2020/10/06
子どものSNSいじめや依存…小・中学生がスマホと安全に向き合うルールと対策
新しい生活様式がはじまり、自宅で過ごす時間が増えるなか、子どもがスマホを使う時間が増えていませんか?長時間使用による依存、ネット上での知らない人との出会いなど、さまざまな状況に直面する可能性があります。
KDDIでは小学校や中学校、高校、特別支援学校などで「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を行っています。講座では、子どもたちが自らの判断でスマホのリスクを回避する能力を身に付け、スマホを安全に使うためのルールやマナー、実際のトラブル例や対策を紹介。講座は学校に講師が伺う出前講座のほか、YouTube教材の提供やライブ配信でのオンライン講座にも取り組んでいます。
ここでは、講座で紹介された実話をもとにしたストーリーを紹介。小・中学生がスマホの使いはじめに多い3つのトラブルと、スマホと安全に付き合う方法をご紹介します。
いつまでもやめられないスマホへの「依存」
まずはスマホへの「依存」について。中学校の入学祝いにスマホをプレゼントされたしゅん君。両親からは「ゲームは1日1時間、勝手に課金はダメ」とルールを決められていました。
ところが、それからのしゅん君は自分の部屋でゲームにのめり込むようになり、サッカークラブも休みがちに。ゲームのアイテムをゲットしようと、少しだけならバレないだろうと両親に内緒で課金します。最初は1回だけのつもりでしたが、ゲームに勝つために「もう1回だけ……」と、何度も課金してしまいます。
毎晩、遅くまでゲームをするようになったしゅん君は、寝不足でサッカークラブではミスが増え、テストの点数も下がってしまいます。
それでもしゅん君はスマホゲームにのめり込み、課金を続けます。
そんなある日、しゅん君の自宅には課金によって20万円もの高額の請求書が……。ルールを守らなかったしゅん君は、これが原因で大好きだったサッカークラブも退会することになってしまいました。
<しゅん君のどこに問題があったのでしょうか?>
「ゲームは1日1時間、課金は禁止」というルールがあったにもかかわらず、しゅん君はルールをやぶって両親に無断で課金をしてしまいました。それも1回のつもりが何度も……。
現金を使うときは、財布からお金を出してその場で払います。使った分だけお金が減るので、いくら残っているかが一目でわかります。しかし、ネット課金はパスワードを入力して使い、あとから電話料金などと一緒に保護者が支払うため、実際に財布からお金が減るのが見えません。ネット課金はお金を使った感覚が少なく、つい使い過ぎてしまう傾向があるのです。
ゲームに限らず、スマホには漫画や動画、SNSなど楽しいコンテンツがたくさんあります。つい楽しくて長時間使用してしまい、その結果ネットに依存してしまうことがあるのです。
<解決のポイント>
そうならないために必要なことは、使い方の具体的なルールづくり。保護者が一方的に決めるのではなく、子どもの意見を聞き、保護者側の思いを伝え一緒に考え、お互いに納得できるルールにすることが大切です。たとえば、時間については「宿題を終えてからゲームをする」「1日の利用時間を決める」、場所は「リビングで利用する」「自分の部屋に持ち込まない」、お金なら「ネット課金はしない」などと、なるべく具体的に。ルールを守れるようになったら、「約束の1時間を守れたね。お休みの日は、2時間までにしてみようか」など、柔軟に対応していくことも大事です。
誤解からエスカレートしがちな『SNSいじめ』
次は「SNSいじめ」について。主人公は和子と絵里です。学級レクリエーションで歌を披露した和子は、クラスメイトとグループSNSで感想をコメントして盛り上がっていました。
「モノマネ、盛り上がったよね〜」などと、クラスメイトがコメントを送るなかで 絵里はこんなメッセージを送ります。
「和子、選曲のセンス良くない」
メッセージを見た和子は「私のセンスが悪いわけ?絵里、ひどい」と怒り、ほかのクラスメイトにSNSで連絡をして、絵里を仲間外れにすることを決めます。
翌日、学校に行った絵里はクラスメイトから無視されてしまいます。
その後、絵里が和子に「私なにかした?」とメッセージを送っても思いは伝わらず、ついにこのSNSグループから強制退会させられてしまいました。絵里は学校では無視をされて、廊下でぶつかるなど嫌がらせはエスカレートしていきます。
その後、「さすがにやりすぎでは?」と感じたクラスメイトが絵里に話しかけます。そして、ことの発端となった絵里のコメントは「センス良くない」ではなく、「センス良いよね」と、褒めるつもりで送っていたことがわかり、誤解がとけます。
ところが話はここで終わりません。今度は「和子、ひどいよね」と、意地悪をしていた和子が悪者扱いをされ、翌日からは嫌がらせをされる側にまわってしまうのでした。
<SNSいじめのきっかけはなんだったのでしょうか?>
最初、絵里は「和子、選曲のセンス良くない」とコメントを送りました。「センス良くない?=センス良いよね」という意味で書き込んだのですが、メッセージを受け取った和子は「センスが悪い」と悪口を言われたように受け取りました。文字だけのコミュニケーションによる勘違いから、SNSいじめに発展したのです。
SNSでのコミュニケーションは文字が中心ですが、実は文字でのコミュニケーションはとても難しいのです。直接会って言葉で伝える場合は、身振りや表情、声のスピードなどで気持ちが伝わります。しかし、文字は言葉と違い、相手の顔や表情が見えないため、気持ちが伝わりにくく、すれ違いが生まれてトラブルに発展することがあります。また、SNSは簡単にグループから外すことができ、いじめがエスカレートしやすいのです。
