2014/07/18

『isai FL』から、全機種に搭載の『auベーシックホーム』まで auスマートフォンならではの “こだわり”とは

auスマートフォンには、大画面・高精細のディスプレイをいち早く採用したり、使い勝手の良さを追求したり、独特なデザインを採用したりと、特徴のある製品が多い。どこか一味違う製品をラインアップするKDDIには、きっとauオリジナル製品へのこだわりや執念があるに違いない。2014年 夏モデルでも「isai FL」「TORQUE」「URBANO L03」といったこだわりのモデルが並ぶ。そんなauの "こだわり"について、KDDI 商品統括本部 プロダクト企画本部長の小林昌宏が思いを語った。

日本のユーザーの期待に応えるスマートフォンを

スマートフォンへのシフトが進み、話題になる新製品は多くがスマートフォンになってきた。しかし、そのスマートフォンも新製品のシーズンには百花繚乱という時期を過ぎ、製造するメーカーも絞りこまれてきた。特に、世界中で販売するグローバルモデルの導入が日本でも進み、製品の差が小さくなってきているのが現状だ。

そうした中でも、auスマートフォンにはオリジナルの味付けの濃い製品が多い。海外メーカーの製品でも、HTCとKDDIが共同開発した「HTC J」シリーズ、LG Electronicsとのコラボモデルの「isai」といった、特徴あるモデルが記憶に新しい。2014年の夏モデルでも、大画面・高精細液晶を搭載した「isai FL」(7月18日発売)がラインアップされている。グローバルモデルとは異なる、auだけのオリジナルモデルをラインアップするといった志向が強く働いているのだろうか。

小林はこの問いに、「特に、グローバルモデルに対する"オリジナルモデル"といったカテゴリーを考えたことはないんです。全世界向けの端末を日本で販売する際には、必ず日本向けに仕様変更をお願いすることになります。その割合が多いか少ないかの違いだけではないでしょうか。仕様変更の割合が少なければ、日本のお客さまにとって"グローバルモデル"に見え、多くの手が加われば"オリジナルモデル"に感じるということでしょう」と答える。"KDDIの独自モデル"を生み出したいがためのオリジナルモデル、ということではないようだ。

小林は続ける。「いわゆるグローバルモデルは、世界的な競争の結果もたらされたものです。世界で多くの販売が見込めるため部品調達力は強くなりますから、高機能な端末を安く提供できます。最新の部品を使った製品をいち早くお客さまにお届けできるというメリットもあります」。ただし、日本のマーケットは、世界で売れているものをそのまま持ち込めば売れるといった市場ではない。

「フィーチャーフォンの時代から、ケータイでできることを世界の誰よりも知っている日本のユーザーは、世界の中でもユニークな経験を持った方々です。自分がケータイやスマートフォンで何をしたいか、よく分かっている人に向けて製品を提供するとなると、グローバルモデルそのままというわけにはいきません。ユーザー層ごとにフィットするような製品を提供しようとすると、オリジナルなモデルができてしまうというわけです。そういった意味では、結果論として"オリジナルモデル"はあるのかもしれませんね」(小林)

日本ではグローバルマーケットと異なり、防水、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった機能へのニーズが高い。色やデザインについても日本市場独特の価値観があり、その出来栄えで売れ行きが変化するのだという。カラーバリエーションや仕上げについても、メーカーと議論してリファインしていかないと日本では商品にならない。そうした姿勢で製品づくりに取り組んでいくと、自然とオリジナリティあふれるモデルに行き着くということなのだろう。

大画面で立体感まで感じる「isai FL」の映像美

isai FL。詳細はauHP製品ページへ

夏モデルの中でオリジナリティが高い製品の1つが、約5.5インチの大画面ディスプレイでWQHD(2540×1440ドット)という高精細な液晶を搭載した「isai FL LGL24」だ。ターゲットは20代~30代で、スマートフォンを使いこなす意識の高い人だという。

「LG Electronicsとは、グローバルモデルをそのまま日本向けに発売するのではなく、一緒に製品を作ろうというところで意見が合い、先代のisai LGL22からコラボレーションを行ってきました。お互いにだいぶ慣れてはきましたが、それでも色やデザインなどではかなりの議論がありました。国や文化によって、上質だと思うポイントが異なるので、これは人と人がしっかりと議論して詰めていかないと良い製品はできないと実感しています」(小林)

isai FLの挑戦の1つは、約5.5インチという大画面のディスプレイを、いかに小さな手でも持てるようなボディーに収めるかだった。小林は「大画面ディスプレイを小さなボディに収めるには、ベゼル(液晶の周りの額縁部分)を細くしなければなりません。日本のユーザーは細いベゼルでコンパクトに仕上がった端末を評価しますが、グローバルでは必ずしも評価のポイントになりません。こうした点を説得しながら作ったのがisai FLです。先代のisaiと比べると、画面は大きくなっているのに、ボディーはそれほど大きくなっていないんですよ」と、開発の経緯を振り返る。

