2014/08/28

営業で女性がより輝くためには? 女性たちが考える異業種合同プロジェクト『新世代エイジョカレッジ』がスタート

KDDIにおける女性活躍推進のステップアップ

多様な人材の活躍を推進する「ダイバーシティマネジメント」の重要性が、広く知られるようになって久しい。この言葉は日本において、主に「女性の活用」を意味してきた。商品開発などの際に「女性ならではの視点」を取り入れることで、多様な市場ニーズに対応できる、との期待も込められている。

ただ、実際に働く女性たちは、さまざまな思いを抱いている。管理職を目指したい女性もいれば、プライベートを充実させながら働きたいという女性もいる。そうした多様化したキャリアデザインに悩む女性も多い。現代社会における女性は、それこそ「ダイバーシティ」に富んだ存在なのだ。

2007年から展開する女性活躍推進プロジェクト「Win-K」プロジェクト。写真は、「女性が拓く会社の未来~鍵を握るのは男性上司~」をテーマに、 2014年3月に行った「Win-K」セミナー

KDDIでは2003年から、多様なニーズをもった「女性たちが働きやすい環境の実現」に向けた取り組みを進めている。2007年には当時の小野寺正社長がオーナーを務める女性活躍推進プロジェクト「Win-K(ウインク)」が発足。メンバーが中心となり、勉強会や職場の意識調査などを行ってきた。さらに、育児休業や育児時短勤務、自宅でオフィス同様に仕事ができるテレワーク制度など、「女性が働きやすい仕組み」も拡充。ダイバーシティ推進室の小島良子室長は、「『Win-K』は、社長が自らオーナーを務め、当初のメンバーは女性だけという非常に面白い取り組みでした。この頃から社員に、小野寺(社長:当時)の『女性が活躍できる環境の実現』という目的意識が、明確に伝わり始めたと思います」。こうした流れを女性活躍推進の「第1ステップ」だったと振り返る。

ダイバーシティへの意識が社員に浸透し始め、ワークライフバランスを叶える制度の整備が進んだのが「第1ステップ」。現在は「第2ステップ」として、女性の上級管理職を育てる取り組みが進められている。

2011年には取締役以上の役員を補佐する職位を新設し、そこには男性だけでなく女性も登用した。補佐を1年経験した社員はさまざまな職場でリーダー職を務めている。「2015年度までに女性ライン長(リーダー職で人事評価の権限を持つ管理職)90名(女性ライン長比率7%)」という目標を達成するために、経営層は動き始めている。

女性活躍推進における「営業現場」の課題

KDDIダイバーシティ推進室の小島良子室長

このように、早くから「女性が働きやすい環境づくり」に取り組んできたKDDIにも、課題はある。それは「営業現場で女性の活躍が上手く進まない」こと。女性管理職が極端に少ないだけではなく、そもそも「営業の管理職になることをイメージできない」という女性が多いのだ。

「当社には、子育てと仕事を両立している女性管理職もいるのですが、こと営業となると、それが難しい。営業には転勤がつきものですが、結婚や出産などのライフイベントが、そのネックになるケースもあるからです。『いつかは結婚して、子どもを産んで......』というイメージを持つ若手女性からすると、管理職になるイメージが湧きづらいのです」(小島室長)。

KDDIに限らず、ダイバーシティ推進に熱心な企業でも、「営業部門では女性リーダーがほとんどいない」ケースは多い。あらゆる業界や業種に「営業」は存在するのに、なぜ、女性管理職が生まれにくいのか。営業部門の女性たちが働きやすい風土を実現するためには、何が必要なのか。

今年6月に始まった異業種7社合同のプロジェクト「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」でのグループワークの様子

今年6月、こうした課題を解決するため、異業種7社合同のプロジェクトが始まった。題して「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」。各社から選出された営業職の若手女性たちが、約半年間のグループ活動を通じて、営業職の女性が抱える課題を考え、検討していく。最終報告会では、各社の営業部門役員に向けた「提言」を行う予定だ。

営業で女性がさらに活躍するために、「現場の女性社員が自ら提案する」プロジェクトは、日本初の試みである。発起人はリクルートホールディングスとサントリーホールディングス。「ダイバーシティ先進企業」として交流し合う過程で、KDDIにも声がかかった。参加を決めた理由について、小島室長はこう語る。

