2021/03/02
スマホ依存率が増加中…現役高校生にスマホとのつき合い方を直撃インタビュー
新しい生活様式がはじまり、家で過ごす時間が増えるなかで、子どもたちのネット依存が増加しているという。兵庫県立大学環境人間学部准教授で、スマホ時代の子どもたちへの支援方策を探るソーシャルメディア研究会の竹内和雄先生が大阪府で行った調査※によると、2019年と2020年のネット依存率を比較すると、小学生は10.2%から13.7%へ、中学生は15.3%から18.9%へ、高校生は19.3%から28.5%と増加しているという結果が出た。
特に高校生のネット依存が3割近くまで増加しているが、いまの高校生たちはどのようにスマホやネットとつき合っているのだろうか?今回KDDIは、講師に竹内和雄先生を招き、高校生たちのスマホ利用のリアルな声を聞くワークショップを開催した。
KDDIでは小学校や中学校、高校、特別支援学校などで「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を行っている。講座では、子どもたちが自らの判断でスマホやネットに潜むトラブルを回避する能力を身に付け、スマホを安全に使うためのルールやマナー、実際のトラブル例や対策を紹介。講座は学校に講師が出向く出前講座のほか、YouTube教材の提供やライブ配信でのオンライン講座にも取り組んでいる。2020年には31の学校でオンライン講座を開催した。そして、講座で使用する教材やYouTubeの監修を竹内和雄先生が行い、その内容は子どもたちの意見を参考にしながらまとめている。
高校生にとってスマホは「先生」!?
今回のKDDIワークショップ「スマホ使用について高校生と考えた」は、竹内和雄先生と京都府立清明高等学校のしのはらさん、ふじたさん、なわてさん、KDDI サステナビリティ推進室が参加し、オンラインによって行われた。現役高校生のリアルな声を参考に、スマホやSNSの有用な利用方法を考えて、今後の講座や教材に活用するのが目的だ。
最初のテーマは「スマホの良い使い方」。スマホがあって良かったと思う点を3人が話してくれた。
ふじたさん「スマホやiPadを使ってよい学校なので、授業中に漢字がわからないときは、先生に聞く前に先にスマホで調べます。ほかにも、家が料理屋をやっているので、デザインアプリでお店の料理のメニューをつくっています。外国の方が来たときに料理名だけだとわからないので、どんな料理かわかるようにスマホで撮影して載せています。
しのはらさん「私は高校生になってからスマホを持ったのですが、それまでは気になったことがあっても調べるのが面倒で放置していました。でも、スマホを持ってからすぐ調べる習慣がつきました。また、ダンス部に所属しているので、振り付けの動画を撮影して部員に共有しています。練習のためには鏡に映した状態のダンスを見たいので、アプリで動画を反転させてみんなで見ています。」
なわてさん「黒板やノートを撮影して、ノートとタブレットだけで勉強できるようにしています。問題を解く前のプリントの写真を撮っておけば、何度でも繰り返して記入できます。それと、家に教科書を持って帰らなくても勉強ができるので、荷物が少なくて済むのはうれしいです。あとは、軽音部なのでYouTubeで曲を調べてみんなで共有しています。」
竹内先生「学生のダンスや音楽のレベルは、この10年で上がったと言われています。その理由は講師となる存在がスマホやタブレットにいて、ダンスや音楽を学ぶのが早くなったから。つまり、『スマホは先生』の部分もあるということですね。娯楽や連絡だけでなく、なにかを教えてもらう、調べものをするといった際に『先生』としての役割を果たしていると思います。」
現役高校生の好きな動画やゲームはさまざま
続いては「インターネットの使用状況」について。竹内和雄先生のデータによると、「ネットで一番すること」は、小学生は男子も女子も動画で、年齢が上がるにつれて男子はゲーム、女子はSNSの比率が増えていく。では、現役高校生の3人はどんなコンテンツを楽しんでいるのか?
