2015/01/23

山村の人々に学生が聞き書きした記録が電子書籍『ブックパス』で無料配信 今年は被災地の漁村での聞き書きの旅を実施

向かい合ってじっくりと話を聞き、その成果を地域の人々と共有する。農山漁村と都会の学生をつなぐ「コトバのたび」。昨年の新潟県北部の山村に続き、今年2~3月には、宮城県の2つの漁村で聞き書きを行う予定だ。KDDIは、聞き書きと、その成果の発表をサポートすることにした。

地域とつながる学生を増やしたいとの思いから始まった聞き書きの旅

棚田での稲作、山仕事、冬の豪雪、山村ならではの生活、そして地域の将来......。東京に住む大学生たちが、新潟県北部にある村上市高根地区に暮らす人たちに聞き書きをしてまとめた冊子『コトバのたびプロジェクトvol.1 新潟県村上市高根~棚田と林業の集落~』には、生活やなりわいの話から、山深い地ならではの不思議な話、そして、なかなか聞くことのできない心の内までが綴られている。KDDIの提供する電子書籍サービス・ブックパスでの無料配信も始まった『コトバのたびプロジェクトvol.1 新潟県村上市高根~棚田と林業の集落~』。聞き書きをしたのは、認定NPO法人「共存の森のネットワーク」が実施した「コトバのたび」プロジェクトに参加した大学生。2度にわたって高根地区を訪れ、5人の方にお話を伺った。

新潟県北部にある村上市高根地区に暮らす人たちとの聞き書きの様子

共存の森ネットワーク理事を務める大学3年生の工藤大貴さん

共存の森ネットワークは、高校生を対象にした、ある活動がきっかけになって生まれた。それが、2002年に始まり、現在では農林水産省、文部科学省、環境省などを含む多団体による実行委員会が実施している「聞き書き甲子園」だ。全国の高校生100人が、きこりや漁師など、農山漁村の名手・名人から話を聞いてまとめる。共存の森ネットワークは、第1回に参加した高校生たちが、もっと自然に向き合ってきた人の話を聞きたい、もっと地域に入っていろいろなことを体験したいという思いで立ち上げた認定NPOで、現在では、全国6地区7地域の農山漁村で地域の人の話を聞き、里山・里海の保全や地域づくりの活動を実施しているほか、聞き書き甲子園の運営と参加する高校生のサポートも担っている。

「コトバのたび」は、共存の森ネットワーク理事を務める大学3年生の工藤大貴さんの立案で始まった。工藤さん自身、高校3年生のときに聞き書き甲子園に参加し、北海道の中頓別町できこりの方からの聞き書きを行っている。「共存の森ネットワークの活動で、地域の方と一緒に活動したり、聞き書き甲子園に参加する高校生たちのサポートをする中で、大学生も聞き書きをして高校生には出せない価値を作り出せるんじゃないかと思いました。それに、じっくりと何時間もかけて話を聞いて、それを全部書き起こして編集する中で、その人の人生と向き合うことになります。忘れられないような相手ができ、その人の住む地域に何度も通う若者が増えることを目指して、コトバのたびは始まりました」と、工藤さんは説明する。

聞き書きと朗読会を通して、地域の人々の思いを共有する

コトバのたびの初めての舞台となった高根地区は、村上駅からバスで40分ほど、朝日連峰の懐へ入っていったところにある170戸ほどの集落。もともと共存の森ネットワークが地域交流をしている場所のひとつだ。「ほんとうに山あいのどん詰まりにあるんですが、いまだに三世代同居もかなり多く、二十代くらいの若い人たちも地域のために何かするという意識も強い地域です」(工藤さん)。毎月のように高根に通ってきた工藤さんは、地域の人たちは学生に対してはこれからこの村をどうしていくかというような話を熱心にしてくれるのに、住人同士は遠慮があったりして、将来の話は共有されていない部分があると感じていたという。そこで学生たちで話を聞き書きして、みんなの前で朗読すれば、地域の人たちの思いが共有されるのではないかと考えた。