表示領域の比較。スマートフォンでは一般的になったフルHD(1,920×1,080ドット)(上)と、isai FLで採用したフルHDを超えたWQHDディスプレイ(2,560×1,440ドット)。情報量にもこれだけの差がある

そして、スマートフォンでは一般的になったフルHD(1920×1080ドット)を大きく上回るWQHDの高精細ディスプレイもこだわりのポイントだ。「ここまで高精細で大画面だと、二次元のはずの写真や映像が立体感や厚みをもって見えてくるほどです。ぜひ実際に体験してほしいですし、この画面を使ってしまったらもう小さいものには戻れないほどのインパクトがあると思います」(小林)。第2世代のisaiもまた、"異彩"を放っているのだ。

isai FLは、使用している部品という観点では、KDDIからの発表後にLG Electronicsが発表したグローバルモデルの「LG G3」と共通点が多い。とはいえ、デザインやカラーバリエーションはもちろん、細かい点でも日本向けの仕様が具現化されている。例えば、電源ボタンの位置。グローバルモデルのLG G3は背面の中央部に電源ボタンがあるが、isai FLでは、電源ボタンを日本のユーザーが慣れ親しんだ側面に配置し、ボリュームボタンを背面に配置するといった方法で日本のユーザーにとって使いやすい操作性を実現した。「日本のお客さまは細かい点までこだわりがあります。スマートフォンを肌身離さず "着る"ように使う文化は、日本から広がっていると感じています。そういった点まで理解してもらって、良い製品を作り上げることで、メーカーとKDDIがウィンウィンの関係になれると考えています」(小林)。

isai FLにはもう1つ、KDDIとのコラボレーションによる新しい試みが加えられている。それがスマートフォンを「振る」ことでアクションを起こせる「isaiモーション」だ。isaiモーションは、ホーム画面を表示しているときに軽く2回端末を振ると、標準の設定では現在地周辺の「グルメ」「お得情報」「イベント/スポット」の情報を得られる。小林は「自宅の近く、勤務先、出張で訪れた街などで、さっとスマートフォンを振るだけで近隣の情報が得られます。検索するというアクションが不要ですから、周辺の情報が欲しいときにすぐ使えます。自宅の周りでもこんなイベントがあったんだ、などと新しい発見もありますよ」と、新しい情報の入手方法の面白さをアピールする。

isaiモーションを使えるのは、夏モデルではisai FLだけ。今後は これをベースにして機能を拡張したいというが、isai FL発の新しいユーザーインタフェースとして、他の機種への展開も期待したいところだ。

強い「TORQUE」、優しい「URBANO」

TORQUE。詳細はauHP製品ページへ

auスマートフォンの夏モデルには、isai FL以外にもオリジナリティあふれる機種がある。高耐久性を売り物にした京セラ製の「TORQUE」(7月25日発売)、スマートフォン初心者にも使いやすさを提供する「URBANO L03」(6月28日発売)がその好例だ。

TORQUEは米国で発売されて好評を得ているシリーズの最新モデルだが、小林はその位置付けを、「auではこれまで"G'zシリーズ"というヘビーデューティー仕様のモデルを提供してきました。今回、メーカーは変わりましたが、やっとG'zシリーズを好きだというお客さまの声に応える提案が出来たと思います」と説明する。TORQUEは米国防総省の調達規格に準拠した耐久性を備える。防水・防塵はもちろん、耐衝撃、温度耐久、耐振動、塩水耐久、防湿、耐日射、低圧対応という高耐久性を備えている。

これこそ、こだわりのスペックだろう。「究極の耐久性を備えていると考えています。ディスプレイ表面のガラスは曲げにも強い素材を使っています。割れたり、キズが付いたりしにくいのですが、日本のユーザーは汚れやキズに敏感ですから、TORQUEにもフィルムを貼って使うかもしれませんね」と小林は笑う。

URBANO L03。詳細はauHP製品ページへ

一方、「URBANO L03」のURBANOシリーズは、フィーチャーフォン時代からauが育ててきたブランドだ。小林は、「当初のURBANOシリーズは、スタイルにこだわりを持つ"ちょいワルおやじ"向けといった意味合いが強かったのですが、今のURBANOはスマートフォンの入門モデルという側面が強くなりました。それでも、他の人とはちょっと違う良い物を持ちたいというこだわりに応える部分は変わっていません」と、歴史をひもとく。入門モデルといっても、シニア向けのいかにも簡単そうな端末ではなく、フル機能を備え、習熟度に応じて使いこなせる端末がURBANOなのだ。よく使うボタンをハードキーにして押しやすくしたり、見やすいホーム画面を選択できたりと、使い勝手は保ちながら、格好良さも同時に表現している。

