2014/05/27

中小企業の『本業』支援にクラウドソーシングを活用 KDDIとランサーズの提携の狙い

2014年2月、KDDIは、クラウドソーシングサイト「ランサーズ」と提携して、中小企業向けの支援サービスを提供することを発表した。なぜKDDIがクラウドソーシングを活用した中小企業支援に取り組むのか、その背景をKDDIでソリューション事業企画を担当する山崎雅人に聞いた。

「KDDIまとめてオフィス」で見えてきた、中小企業が本当に求めているサポート

ランサーズは、エンジニア、デザイナーから主婦、学生など32万人を超える会員に対して、オンラインで70種類を超える分野の仕事の受発注ができる「クラウドソーシングサービス」を提供する。2008年に国内初の専業事業者としてサービスを開始した業界の草分けだ。今回の提携のきっかけとなったのは、KDDIが中小企業向けサービスの中核として取り組んできた「KDDIまとめてオフィス」だ。

WEBサイト「KDDI×Lancers」

KDDIまとめてオフィスは、固定電話、携帯電話やインターネット接続などの通信サービスを軸に、パソコンやOA機器から、コピー機、LEDまで、オフィスで必要なものをKDDIが全部まとめてサポートするサービスだ。だが、営業担当者が中小企業の経営者と話をするうち、中小企業が「ITよりももっとサポートしてほしいこと」に気づいたという。

「これからの経営をどうすればいいのか、商品をどこで誰にどうやって売ればいいのか分からない、最新のITが分かる人材がいないといった、オフィスのITよりも本業をなんとかしたいというニーズがありました」と山崎は言う。ユーザーアンケートの結果も、中小企業の悩みは「スキル不足」「人材不足」「営業力不足」の3つが圧倒的に多かった。

そこでKDDIでは、お客さまのために、本業に貢献するための取り組みをスタートさせた。ランサーズとの提携は、その取り組みの一つである。

ITをフル活用した「クラウドソーシング」とITが苦手な中小企業のミスマッチを埋める

ランサーズとの提携は第一に、中小企業の「スキルが足りない」「人材がいない」という悩みへのソリューションと位置付けられる。「必要なスキルを持つ人材を自社採用できない、でも人材派遣会社を利用するのはコストの面から難しいというお客さまの悩みにこたえるには、スポット的な仕事とその仕事をできる人をコンパクトにマッチングできるクラウドソーシングの仕組みが一つの回答になると考えました。コストでも、人材派遣では一人当たり月額数十万円の費用が発生しますが、クラウドソーシングなら1案件当たり数千円から数万円程度で利用が可能です」(山崎)。

クラウドソーシングを利用する業務としては、IT系業務の支援のほか、ウェブサイト制作、名刺や販促ツールのデザインなどをまずは想定している。この領域で取引先を複数持つ中小企業はほとんどなく、印刷やデザインは付き合いがあるところにお任せで、値段も言い値というケースが多いのが実態だという。相場観も持っていないので、ランサーズでの受注価格を見て驚く経営者も多い。

とはいえ、「会員制サイトに登録することで、仕事をしたい人と仕事を頼みたい人をマッチングする」というクラウドソーシングの仕組みは、パソコンやインターネットに苦手意識がある中小企業の経営者や担当者にとっては、まだまだ敷居が高い。そこで、KDDIの営業担当者が顧客のニーズを聞いて、担当者が発注をサポートすることで、ランサーズのサイトで発注ができるようにして、クラウドソーシングの仕組みと一般的な中小企業の間のミスマッチを埋めていくことにした。

この方法はランサーズにもメリットがある。本来クラウドソーシングと親和性が高いが、ITが苦手でクラウドソーシングを使いこなせないため、リーチするのが難しかった中小企業にアプローチできるからだ。「ランサーズには営業担当者がいないので、お客さまに対する対面営業ができません。一方で、KDDIは、中小企業のお客さまに対して人が必ず接点を持っています。これを生かすことで、ITリテラシーの高低にかかわらず、クラウドソーシングを使えるようにできるのではないかと考えました。仕組みはまだよく分からないが、とりあえず会員登録してみようというお客さまもかなりの割合でいらっしゃいますので、一巡したら次は使い方を提案していく段階だと考えています」(山崎)。

中小企業同士をつないで下請け構造からの脱却と地域活性化を図る

ランサーズとの提携のもう一つの狙いは、「お客さまである中小企業同士をつなげる」場としてランサーズを活用することだ。ランサーズを利用して仕事を発注するだけでなく、自社を必要とする顧客を見つけるためのツールとしての活用を支援したいと、山崎はその意図を語る。