ふじたさん「アニメや洋画をNetflixでよく観ていますが、スマホよりもテレビで観ることが多いです。ゲームは『エーペックスレジェンズ』とか。『荒野行動』に似たゲームですが、画質が凄くよくなっているんです。」
しのはらさん「私はダンス動画。踊ってる曲でカッコいいと思ったらその曲を聴いています。いまハマっているゲームは、『刀剣乱舞』と『ツイステッドワンダーランド』。どちらもイケメンのキャラを育成しています(笑)」
なわてさん「物理の授業がわからなかったときに、よくYouTubeで調べて授業を復習しています。スマホではあまりゲームをせず、スイッチ(Nintendo Switch)で普通にマリオとかやっています。」
竹内先生「みなさんが観ている動画もやっているゲームもさまざまですね。僕らの時代はみんなテレビで『8時だョ!全員集合』を観て、中学なら『ザ・ベストテン』を観ていました。翌日の話題もそればっかり(笑)。いまはそれぞれが別々の話題をもっているから、アイドル好きな子にゲームの話をしてもわからないように、同じクラスでも話題が合わないことがあるでしょうね。」
LINEは「業務連絡用」、一対一は「通話」が多い!?
高校生がよく使用するSNSについて3人に聞くと、InstagramやTwitter、LINEなどで、特に男女で差はないそう。とはいえ、近年はLINEの使い方に変化が出ているという。竹内和雄先生いわく「2〜3年前の中高生はずっと友だちとLINEでやり取りしているという声が多かったが、最近ではそうでもないという声を耳にします」とのこと。実際はどうだろう?
ふじたさん「僕はあまりLINEをしないです。LINEは『今日は何時からオンラインゲームをやろう』とか『どこどこで待ち合わせ』とか、時間や場所を決めるときに使うことが多いです。」
しのはらさん「私は父親に『これ買ってほしい』って、よくスクショをLINEで送っています(笑)。友だちとはあまりLINEでやり取りはしないかな。『チケットを予約して立て替えたから5,000円』とかはLINEの文字で送って残しておきます。」
なわてさん「私は普通にLINEを使っていますが、30分間隔でやり取りするくらいで、ずっとやっていることはありません。」
LINEは約束ごとを決めるなど、証拠を残したいときの“業務連絡”として使うことが多いようだ。
ふじたさん「文字だと感情が伝わりにくいし、誤解されることもあるので、一対一のときはLINE通話を使うことが多いです。」
しのはらさん「私も電話のほうが早いのでLINE通話です。それに文字だと感情が伝わりにくく、『怒っているのかな?』と思ったりすることもあるので、電話でやり取りすることが多いです。」
意外にも高校生は会話を重視して「LINE通話」を活用することも多いよう。
竹内先生「昔は通話料金が高かったから、要件はメールでというケースが多かった。そこからSNSが主流になって文字でのやり取りが増えましたが、さらに時代が変わって使い放題のプランやWi-Fi環境によって、料金を気にせず通話ができるようになったからLINE通話が増えているのかもしれません。」
コロナ禍で友だちに会えないからネットでのやりとりが主流に!?
次のテーマは「コロナ禍のスマホとの付き合い方」。竹内和雄先生の調べによると、京都では2020年に高校生のネット依存が、16%から21.5%まで増えたという。
これに対しては、「新型コロナの流行でずっと家にいてすることがなくて、友だちとつながるのがSNSしかなかったので、ずっとネットしていました」と、しのはらさん。外で友だちに会えないぶん、ネットを介してのコミュニケーションが増えたというのが3人共通の意見だ。
では、ネットをやり過ぎないためのルールづくりや、自分のなかの決めごとはあるのだろうか?
