2021/07/27
世界初『水空合体ドローン』も登場!通信を活用したKDDIのスマートドローンの可能性
さまざまな分野で実用化が進み、今後もさらなる応用が期待されるドローン。2016年より通信ネットワークを活用した「スマートドローン」の開発を進めてきたKDDIは、2021年6月10日、新たに「水空合体ドローン」を発表。
同月14日から16日に幕張メッセで開催された国内最大のドローン展示会「ジャパンドローン 2021」にて初お披露目された。
子機が分離し、水中を潜航
KDDIが開発した水空合体ドローンとは、空を飛ぶ「空中ドローン」に、水中を潜航する「水中ドローン」を搭載した合体型のドローン。空中ドローンや水中ドローン自体はこれまでも存在したが、両者を合体させたのは世界初※となる。
※KDDI総合研究所調べ(2021年6月10日現在)
ドローンといえば一般的に空を飛ぶイメージだが、水中用のドローンも実用化が進められており、ダムの点検や養殖における魚の生育確認などに活用されている。これまでダイバーが潜らなければできなかったことを、ドローンが代わりに担っているのだ。
オレンジ色の大型の機体が親機(KDDIの4G LTEネットワークに対応した空中ドローン)で、その手前にある黄色の小型の機体が子機(水中ドローン)。両者は有線でつながっており、目的地付近まで飛行した親機が着水後、子機を分離し、水中を潜航。
子機が撮影した映像は、親機の4G LTEネットワークを経由してリアルタイムで伝送され、遠隔で確認することができる。
潜航した水中ドローンは任務が完了したら浮上し、親機の空中ドローンに回収され、再び飛行して帰還するという流れだ。空中ドローンのフライト指示はタブレットから行うことができる(水中ドローンの操縦はプロポで行う)。
なお、水中では電波が届かないため、水中ドローンの位置測定が難しいが、この水空合体ドローンではKDDI総合研究所が独自に開発した音響計測技術が活用されている。水中の子機から音を出し、それを水面の親機が受け取り、それらの相対位置を読み取ることで正確な位置の測定を可能にしているという。
水中の点検作業を効率化
「KDDIは、強みである通信ネットワークを生かして、さまざまな分野で人の役に立つドローンの開発を進めてきました。今回の水空合体ドローンもそのひとつで、水産業や水域インフラの点検分野における課題解決を目指したものです」
KDDIでスマートドローンプロジェクトに携わる松木友明は、水空合体ドローンを開発した狙いを語る。
「水中ドローンは、ダムの点検や養殖場における魚の生育状況の確認などに活用されています。ただ、従来の水中ドローンは飛行することができないので、点検や確認の場所まで船を出すための人手も必要になります。船舶従事者の高齢化や人手不足が進むなか、船や人を用意するのは簡単なことではありません。私たちが開発した水空合体ドローンなら、船や人を出すことなく、遠隔で水中の点検や確認が可能になります。
また、近年は再生可能なエネルギーとして洋上風力発電が注目されていますが、水中部分の構造物の管理・点検の難しさが課題になっています。水空合体ドローンがあれば船や人が沖合に出る必要がなく、作業を大幅に効率化できます」
多彩なドローンを展示
「ジャパンドローン 2021」のKDDIの展示ブースでは、水空合体ドローンのほか、さまざまな用途に対応したドローンの機体を展示するとともに、「物流」「点検」「監視」「測量」「農業」の各分野における取り組みやスマートドローンの導入事例を紹介した。
30kgまで搭載可能な物流用ドローン「PD6B-Type3C」。2020年8月にスタートした長野県伊那市のドローン配送サービスでも使われている。
安全性や操作性を追求して設計・開発された産業用ドローン「ACSL-PF2」。物流、宅配、災害対応などさまざまな用途に対応する。
55分という長時間飛行が可能な産業用ドローン「Matrice 300」。優れた空撮機能を備え、風力発電設備の点検などで使用することができる。
KDDIのドローン風力点検サービスは、電源開発に採用され、2021年度に67基の風力発電設備の点検を受託した。
機動力の高い小型のドローン「G6.0」と、自動離発着や充電に対応したドローンポート「Nest」。災害時の遠隔監視や、点検・測量の定期巡回が可能。
KDDIのドローンへの取り組み
KDDIはこれまで、自治体や企業と連携しながら、スマートドローンの実用化に向けて研究開発や実証実験を進めてきた。
静岡県御殿場市は、消防署の山岳救助隊にスマートドローンを導入。富士山で遭難した登山者を捜索・救助する訓練で活用している。
警備会社のセコムは、ドローンによる監視サービスの実用化を目指し、KDDIと共同でスマートドローンによる巡回警備の実証実験を重ねている。
また、KDDIは、ドローンの安全な運航を実現するため、複数のドローンの運航情報の統合管理を可能にする「ドローン管制システム」を開発。2021年3月、JALやセコムなど複数の企業と共同で、全国3カ所で全9機のドローンを同時に飛行させる実証実験を行った。
ドローンが人の役に立つ社会へ
さまざまな分野で活用が進むドローンだが、通信事業者であるKDDIはどのような思いでドローン事業に取り組んでいるのか。KDDIの松木は次のように語る。
「危険な点検作業を人の代わりに担ったり、買い物に行けない高齢者に荷物を届けたり。みなさんが抱えている課題や困りごとを、ドローンで解決したい。そんな思いで私たちはスマートドローンプロジェクトに取り組んでいます。6年前にこのプロジェクトをスタートして以来、技術面はもちろんのこと、ドローンを取り巻く法整備も進み、さらなる実用化に向けて前進を続けてきました。
現時点では都市部など有人地帯での目視外飛行は認められていませんが、今後可能になれば、ドローンの利用シーンは飛躍的に広がります。私たちKDDIは、強みである通信ネットワークを生かしながら、そしてさまざまな企業や団体と連携して研究開発や実証実験を重ねながら、ドローンが人の役に立つ社会を実現していきたいと考えています」
テクノロジーの文脈で語られがちなドローンだが、その背景には「人の役に立ちたい」「みんなが抱える課題を解決したい」という思いがある。KDDIはこれからも、通信のチカラを活用し、スマートドローンを通じてより良い社会の実現を目指していく。
文:TIME&SPACE編集部
※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。