでなく横方向と上下の向きも事前の申請どおりにする細かく調整する必要があるのだ。
⑥アンテナを伸ばす
そしていよいよアンテナのポールを伸ばす。コントローラで伸長させることができる。
アンテナの直下の金具3カ所には、強風など万が一の際にアンテナを支えるためのロープがそれぞれ結ばれている。
アンテナを最大限伸ばすと、地上14mの高さまで到達。この高さだからこそ、車両がバランスを崩さないよう最初に車止めとジャッキでしっかり固定する必要があるのだ。
⑦電波発射
これで現場の準備は完了。そしてスタッフは電話で電波発射を要請した。電波を発射するのは、東京ビッグサイトから直線距離にして約72km離れた栃木県のKDDI小山テクニカルセンターだ。コミケで安定して電波を届けるために特別体制を整え、監視も行う。
電波発射が完了すると、手元のスマホに5Gのピクトが立った。5Gが開通した合図だ。
だが、これで終了ではない。電波を発射するエリア全域できちんとスマホがつながるのかをチェックする必要があるのだ。
発射した電波が問題なく使えるかを調査
5G車載型基地局の設営はひとまず完了した。車両の奥に見えている東新展示棟に入場するための待機列がこの場所にできる。
もう1台の5G車載型基地局は、東新展示棟の前に設営された。そこに電波調査のチームが集まっていた。3人で合計8台のスマホを手に作業を開始。
彼らは、設営した5G車載型基地局が発射する電波がきちんと使えるのかどうかを、実際に現場で確認する。
5G車載型基地局には4つのアンテナが搭載されており、KDDIのスマホ用の全周波数帯をカバーしている。縦長の四角い箱は5G専用のアンテナ。高速大容量通信ができる「ミリ波」に対応している。ひし形の3基は4G「LTE・WiMAX2+」と5G「Sub6」の双方に対応。5G「Sub6」の電波は、5G「ミリ波」よりも広範囲に届きやすい特性を持つ。
電波調査チームは、それぞれ異なるアンテナの向きに正対しながら、電波がきちんと発射されているのかを独自のアプリで確認するのだ。
この業務を担当するKDDIエンジニアリングの堰合 伶に、初の5G車載型基地局運用について語ってもらった。
「5G車載型基地局を実際のイベントで運用し、5Gの電波を発射するのは初めてですので、調査する立場としても身が引き締まる思いです。私自身も、大きなイベントでの電波調査は初めてで、間違いのないよう少し緊張しています。
電波発射まではきちんと行われていますが、コミケ本番でお客さまがスマホを使う状況を想定しながら同じように使ってみて、調整を繰り返したうえで通信をご提供したいと考えています。
どんな環境でも徹底して調査を行うのですが、とくにコミケの場合は、開場までの待機列で情報を収集したり知り合いと集合場所を確認したりスマホを使われます。入場後も、広い会場でお客さまが何チームかに別れてスマホで連絡を取りながら、誰がなにを買うかというような戦略を立てながら楽しまれる方が多いそうです。
そのため、そうしたニーズにきちんとお答えできるよう、きちんと調査して電波をお届けしたいと思っています」
コミケ開幕! 無事に電波を届けることができた
コミケ99の初日となる12月30日、10時の開場に向けて朝7時には大勢の参加者が待機列に並び、スマホ片手に時間を過ごす光景が見られた。
当日のお客さまからのツイートをいくつか紹介しよう。
「C99にNR出せる基地局車持っていったの、KDDIだけか」
「この時間のコミケ会場でえらい速度出るpovo 5G」
「コミケ会場、auマジで途切れない…」
今回の電波対策は、きちんと役割を果たすことができたようだ。そのために約4か月前から準備を行っていたKDDIエンジニアリングの山川裕隆に話を聞いた。
「何年も前からKDDIはコミケでの臨時基地局の対策を行ってきました。昨年夏にも電波をお届けする計画があったのですが、コロナ禍でコミケの開催自体が中止になりました。あらためて昨年9月ごろから今回のコミケ99に向けて主催者様と議論を重ねてきました。開催期間や入場者数により、電波対策の方法や内容が変わるからです」
2019年冬のコミケでは4日間の開催で75万人を動員した。今回はチケットを事前販売し、入場者数を1日5万5,000人に制限。朝7時オープンとなった待機列には整然と参加者が並んだ。
「待機列では最大3時間待つことになり、参加者同士でSNSなどを介して容量の大きいデータを共有されたりするケースも考え、今回は5G車載型基地局の運用となりました。また、万が一現地で不具合が起きないよう、前日の現場の電波調査だけではなく、当日イベントが始まってからも欠かさずチェックするようにしました。
新しく始まった5Gの品質と、いつでもどこでもauがきちんとつながることを実感していただけると本当にうれしいですね」
イベントでも「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」
2年ぶりのコミケは無事に開催され、KDDIは車載型基地局と可搬型基地局から電波を発信し続けた。コロナ禍での大規模イベントの開催はまだ不透明だが、多くの人々が集う場所にこれからも出動しエリア対策を行う。auが常に快適にお使いいただけるよう、今後もどんな場所でも「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」の取り組みは続いていく。
文:TIME&SPACE編集部
撮影:瀬谷壮士
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