「KDDIは社員の営業部門比率が高いのですがが、もともと営業の第一線には女性が少なく、女性のリーダーも生まれにくいという課題がありました。『エイジョカレッジ』に参加することで、営業職の女性社員のモチベーションアップも見込めますし、何より、社会的にインパクトのある企業が一緒になって提言すれば、大きなことができると思います」。

参加企業には発起人2社とKDDIのほか、キリンや日本アイ・ビー・エム、三井住友銀行、日産自動車の7社が名を連ねる。有力企業が集まれば、1社だけで行動を起こすよりも「社会的な影響力」は大きくなるだろう。逆に言えば、これだけの有力企業であっても、営業部門には共通して「女性の活躍を阻む壁」があるということだ。

営業現場で女性の活躍が進めば、女性活躍推進は進化する

営業部門で女性が活躍することは、ダイバーシティ推進にとっても大きなプラスとなる。小島室長は、「営業の女性が活躍しないと、全体の戦力の底上げにならない」と明言する。

「KDDIのお客さまの半数は女性です。お客さまと接する営業現場で、意思決定の場に女性がいた方が良いのは当たり前のこと。ただ、現状では、何となく、『営業現場では女性は組織のリーダーにならないもの』という雰囲気があるのは否めない。その壁を破り、営業でも女性のパワーを生かしたい」(小島室長)。

営業という仕事は、お客さまの要望に応えて動く部分が大きく、KDDIが進める在宅勤務や時短勤務ともなじみにくい。自己コントロールできる部分が少ないので、女性の場合は特に、本人の意思にかかわらず、結婚や出産で仕事が続けられなくなるケースが多いのだ。「エイジョカレッジ」は、営業の女性社員が自ら、こうした課題と向き合い、考える企画である。

KDDIからは、営業部門の女性4名が参加する。彼女たちは、ダイバーシティ推進の布石となることを期待されているわけだが、必ずしも全員が「営業で管理職になりたい」と考えているとは限らない。こうした点は、プロジェクトの意図と矛盾はないのだろうか。率直な疑問をぶつけてみると、小島室長は「マインドセット」「スイッチ」というキーワードで、「エイジョカレッジ」の意図を説明してくれた。

参加メンバーに期待するのは、「スイッチを入れる機会」をつかむこと

小島室長によれば、「例えば、現在の女性管理職社員に聞くと、『思い返せば、あの上司の一言が転換点になった』ということがあるのですね。辛い経験があっても、それを糧にステップアップできる女性はいる。もちろん、チャンスがあっても遠慮や尻込みをしてしまう女性もいますが、本人が『やりたくない、できない』と思っていても、なんらかの機会を提供したいのです。プロジェクトへの参加で他社から刺激を受け、女性たちに『スイッチ』が入ったらいいな、という思いがあります」

営業でもそれ以外の職種でも、仕事への適性や資質はさまざまだ。単に「能力のある女性を伸ばす」のではなく、プロジェクトへの参加を通して「スイッチ」を入れてほしい。「自分だったら、どうなのか」を考えてほしい。これが、参加する女性社員に求められていることである。営業部門の上長たちの反応も、まずまずだという。

もちろんKDDIとしては、最終的に、営業現場の意識が変わり、女性リーダーが生まれることを期待している。ただ、一人一人の女性に「管理職」という目標を押しつけるのではなく、女性が自然にリーダーを目指せるような風土を作っていくことが重要なのだ。

「『エイカレ』に参加している女性社員は、とにかく、『これから』なんです」と語る小島室長は、彼女たちにプロジェクトを、自分のキャリアや会社での女性活躍を客観的な視点で考える良い機会としてほしいと考えている。プロジェクトはまだ、始まったばかりだ。

「新世代エイジョカレッジ」では、集まった女性社員たちが5つのチームに分かれ、課題を分析、検討していく。次回以降では、参加した各企業の狙い、6月9日~10日に行われた「キックオフ合宿」、そして7月11日の「チームアップミーティング」における各チームの発表内容などを掘り下げ、彼女たちが「営業職」として何を考え、どう深めていくのかを追う予定だ。

文:北条かや

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