そんなURBANOシリーズにも、これまでは少し弱点があった。「前モデルまでのURBANOは、スペックを見ると、CPUやOSなどがその時点の最新のものでなかったりしていました。でも、今回のURBANO L03は、CPUもディスプレイもOSも、最新の、トップレベルの能力を発揮できるものを採用しています。中心となるターゲットは40代から50代ですが、30代のユーザーからも支持を得ているURBANOだけに、今回はスペックも譲りませんでした」(小林)。

URBANOのURBANOらしさには、細かいこだわりもある。小林はこう言う。「URBANOでは2世代目のURBANO BARONEで採用されて、その後のモデルでも多く採用されてきたグリーンがイメージカラーになっているようです。URBANO L03でも、色は少しずつ違っているのですが、グリーンは外せないカラーでした。また、キーを押すと光る演出もあります。フィーチャーフォンの頃には当たり前の機能でしたが、これも、スマートフォンになっても変わらない安心感を与えてくれると思います」。

auとHTCの共同開発により、オリジナルモデルの代表と印象付けられている「HTC J」シリーズについても、新製品を投入するというアナウンスが夏モデルの新製品発表会であった。「端末を購入したユーザーの多くは、2年契約の期間が過ぎるころに機種変更を考えられます。そのときに、気に入ったシリーズの後継機種が出ることが分かっていれば安心ですよね。HTC Jや、HTC J Butterflyが発売されてから2年前後になりますから、HTCファンのユーザーに大丈夫ですよというメッセージを届ける必要がありました」(小林)。

こだわりの製品を提供するということは、根強いファンが生まれることにつながる。そうしたファンの要望に応えられるような製品を継続して投入する。そんなところにも、auのこだわりが見え隠れする。

ホーム画面にも現れる"こだわり"の心

「auベーシックホーム」の画面イメージ

KDDIは、2014年 夏モデルから「auベーシックホーム」と呼ぶ新しい独自のホーム画面の提供を始めた。各機種の標準のホーム画面と異なり、シンプルな画面で使いやすさを提案する。

小林はauベーシックホーム導入の狙いをこう語る。「スマートフォンの経験のない人に向けたホーム画面です。ホーム画面には、使用頻度の高いアプリのアイコンだけを並べました。ホーム画面から、すぐにやりたいことができる。それが狙いです」。これだけを聞くと、よくある話にも感じる。

しかし、auのこだわりは、もう少し深いところに根差しているようだ。小林は続ける。「auベーシックホームは、簡単に使えるようにという目的に加えて、端末を変えたときにも迷わずに使えることや、他人に操作を教えるときの利便性を向上させることが狙いにあります。離れて暮らすご両親のスマートフォンをauベーシックホームに設定しておけば、ご両親が操作に迷ったときは自分のスマートフォンもauベーシックホームに切り替えて一緒に操作してみることで、電話でも操作を伝えることができますよね。スマートフォンの操作の仕方で、親子が喧嘩をしないで済むように――といった思いも込めています」。

わざと、ホーム画面を横にスワイプした2画面目にもアイコンを置き、横のスワイプができることを利用者に伝える。標準で表示されるアイコンは簡単には位置を変えられない設定になっていて、アイコンが動いてしまって戸惑うこともない。auベーシックホームにあるそんな心遣いも、auならではのこだわりなのだと感じる。夏モデルの新製品へのプリインストールから始まって、既存の端末への提供も始まっているので、 "親子喧嘩の撲滅"にも本当に役立つ日が来そうだ。

日本のスマートフォンを世界が追いかけ始めた

現在、海外市場におけるスマートフォンは、白と黒だけではない多彩なボディカラーや高い質感、デジタルカメラ並みの高性能なカメラ、NFC、防水対応を競う合うようになっている。お気付きのように、これらは、かつて「ガラパゴスケータイ」と揶揄されたこともある日本の携帯電話が生み出し、日本市場向けのスマートフォンが世界に先駆けて実現してきた機能だ。フィーチャーフォンの時代から、携帯電話を情報機器として使いこなし、加えてアクセサリーのようなデザインと質感を求めてきた日本のユーザー。小林の話から浮かび上がるように、日本のユーザーの厳しい目に応えるために、独自のこだわりをもって開発される日本市場向けのスマートフォンは、世界のスマートフォンの行方を占うポジションにあるのかもしれない。

※販売状況は地域によって異なる場合があります。

文:岩元直久

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