中小企業の多くは、新しい事業に取り組みたくても顧客をうまく探せなかったり、あるいは新しい案件にチャレンジしたくてもスキルのある人材が見つからなくてスタートできないという課題を抱えている。そこで、スピーディーに仕事の受発注を実現しているクラウドソーシングが成長していることに注目した。「クラウドソーシングをフルに活用しているITに精通している企業と、ITが苦手な企業とをマッチングする場が必要だと思いました」(山崎)。

地域を切り口に、同一地域の企業同士や、企業と個人の出会いをマッチングするWEBサイト「ランサーズプレイス」

そのための一つの取り組みが、KDDIとランサーズの共同事業として4月から始まった「ランサーズプレイス」だ。「地域」を切り口に、同一地域の企業同士や、企業と個人の出会いをマッチングする。従来のクラウドソーシングで扱われるのは、デザインやウェブサイト構築、イラスト、テキストなどのデジタルデータであり、仕事の依頼・発注・納品がネット上で解決していた。しかし、中小企業の大多数はデジタルデータではないモノやサービスを提供している。ネットで完結しないのであれば、顔を合わせられる距離でのマッチングが重要になる。そこで「地域」という切り口を用意した。ランサーズにとっても、ITを中心とした業務のマッチングから取り扱い範囲を広げられるという利点があった。

「地域」にこだわるのは、多くの中小企業が課題としている下請け構造からの脱却の鍵がそこにあると考えるからだ。中小企業は大企業の下請け・孫請けであることも多く、地域の企業や人との接点が少ないことも珍しくない。発注元企業の業績が悪化すると、それに引きずられて経営が苦しくなるが、新たな仕事を探しに行く時間がないのが現状だ。

「インターネットを使って海外に進出するよりは、顔が見える地元のお客さまとつながるところから始める方が現実的です。どんな仕事ができる人が地元にいるのかが簡単に分かれば、手軽に連絡できて、地域活性化にもつながります」と山崎。現在は地域ごとに仕事を受けられる企業や個人を探せる電話帳的な機能を提供しているが、将来はサイト上でランサーズと同様のマッチングサービスを提供する計画だ。

自らデザインコンテストを開催してクラウドソーシングの威力を実感

デザインコンテストで採用されたイラスト

デザインコンテストから制作した「KDDIまとめてオフィス」のパンフレット

業務提携を記念して、KDDIはランサーズで「公式デザインコンテスト」を開催した。KDDIまとめてオフィスの新しいパンフレット(A4両面)のデザインと、KDDIの企業サービスの説明資料に使用するイラスト素材デザインのコンペだ。クラウドソーシングを利用した業務の発注はKDDIにとっても初めての体験だった。

「実際に利用してみて、私たちも驚きました。通常頼んでいる会社のものと遜色ない品質のデザインがたくさん集まってきて、価格は安い。期間も1カ月程度かかっていたものが、2週間ですみました。スキルを持った中小企業や個人の方とつながることで良いものが得られることを実感しました」と山崎は喜びを語る。

応募はそれぞれのテーマごとに約50件、合計100件の作品が集まった。「普段KDDIに接している人たちではないので、先入観がない作品が集まりました。こんなに多様なイメージを持たれているということが分かったのがとても新鮮で刺激になりました」と山崎。色からして、KDDIといえば青、auはオレンジのイメージがあるが、そこから離れたイメージで、従来では考えられないようなデザインが寄せられた。

また、パンフレットのまとめ方や言葉遣いについても、「ユーザーの視点で書かれている」ことを感じたという。「サービスを利用する中小企業の立場からの、生活実感に即した言葉の選び方が見えました。KDDIにこう接してもらいたいという言葉や色が現れていて、我々にとっても勉強になりました」。

チラシもイラストも要望を出せば翌日までには修正対応がされる、やりとりのスピード感も初めての経験だった。「我々のお客さまも、こういう形で仕事を依頼したことがないので驚かれるでしょうし、可能性も感じていただけるだろうと思いました」と山崎は語る。

今後は、ランサーズプレイスを中心に、お客さま同士のマッチングを進めていく。そして"その先"のサポートも、お客さまの要望に応えて提供していきたいという。「スキル・人材・営業力の不足をクラウドソーシングで解決して仕事の幅を広げたお客さまが、次に何をしたくなるのかを見極め、そこを支援していきたい。どんなことでも、KDDIに頼めば何かやってくれるだろうと期待していただけるようにしたいと考えています」(山崎)。お客さまの近くにいてお客さまの声を聞き、そこから勉強して、新たなサービスを展開する。KDDIは、通信サービスやITの枠を超えて、中小企業をパートナーとして支える存在でありたいと願っている。

文:板垣朝子

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