しのはらさん「私はこのゲームをここまでやったら終わり、あとは勉強するって感じで、自分でルールを決めています。……たまに破りますけど(笑)。それと、友だちが小学生のときに高校生とLINEを交換して家に来られそうになったので、絶対に個人情報はSNSに載せないようにしています。」
ふじたさん「僕はスマホが日常になっているので、落ち着いて考えて行動するようにしています。勉強をしないとダメなら、勉強をする時間をつくらないといけない。そのためにはどうすべきかを考えて、スマホの時間を削れるなら削ろうと考えます。」
なわてさん「私は時間が余ってもスマホでやることがないので、あまりハマっていません。自分のなかのルールとしては、いまは本をスマホで読む人が多いけど、私は絶対に紙で読みたい派です。紙のほうが読みやすい!」
ワークショップの最後では、KDDIが「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を続けていくうえで、高校生から見て「こうしてはどうだろうか?」という提言をもらった。
ふじたさん「僕たちはスマホを使うのが当たり前になっています。スマホは日常的なもので絶対に使うので、スマホに対して『良い・悪い』『使う・使わない』ではなく、はじめから使う前提として話をしてもらえるとうれしいです。」
こうしてKDDIワークショップ「スマホ使用について高校生と考えた」は無事に終了した。
“島宇宙化”が進み、興味のあることだけスマホを使いこなす
現役高校生にネットやスマホ利用の実態について聞いた今回のワークショップ。竹内和雄先生は今の高校生のスマホ事情をどのように捉えたのだろう?
「子どもたちは、より“島宇宙化(同じ価値観を持ったものだけで場をつくること)”していると感じました。私の時代のようにみんなで同じテレビを観るのではなく、個人それぞれがいろんな島宇宙をもっています。興味のある島宇宙を知るにはリアルだけでは解決しないので、ネットのなかにも探していく。リアルもネットも含めた島宇宙のなかに子どもたちはいるんだと感じました。
一方で、子どもたちが見ている島宇宙は、彼・彼女らが興味があるところのみで限定されています。自分の関心があるところしか見えていないため、意外と知らないことが多いんです。我々は子どもたちがネットを使いこなしていると思いがちですが、彼・彼女らが知っているのは自分が知りたい世界だけで、それ以外は知らない。ネットを使いこなせているわけではありません。その部分を子どもたちに伝える必要があると思います」
もうひとつのポイントは、新型コロナの発生以降の子どもたちの心境の変化だという。
「子どもたちは自分たちのいまのネットを取り巻く状況を肯定はしていません。これは新型コロナが発生して大きく変わった点です。以前は『自分たちは自分たちでやるからほっておいて』という声が多かったのですが、新型コロナが発生した後は『自分たちはネットをやり過ぎだ』という声が多く出るようになりました。
子どもたちはネットを上手に使おうとしている一方で、このままではダメだと思っています。彼・彼女らがダメだと思っているいま、現実に起こっているネットの事件や危険性などを伝える必要があります。そのためには家族も学校も我々も、リアリティのある話を伝えなければいけません。だからこそ、今回のワークショップは有意義なものだったと思います」
スマホを使う前提で良い使い方も伝えていきたい
最後に「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を運営する、KDDI サステナビリティ推進室の海崎千恵子、日野有子、澤谷賢太に、ワークショップの感想や今後の活動へどう生かしていくのかを聞いた。
「これまで保護者の目線で子どもと一緒にルールをつくろうという教材はありましたが、子どもの目線でつくったものはなかったと気づかされました。例えば、子どもが自発的にルールを決めて、うまくやっている教材があってもよいかなと。これからも子どもたちがジブンゴト化できるようなリアリティのある教材をつくっていきたいです」(海崎)
「高校生がLINEで誤解が生まれないように、文字と通話のやりとりを使い分けていたことにすごく驚きました。若い人は文字コミュニケーションが中心だと思っていましたが、自分たちの知らない使い方をしていて、ルールをつくろうとしていることがうれしかったです。こういった現役高校生のリアルな声を聞く機会がないので、貴重な話が聞けて非常に感謝しています」(日野)
「今までの教材は、スマホやネットでこんな怖いケースがあるから巻き込まれないように注意しようね、という流れでした。でも、ふじたさんが言ったように、良い・悪いではなくて、あるのが当たり前の前提で、フラットに考えるようにシフトチェンジしていく必要があると感じました。生活を豊かにするスマホの使い方も紹介していくのもいいかなと。今後の教材作りに彼らの意見を反映させていきたいですね」(澤谷)
高校生のリアルな声や専門家のアドバイスなど、今回のワークショップで得た知見は、今後の「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」の講座や教材に反映される。これからもKDDIは通信事業者として、安心安全なスマホとのつき合い方を提案し、安心で豊かなデジタル社会の実現にむけ発信していく。
文:TIME&SPACE編集部
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