2019/08/01

スマホをつなげる『基地局』とは? ドローンやバズーカなど変わりダネ珍7景も紹介

普段から何気なく使っているスマホやケータイはどのようにつながっているのだろう? そこには通信を影で支える無線通信装置の「基地局」の存在が欠かせない。

2019年6月には、全国に約21万局ある信号機を5Gの基地局向けに解放する方針を政府が発表するなど、基地局の存在が注目されるなか、あらためてその仕組みや種類を解説。さらに、日本全国にある変わりダネ基地局を紹介する。

基地局とは携帯電話の電波をキャッチして交換局に届ける橋渡し役

まずはスマホやケータイがつながる仕組みを説明しよう。スマホは発信した機器から、相手のスマホに直接つながるわけではなく、基地局や通信ケーブルを介してつながる。

たとえば、AさんからBさんにスマホで電話をかけた場合、Aさんのスマホの電波はまずいちばん近い場所にある基地局とつながる。基地局が受信した電波は信号に変換され、光ケーブルを通じて交換局へ。交換局からBさんの最寄り基地局へ信号が送られ、そこで再び電波に変換されてBさんのスマホに届く。

つまり基地局は、みなさんのスマホと交換局のあいだをつなぐ「電波の橋渡し役」を果たしているのだ。

携帯電話がつながる仕組みの図版 携帯電話がつながる仕組みの図版

基本的に基地局は電波を発射する「アンテナ」と「送受信機」で構成されており、その形状と役割の違いによって大きく4種類に分けられる。順に紹介していこう。

出典/総務省「携帯電話基地局とわたしたちの暮らし」より抜粋 出典/総務省「携帯電話基地局とわたしたちの暮らし」より抜粋

鉄塔タイプ
鉄塔タイプの基地局は通常20〜50m程度の高さがあり、そのぶん広いエリアをカバーできる。主に郊外に設置される。

鉄塔タイプの基地局

ビル設置タイプ
ビルやマンションなどの屋上に設置するタイプ。主に市街地で利用される。

ビル設置タイプの基地局

小型基地局
小規模なエリアをカバーする小型・軽量の基地局。電柱など既存の設備に設置されることが多い。

小型基地局

屋内基地局
地下街や地下鉄の駅、大型ビルの地下や高層フロアの屋内に設置し、狭いエリアをカバーする。写真はアンテナ部分が透明で目立たない「可視光透過アンテナ」だ。

可視光透過アンテナの屋内基地局

上記のような一般的な形状の基地局だけでなく、全国には現地の事情やニーズに応えるためにカスタムされ、さまざまな個性をもつ「変わりダネ基地局」が存在する。一挙に紹介しよう。

全国の「変わりダネ基地局」珍7景

①イタリアン・レストランにある「トリコローレ基地局」

広島のイタリアン・レストランにあるトリコローレ基地局

「緑・白・赤」のイタリア三色旗、トリコローレに包まれた基地局。支柱下部が赤、支柱が白、支柱上部が緑に彩られた基地局は、広島市にあるイタリアンレストランの駐車場に設置されたもの。

もともと周辺地域の電波が入りにくいということで、KDDIが周辺の電波状況を調査。この高台が基地局を新設する立地としてベストな場所であることがわかり、設置することが決まった。その際、コンクリートの支柱では味気ないということで、お店のオーナーと話し合って「赤・白・緑」3色で彩った美しいイタリア三色旗の基地局が誕生した。

②世界遺産の白川郷に電波を届ける「合掌造り風基地局」

白川郷に電波を届ける「合掌造り風基地局」

合掌造りの集落が世界遺産で有名な白川郷(岐阜県大野郡白川村)には、合掌造りをイメージした「屋根」をまとった基地局が存在する。

豪雪地帯の白川郷では雪が積もるため、電波をつくる無線機を1m以上かさ上げし、無線機が雪で埋もれないよう、屋根がかぶせられている。景観に配慮して支持柱や無線機を置く架台を茶色に塗装することで、世界遺産の白川郷の絶景とも違和感なく馴染んでいる。

③太陽光発電搭載の「ロケット風基地局」

太陽光発電搭載の「ロケット風基地局」

高知県南部、香南市夜須町の太平洋を望む高台の一画に、ロケットのようなデザインの基地局がある。この基地局は、電力会社から供給される商用電源と太陽光電池、蓄電池の3つの電源を組み合わせて基地局を運営する実証実験の一環として、2009年に敷設されたもの。