そして2013年6月と8月に、11人の学生が2~3人ずつグループになって話を伺った。聞き書きをする時間以外は、草取りや地域の活動に参加。東京育ちの学生が多かったため、こんな場所に来るのは初めてと楽しんでいたという。そして10月には、地域の方々に集まってもらって、学生それぞれが、聞き書きした話をまとめて朗読した。工藤さんは前区長さんから話を聞いた。

「80歳を過ぎた方だったんですが、これからの地域をどうしていくかといった話をものすごく具体的に考えておられて。でも、いわば引退した立場なので、人前でそういった話をする機会は全くなかったんです。朗読会では、僕が朗読をした後に、一言お願いしますと言うと、現役世代の前で、すごく熱く、これからの地域の話をしてくださいました」

このように、コトバのたびは、学生だけでなく、高根の人にとっても、地域での暮らしを思い返し、その価値を再認識して、人生観、幸福観、そして地域の未来への思いまでも共有できる貴重な機会となったのである。

そして2014年3月には聞き書きをまとめた冊子を制作。高根地区の全戸に配布したほか、廃校を利用したレストラン「山のおいしさ学校 食堂IRORI」や、毎年3月に東京・日本橋の「ブリッジ新潟」で開かれる高根の物産展&写真展で配布し、高根のファンを増やすのに役立てられている。

聞き書きの内容をまとめた冊子を、電子書籍『ブックパス』で無料配信

KDDI プロダクト品質管理部の井上直子

KDDIが、この活動を支援することになったのは、2014年8月に開催され、KDDIも協賛した森林環境教育イベント「学校の森・子どもサミット」で共存の森ネットワークを知ったことから。KDDIは、取扱説明書のリサイクルがきっかけになって、全国各地で森林保全活動を続けているほか、東北の木を使ってノベルティなどを製作する被災地支援の活動を続けてきている。その一環として、「学校の森・子どもサミット」に参加していたのだ。

KDDI auスマートパス推進部の清水信行

電子書籍『コトバのたびプロジェクトvol.1 新潟県村上市高根~棚田と林業の集落~』

これらの活動を担当するプロダクト企画本部 プロダクト品質管理部の井上直子は、「まず高根の話を伺い、何かKDDIで協力できることはないかと考え、KDDIが提供している電子書籍ストア『ブックパス』で配信して、いろんな方に見ていただくきっかけになればいいと考えました」と言う。

そしてブックパスを担当する新規ビジネス推進本部 auスマートパス推進部の清水信行を紹介。実際に冊子を見た清水は、「これまで私自身があまり触れる機会がなかった内容だなと感じながら読みましたが、掲載された写真を見ていると、まず、高根に住む方々の暮らしが伝わってきました。また、聞き書きをした内容を読んでいると、自分自身が、以前、祖父や祖母から聞いた話の記憶ともつながってきて、いろいろと感じるところがありました。普段、ブックパスでコミックなどを楽しんでおられるお客さまにも、『コトバのたびプロジェクト』を読んでもらえば、同じように感じていただけるところがあるんじゃないかなと感じました」と言う。

そして電子書籍化がスタート。だが、スマートフォンの画面で快適に読めるようにするためには、レイアウトの変更も必要となった。清水のアドバイスを受けて、工藤さんら、コトバのたびのメンバーたちが作業を行い、電子書籍ファイルにするために、KDDIがサポートした。配信開始後は、ブックパスのさまざまなページで、ユーザーにこの書籍の存在をアピールしていく。スマートフォンを見ている中で、「あっ!」というきっかけを作れる電子書籍ならではの特性を生かす試みでもある。

東日本大震災被災地の漁村で1週間にわたって聞き書き

Youth for 3.11プログラムチームを運営する大学2年生の谷口 茜さん

高根に続いて、今年の2月と3月には、共存の森ネットワークとNPO法人「Youth for 3.11」との協働プロジェクトとして、宮城県石巻市の漁村で聞き書きを行う。