<解決のポイント>
SNSでコメントを送る側は、受け取った相手がどんな気持ちになるのか、正しく意図が伝わるのかを確認してから送るよう心がけることです。絵里の場合は、絵文字やスタンプを使っていれば、トラブルは避けられたかもしれません。
メッセージを受け取る側は、相手がどんな気持ちで送ってきたのかを考えて、相手の気持ちがわからないなら直接聞いてみましょう。これを和子ができていれば、いじめにまでエスカレートすることはなかったはずです。
また、子どもがSNSをはじめるときは、保護者と一緒がおすすめ。たとえば、LINEをはじめるなら「一緒におばあちゃんにメッセージを送ってみよう」とやってみる。友だちに送るときも保護者が確認してから送ると安心です。
SNSで知り合った友だちは誰?『出会い系』のトラブル
最後は出会い系のトラブルについて、主人公はゆうこです。ゆうことさきは同じバンドのファンで、ネットの中で知り合いました。ふたりはSNSのやり取りで、どんどん仲良しになっていきます。
「これ私だよ」
ある日、さきが自分の写真を送ってきました。「ゆうこの写真も見たいから送ってよ!」と、お願いされたゆうこは、「友だちだからいいか」と、自分の写真を撮って送ります。写真を撮った時、GPS機能をONにしていました。
後日、さきから「相談したいことがあるから家に遊びに来ない?」と誘われます。待ち合わせ場所は、ゆうこの家の近所のみどり公園。さきはお父さんとクルマで迎えに来るそうです。なぜ、自分がみどり公園の近くに住んでいることをさきが知っているのかが気になりつつも、待ち合わせ場所に向かいます。
待ち合わせ場所に現れたのは『さきのお父さん』を名乗る人物でした。「さきが家で待っているから早くクルマに乗りなさい」と言われて困っていると、偶然、先生が通りかかります。そうしているうちにクルマは走り去ります。
実は、さきの名前でSNSを使っていたのは、お父さんを名乗る中年の男性でした……。なんと子どもを誘拐して酷いことをしていたのです。ゆうこがクルマに乗っていたら、どんな目にあっていたのでしょうか……。
<ゆうこが友だちと思っていたさきは、本人でしょうか?>
違いますよね?さきのお父さんを名乗る男性がさきになりすましていたんです。ネットで知り合った人は、本当はどんな人かわかりません。年齢や性別、学校や仕事、写真など、ネット上ではいくらでも嘘をついてなりすますことができます。実際にネットで知り合った人に騙される、誘拐されるような事件が起こっています。
また、ゆうこはGPS機能をオンにした状態で写真を撮ったため、写真からみどり公園の近くで撮影したことが分かってしまいました。ネットで知り合った人に簡単に写真を送ること自体が、とても危険なことですし、必要がない限り写真の撮影時はGPS機能をオフにしておきましょう。
<解決のポイント>
昨今はSNSだけでなく、ゲームでも知り合うことができる時代です。子どもは純粋だからこそ、SNSやゲームでやり取りをしただけで、いい人だと思ってしまいがち。でも本当はどんな人なのかはわからないので、絶対に会いに行ってはいけません。インターネットで知り合った人は簡単には信用せず、疑うことが大切ということを、常に保護者はしっかりと伝えておく必要があります。
怖がり過ぎずにリスクを知って有意義に使ってほしい
このように、スマホの使い方によっては子どもがトラブルに巻き込まれる可能性があります。最後に「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を運営する、KDDI サステナビリティ推進室の海崎千恵子、日野有子、澤谷賢太に、子どもがスマホを持つにあたり、保護者に伝えたい心構えを聞いてみました。
「いまは娯楽、コミュニケーション、そして勉強も、入口がスマホになっていることが多いと思います。子どもがスマホに費やす時間も長くなり、それを見て、保護者が『いつまで見ているのよ!』と注意をしてしまうこともあるのではないでしょうか。実際には、勉強をしていた可能性もありますよね。家庭でのコミュニケーションが不足していると、子どもがスマホのコミュニケーションに頼ってしまうこともあります。日頃から、子どもが保護者に相談しやすい環境をつくり、スマホのルールも一緒につくっていくことが大切だと思います」(海崎)
「スマホを持ちはじめる年齢やトラブルは年々、低年齢化しています。これからは小さな子でもスマホを使いこなしていく時代になってくるのではないでしょうか。スマホは便利な道具で、ハサミや包丁と同じで、使い方によっては、自分もおうちの人も友だちも傷つけてしまうことがあります。保護者はマイナスの部分も知ったうえで、子どもたちが上手に活用できるようサポートしてほしいですね」(日野)
「講座ではスマホ利用時のトラブルなど、ネガティブな点に注目して実施していますが、有益な使い方もたくさんあります。勉強に使ったり、普段は会えない外国の方とコミュニケーションがとれたり、スマホは世界を広げてくれるツールでもあります。保護者の方は、子どもがスマホを使うことに対して“怖がり過ぎず”、リスクを認識したうえで、子どもの世界を広げるように使っていただければと思います」(澤谷)
授業や情報伝達、コミュニケーションがオンライン中心になるなかで、スマホはこれまで以上になくてはならない必需品になるはず。そんなときに子どもたちが安全に楽しくスマホを使いこなせるように、この記事を参考に、一度、家庭でスマホとの付き合い方について話し合ってみてはいかがでしょうか。
文:TIME&SPACE編集部
※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。