2015/04/10

東京ミッドタウンで『復興デザインマルシェ 2015』開催 被災地の復興をデザインと通信の力で支援する

東京ミッドタウンに並んだ手仕事による品々

3月15日、東京ミッドタウン(六本木)の芝生広場に面した吹き抜けのスペース(アトリウム)がにぎやかな市場になった。
木肌が目を引くすっきりとしたデザインのブースに、自然素材や手仕事による品々が並び、美術館やショッピングなど、別の用事で東京ミッドタウンを訪れた人たちもふと足を止め、商品を手に取り、店の人に話しかける。この日と翌16日に開催された「復興デザインマルシェ 2015」での一コマだ。

「復興デザインマルシェ」は、東日本大震災で被害を受けた東北地方と茨城の、経済と産業の復興をデザインで支援する活動だ。震災の翌年から毎年3月に東京ミッドタウンで開催され、今年で4度目を数える。テーマは「人と人とをつなげる"出会いのマルシェ"」。作り手や商品との出会いを楽しみながら東京と被災地をつなぎ、復興支援を目指す。

主催は、グッドデザイン賞の運営など国際的なデザインプロモーション機関である公益財団法人日本デザイン振興会、今年はKDDIが共催に加わった。出店したのは、東北と茨城の36のものづくりの企業や団体。それぞれの地域ならではの伝統的な手仕事に、デザインの要素を盛り込んだ商品が多い。ジャンルは、服やバッグなどのファッション用品から雑貨や日用品、食品などさまざまだ。

今年で4回目の開催となる「復興デザインマルシェ2015」。日本デザイン振興会の呼びかけにより、マルシェには東北地方と茨城から36のさまざまな業種の企業が参加した。

マルシェを訪れたさまざまな人たち

来場者に、マルシェの印象を尋ねてみた。
長岡誠仁さんと加藤若菜さんの2人は、館内の美術館「21_21 DESIGN SIGHT」で開かれていた「単位展」を見に東京ミッドタウンにやってきたところ、木のブースが目に止まり、マルシェに立ち寄ったのだという。
「東北と"デザイン"を結びつけて考えたことはありませんでしたが、手仕事とデザインが結びついて、東北の新しいイメージができました」と印象を語る。
宮城県東松島の女性たちがクロスステッチ刺繍を通じて新しい産業を創っていこうと結成した団体「東松島ステッチガールズ」のブースの前で2人は足を止め、店の人と話をする。包帯の生地に刺繍を施した「包帯パンツ」がかわいらしい。


「家の中で鬼を見つけたよ」
「鬼は家の中でどこに隠れてたの?」
横浜から来られたという木村淳子さんのお子さんの航斗くんは、民謡のふるさと岩手県遠野市の「もくもく絵本研究所」のブースで店の人と話に興じる。
「もくもく絵本」は、サイコロ状の木の6面に異なる絵が描かれていて、絵を並べて物語をつくる大人と子どものコミュニケーションツールだ。木材は地元の遠野市産のものだ。
「別の用事で東京ミッドタウンに来て、たまたまブースの前を通りかかりました。ユニークなおもちゃで楽しいですね」と、お母さんの淳子さんは、航斗くんが遊ぶ姿を見つめながら話してくれた。


東京ミッドタウンという場所柄、会場には外国人の姿も多かった。リトアニア大使で日本に着任したばかりというVioleta Gaižauskaitėさんは、配偶者のVitas-Juozas Antanaitisさんとマルシェでのショッピングを楽しんだ。この日、手にしたのは、ヒノキのアロマと味噌汁のもとだ。
「伝統や手仕事を守るのはとても大切なこと。リトアニアでも伝統はとても大事にしていて、日本に親しみを感じます。子どもにも日本に遊びに来てほしいですね」と、二人は口にする。

秋田杉の間伐材で作られた木のブース

出店しているブースはKDDIが提供した間伐材を使用して作られた。

スタジオ木瓜を主宰するバイヤーの日野明子さんは、マルシェに出店する山形県の9つの企業や団体の出店を支援する。デザインで地域のものづくりの課題解決を目指す「山形エクセレントデザイン事業」の一環で、売り場視点での商品ブラッシュアップに取り組む「デザイン塾」が開催され、日野さんはそのアドバイザーを務めている。
山形のブースは、しな織のバッグや籐のハンガー、畳に使ういぐさを使った商品など、地域独特の素材を使ったオリジナリティの高い商品で彩られていた。9つの企業や団体は、いずれもデザイン塾の成果発表を兼ねて出店したのだという。
「デザインはすべて、地域の作り手が素材の特性を生かして考え出したものです。それを東京ミッドタウンの中でも一等地の場所で紹介できて、商品を手にとってもらういい機会になります。木のブースも、風情があっていいですね」と日野さんは語る。

実は、今回の会場の顔にもなった木のブースは、林野庁や全国森林協同組合の協力のもと、KDDIが提供したものだ。KDDIは東北の森林保全に力を入れて取り組んでおり、これまでにもauの携帯電話の取扱説明書や、auショップに置くカタログスタンドを東北の間伐材で作ってきた経緯がある。その一環で、秋田杉の間伐材を使ってブースを作ることになった。
そもそもの話をすれば、KDDIが「復興デザインマルシェ 2015」を共催することになったのも森林保全の活動に端を発する。KDDIが間伐材でカタログスタンドを作った際、マルシェでも間伐材を使う企画を思いついたという。
ちなみに、マルシェが終わるとブースは解体され、「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載中の「100のツリーハウス」という企画で、ツリーハウスを作る木材として使われる予定なのだそうだ。

KDDIプロダクト品質管理部の柳 良樹は、通信企業が復興支援のイベントを共催する意義を次のように語る。
「通信企業は限られた資源である公共の電波を使わせていただいて事業を行っています。それによって得た利益はお客さまに還元するのは当然のことです。全国での森林保全も今回の復興デザインマルシェも、そうした活動の一環として取り組んでいます。」

最後に、主催の日本デザイン振興会の鈴木紗栄さんに、今年から共催にKDDIが加わったことによる変化を尋ねてみた。
「今年から、スマホやタブレットでクレジットカード決済ができるCoiney(コイニー)というサービスを導入しました。KDDIさんの発案と企画によるものです。例年は、お客さまが現金の持ち合わせがなく、商品を買えないケースも少なくありませんでしたが、今回はKDDIさんのおかげで希望者に端末を貸与し、出店者に対してもお客さまに対してもサービスを向上させることができました。被災地でも、通信を使った新たな仕組みで復興を後押ししてほしいですね」
復興を進めるカギは、デザインと通信の力が握っているのかもしれない。

左からKDDIの柳 良樹、スタジオ木瓜を主宰するバイヤーの日野明子さん、日本デザイン振興会の鈴木紗栄さん

文:萱原正嗣

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