ワインレッドの部分が実は太陽光電池で、商用電源が断たれた非常時でも、太陽光や蓄電池を使って一定の時間稼動ができる。実証実験が成功した結果、いまでは100カ所の基地局に太陽光電池と蓄電池が導入された。

④名古屋駅を狙い撃つ「バズーカ型基地局」

名古屋駅前に設置されたバズーカ型基地局 名古屋駅前に設置されたバズーカ型基地局。2本のアンテナを使用する

名古屋駅前のビルの屋上から、バズーカのように新幹線のホームを狙い撃ちする基地局がある。名古屋駅周辺はJRや各線を合わせると1日の利用客数が100万人を超え、新幹線が名古屋駅に着くたびにたくさんの人が乗り降りし、多くのトラフィック(通信量)が発生する。

一般的な、円形に電波を出すアンテナだけでは電波の干渉が起こりやすいため、目的の場所をピンポイントで狙えるバズーカ型基地局を採用。これにより、電波の干渉を最小限に抑えながらもストレスのない通信環境が実現した。

⑤災害時に活躍する移動型基地局たち

ドローン基地局と被災者を検索する実証実験の様子 飛行するドローン基地局。右は被災者を検索する実証実験の様子

災害が起こってスマホや携帯電話がつながらなくなったときは、移動型の基地局が活躍する。現在、孤立した被災地に電波を届けるために、ドローンを活用した基地局の実用化が進んでいる。ドローンには小型・軽量化した基地局システムを搭載。復旧作業のために、陸や海から現地に入ることが難しい場合、ドローン基地局を飛ばして上空から電波を届けることで、孤立した被災地における通信の一時的な復旧が可能となる。

同時にKDDIでは、無線設備を搭載したドローンを被災したエリアに飛行させ、ケータイの信号をキャッチして被災者を空から捜索するシステムも開発中。これらドローン基地局は実証実験が成功しており、実用化に向けて着々と開発が進められている。

また、船の上に基地局を設営して海から復旧作業を行うのが船舶型基地局だ。甲板に設営したアンテナから、沿岸部に向けて電波を飛ばして携帯電話の通信を復旧することができる。

海底ケーブル敷設船「KDDIオーシャンリンク」を活用した船舶型基地局 海底ケーブル敷設船「KDDIオーシャンリンク」を活用した船舶型基地局

陸からの復旧作業は車載型基地局が行う。アンテナなどの通信に必要な設備を搭載したクルマで被災地へ向かい、現場で基地局を設営し、臨時で携帯電波をつながるようにするのだ。

災害対策公開訓練で出動した車載型基地局 災害対策公開訓練で出動した車載型基地局

⑥LED搭載で街路樹灯のように照らす「スマート基地局」

LED街路灯型のスマート基地局

スッキリ細身のこちらは、国内では初の導入となるLED街路灯型の基地局だ。全長10mの支柱にアンテナを内蔵しており、街路灯と一体化。夜間はLEDライトで道路を明るく照らすことができる。通常の基地局よりもコンパクトで周囲の景観に配慮した、まさに「スマート基地局」である。

⑦自然の景観に配慮した「ウッド調基地局」

ウッド調の擬木柱の基地局

山や森林、公園などに基地局を設置する場合、周辺の環境に配慮して自然に馴染むように基地局をカモフラージュ装飾することもある。上の写真はポール部分を樹木のようにデザインした擬木柱の基地局だ。

また、屋久島では山小屋のデザインに馴染むように、アンテナや附帯設備を茶色に塗装し、別の基地局では「基地局銘板」に地元の屋久杉を使用した。このように自然の風景にマッチするよう、基地局にさまざまな工夫を施しているのだ。

山小屋に馴染む、茶色く塗装した基地局。「基地局銘板」に地元の屋久杉を使用した基地局
山小屋に馴染む、茶色く塗装した基地局。「基地局銘板」に地元の屋久杉を使用した基地局

“いつでも、どこでも”携帯電話がつながるために、基地局の存在は欠かせないものだが、同時に環境への配慮は重要な課題でもある。地道な電波対策をもとに、場所や状況、目的に合わせて設置された基地局は、目立たず、現地に溶け込み、今日も全国で「電波の橋渡し」としての役割をしっかりと果たしている。

文:TIME & SPACE編集部

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