2019/03/28
ドローンで被災者を捜索 「陸海空」から通信を復旧するKDDIの災害対策に密着
巨大地震の発生、歴史的な豪雨、大型台風の直撃――。2018年は全国で大規模な自然災害が相次いだ。災害時に携帯電話は家族や友人の安否を確認したり、自身の無事を伝えたり、災害状況や被災地の情報を得たりと、大切なライフラインとなる。だからこそ、被災地で通信がつながらなくなったときは、一刻も早い復旧が求められる。では、災害が起きたときにKDDIではどのような復旧対策を行っているのか? 「陸・海・空」のあらゆる手段で通信インフラを支えるKDDIの災害対策の取り組みを伝える。
災害発生後、情報を収集して通信が利用できないエリアを確認
3月1日、KDDIと横浜市が連携して災害対策公開訓練を実施した。この訓練は、神奈川県沖でM8.5の地震が発生し、横浜市では最大震度7、高さ5mの津波が来るという想定で行われた。
大規模な災害が起こったとき、まず行うのは情報収集。緊急地震速報の通知を受けた後、KDDI内に災害対策本部を立ち上げ、被災状況の確認を行う。携帯電話が利用できない通信エリアを調べ、サービスエリアマップに反映。
画像のマップ内の黒い箇所が、通信がつながりにくくなっているエリア。通信が利用できないエリアに優先順位をつけて、エリア復旧プランを立て、全国の事業所から被災地である横浜に向かうために出動準備を行う。
「陸」からは機動力のある車載型基地局で通信を復旧
災害発生後の初動時に活躍するのが「車載型基地局」だ。車載型基地局とは、アンテナなどの通信に必要な設備を搭載したクルマのこと。
高い機動力を生かして被災地へ向かい、現場で基地局(アンテナ)を設営、臨時で携帯電波をつながるようにする。緊急車両指定を受けているので、赤色灯をまわして緊急自動車として迅速に動くことも可能だ。
もしも土砂崩れや家屋の倒壊など、道路が寸断されていて一般車両では進むことができない場合は、自衛隊と連携して「可搬型基地局」を運んで被災地へ向かう。可搬型基地局とは、基地局の各設備を小型化して持ち運びができるようにしたもの。小型の基地局を臨時に設営することで、通信を復旧することができる。
「海」からは船舶基地局で沿岸部の通信を復旧
沿岸部周辺などで陸路からの通信エリア復旧が難しい場合は、「船舶型基地局」を設営する。船舶型基地局とは、船の上に基地局を設営して海路で被災地に接近、衛星アンテナで受信した電波を海上から発信するというもの。2018年9月の北海道胆振東部地震のときに、日本ではじめて運用された。
訓練では海上保安庁と連携し、巡視艇で作業員と機材を沿岸部まで搬送。停泊する海底ケーブル敷設船の「KDDIオーシャンリンク」に作業員が可搬型基地局の機材を積み込み、乗船した作業員が船舶型基地局を設営する
このように甲板に設営したアンテナから、沿岸部に向けて電波を飛ばすことで、携帯電話の通信を復旧することができるのだ。
海底ケーブルを敷設・修理する「KDDIオーシャンリンク」
実は「KDDIオーシャンリンク」には、本来、別の目的がある。それは光海底ケーブルの敷設・埋設と修理・保守である。たとえば、遠洋をまわって光海底ケーブルを海中に敷く作業を行う。地震などで海底ケーブルの故障や切断などがあった際は、ただちに出航して現場に駆けつけ、破損したケーブルを修理する。
船内には最大4,500km分のケーブルを積載できるケーブルタンクが、さらに船首にはケーブルを這わせるためのローラーがある。
海中での作業を行う水中ロボット「MARCAS-IV」も積載。最深2,500mまで潜行して、ケーブルの埋設や保守作業などを行う。
2011年に起こった東日本大震災の際は、日米間を結ぶ多くの光海底ケーブルが被害を受けたため、「KDDIオーシャンリンク」は約5カ月24時間体制で修復作業を行った。そんな「KDDIオーシャンリンク」に与えられた、もうひとつの重要な役割が船舶型基地局なのだ。
「空」からはドローン基地局で被災者を捜索