Youth for 3.11は、2011年の東日本大震災当日に大学生4人が立ち上げた団体で、岩手、宮城、福島を中心とした東北地方に、復興支援の力になりたい学生を派遣している。関東・関西をはじめとする全国の学生が東北に支援に行くハードルを下げるため、現地で活動する団体と提携して学生が参加しやすいボランティアプログラムを作成して参加者を募集・派遣しているほか、寝袋や長靴の貸し出しを行ったり、経験者の体験談も発信している。これまでに延べ1万6,000人以上の学生を派遣してきた。

昨年からは、山梨、長野の農家などにも学生を派遣するプログラムも開始している。現在Youth for 3.11プログラムチームを運営している大学2年生の谷口 茜さんは、「いろいろな地域に学生を派遣しておけば、もし東日本大震災のような災害がほかの地方で起こったときに、愛着を持って自分ごととしてお手伝いをしに行こうという人が増えるんじゃないかという思いを込めて進めています」と言う。

Youth for 3.11は、石巻市の漁村で、「イマ、ココプロジェクト」を行っている。漁師のお宅に泊まって、実際に漁のお手伝いもするプログラムだ。今回、聞き書きで訪れる漁村もこのプロジェクトが学生を派遣してきた場所で、2月の十三浜はワカメ漁、3月の福貴浦はカキの養殖で知られている。聞き書きの期間はいずれも一週間。10人の学生が、2人一組で漁師のお宅に泊まって、漁のお手伝いもしながら、漁業関係者5人から聞き書きをする。事前に聞き書きの練習会を行うほか、聞き書きの旅から戻ってから書き起こしと編集作業を行い、再び現地を訪れて朗読会を開催、4月以降に冊子にまとめる予定だ。2つの漁村は東日本大震災の被災地でもあり、地域やなりわいについてだけではなく、震災や復興の話も聞く濃密な聞き書きになりそうだ。

タブレットとクラウドサービスで聞き書きをサポート

KDDI 復興支援室の阿部博則

KDDIは、石巻市で行われるコトバのたびに対しては、電子書籍化だけでなく、聞き書き段階から協力を行う。

被災地自治体へ社員を出向させることで復興街づくり活動に取り組む復興支援室が、学生に同行するなどしながら現地サポートを担当する。復興支援室長の阿部博則は、「震災の記憶は、特に都会ではますます風化が速まっていると感じるものの、関心のある方々もまだ大勢いる。そのような方々の取り組みには現地からしっかりと応えていきたい」と話す。

また、プロダクト品質管理部は、活動をサポートするツールとして、タブレット端末の貸し出しとクラウドサービスで協力する。同部の柳 良樹は、「あらかじめ電子書籍『コトバのたびプロジェクトvol.1 新潟県村上市高根~棚田と林業の集落~』を入れておいて、聞き書き先での説明に使ってもらうほか、記録にも使えますし、スケジュール管理や参加する学生さんの間でのコミュニケーションにも使えます。また、現地に来られない学生さんに、聞き書きの様子をストリーミングで見ていただいたりすることも考えています」と言う。

KDDI プロダクト品質管理部の柳良樹

石巻での聞き書きの成果も、電子書籍にしてブックパスで配信する予定だ。阿部は「被災地では、記録を残さなければならないというモチベーションや危機感を持っています。ただ、実際に記録しようとすると、かなり手間がかかります。震災の記憶だけでなく、地域の慣習や文化なども伝え継ごうとする、このような活動が積み重なっていけば、貴重なコンテンツとして残すことができるでしょう」と、その意義を語る。

「あの人に会いに行きたい」という思いで地域とつながることを目指して始まったコトバのたび。その記録を、より多くの人に読んでもらうことで、地域の未来を少しでも明るくできればと、KDDIは考えている。

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