一方で、倒壊した家屋や瓦礫の中にいる被災者の捜索は緊急性が求められるが、目視による発見が難しいケースが多い。そういった状況で被災者を見つける手がかりとなるのが、携帯電話である。
実は、基地局が被災して通信がつながらない状況でも、携帯電話は基地局にアクセス信号を発している。そのアクセス信号をキャッチして、被災者の携帯電話の位置を捜索する新しいシステムが「無人航空機型基地局(ドローン基地局)」だ。
仕組みは、無線設備を搭載したドローンを被災エリアに飛行させ、携帯電話からのLTEやWi-Fiの信号を受信・解析して位置を推測するというもの。信号を受けた際のドローンの飛行位置を随時記録し、同じ携帯電話から数回信号を受けることにより、おおよその位置を推定することができる。
ドローン基地局はドローンとタブレットのシンプルなシステムで運用しているため、被災地で迅速に導入することができる。なお、ドローン基地局は、衛星回線などのバックホール回線を確保できれば、通常の基地局として携帯電話に通信を提供できる。このときの通信処理を応用して、携帯電話の位置推定が考案された。
ドローン基地局で被災者の携帯電話の位置を捜索した後は、消防局に救助活動を要請し、横浜市消防局救助工作車が出動!
倒壊した家屋にいる被災者を助けるための、消防局員による救済活動の訓練が行われた。
また、離島などの孤立した地域で陸路や海上からの対策が行えない場合は、ヘリコプターで機材を輸送するなどして復旧を行う。衛星アンテナをヘリに搭載して搬送し、既存の基地局に接続して、周辺エリアの通信を復旧させるのだ。
自治体と連携、「00000JAPAN」の提供
被災地での災害対策では、自治体との連携も重要だ。災害時にKDDIは自治体にリエゾン(災害対策現地情報連絡員)を派遣し、被災情報を収集。自治体からの要請があれば、避難所を支援するために通信機器の貸し出しやWi-Fiボックス、充電ボックスの設置を行う。
大規模災害時に通信インフラが広範囲に被害を受け通信が利用できない場合は、無料公衆Wi-Fiを無料で利用できる災害用の「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」を提供する。
「00000JAPAN」とは、地震や洪水などの大規模災害が起こったときだけに使える無料公衆無線LANサービスだ。 写真のように被災地にアクセスポイントを臨時に設置して「00000JAPAN」を無料開放することで、周辺エリアではどの携帯会社の携帯電話でも簡単にWi-Fiへの接続が可能となる。
あらゆる手段で通信の復旧を目指す
KDDIは「陸」や「海」だけでなく、ドローンなどを活用して「空」からの災害対策にも取り組んでいる。そして、万が一の自体が発生した場合に迅速かつ正確に対策するために、日夜訓練を積んでいる。訓練を統括するKDDI技術統括本部 運用本部 運用管理部の渕上英彦にその思いを聞いた。
「災害が起こったときには、いち早く通信エリアの影響を把握し、1分1秒でも早く復旧することがなによりも重要です。しかし被災地がどのような状況になっているかはわかりません。私たちはどんな状況にも対応できるよう、陸・海・空のあらゆる手段を使って通信を復旧するための訓練を行っています。災害にも強い通信ネットワークを構築することが私たちの使命だと思っています」
普段、当たり前のように使っている携帯電話は、非常時には大切なライフラインのひとつとなる。大災害が起こって電波が途切れてしまったとき、少しでも早く通信を復旧させるためになにができるのか? 国や自治体との連携を行い、「陸」から、「海」から、そして「空」からも最善を尽くして、災害に強いネットワークの構築を目指す。災害時でも「思い」や「安心」を届け続けるために、KDDIの取り組みは続く。
文:TIME & SPACE編集部
写真:稲田 平
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