2014/03/20

『なでしこ銘柄』に2年連続して選定 KDDIにおける女性活躍推進への取り組み

多様な人財を生かすダイバーシティ推進

KDDIは、積極的に女性活躍推進に取り組む上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に、2012年度に引き続き2年連続で選定された。なでしこ銘柄とは、女性活躍推進の促進・加速化を図るため、この課題に積極的に取り組む企業を、魅力ある銘柄として、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定・紹介する事業で、2012年度から実施されている。

KDDIは、2015年度に向けて女性管理職者数250名(女性管理職者比率7%)、女性ライン長(組織のリーダー職で人事評価の権限を持つ管理職)90名という具体的な数値目標を掲げ、スキルアップやキャリア形成を支援するさまざまなプログラムを実施しているほか、柔軟な働き方の実現に向けて、テレワーク勤務の導入や男性社員の育児参加を啓発するためのセミナーを開催するなど、仕事と育児の両立を積極的にサポートしている。これらの取り組みが評価され、昨年度に続いて2年連続で、なでしこ銘柄に選定された。

KDDIにおいて、女性活躍推進を担っている部署が、2008年に発足したダイバーシティ推進室である。「ダイバーシティ」とは「多様性」を表す言葉だが、企業活動においては、「多様な人財を生かした経営への取組み(ダイバーシティマネジメント)」の意味で使われるのが一般的だ。日本でも、経済産業省が「ダイバーシティ推進」を経済政策として掲げ、企業の積極的な取り組みが注目されている。特に少子高齢化が進む日本では、「女性の人財活用」は重要なテーマだ。KDDIでは、「すべての社員が働きがいをもち、活力ある企業であり続ける」ために、ダイバーシティ推進、特に女性活躍推進に注力してきた。

全社員に占める女性社員の比率が約2割という社内環境のKDDIでは、どのような取り組みをしているのだろうか。ダイバーシティ推進室の永島朋子室長に聞いた。

女性が活躍できる職場づくり

KDDI ダイバーシティ推進室の永島朋子室長

KDDIでは、2004年ごろから女性が働きやすい社内環境づくりに取り組んできた。育児介護休業制度の改定、在宅勤務トライアル運用の開始、経営層と女性管理職の意見交換など、女性が働きやすい職場づくりへのさまざまな取り組みが展開された。そして、それらの活動をプロジェクト化したのが、2007年に発足した社長直轄の女性活躍推進プロジェクト「Win-K(ウィンク)」だ。

Win-Kは、「個人の持てる力や個性を十分に発揮できる職場環境の実現」を目的としている。2009年には男性社員も加わり、全社員に向けた意識啓発や社員同士のネットワークづくりに力を入れてきた。

「私たち女性社員は、人数からみたらマイノリティなんです」と永島室長が言うように、もともと情報通信という業種は、女性従業員が少ないといわれている。「ですが、KDDIのコアビジネスである携帯電話のお客さまの半数は女性です。女性ならではの視点や感性が製品に生かされなければ、女性のお客さまのニーズに応えることはできないのではないでしょうか」。

KDDIには、社員が持つべき共通の考え方、行動規範を示した「KDDIフィロソフィ」がある。その第1章である「目指す姿」には、ダイバーシティが基本と記されている。社員一人ひとりが、自分の持つ個性や能力を生き生きと発揮できる環境づくりをしていくことが、企業の活力の源泉につながる。これがKDDIでの女性活躍推進の取り組みの原点だという。

「女性の活躍を推進していくためには、意識と制度の両面から環境を整えていく必要があります。制度を変えることができても、実際に働く社員一人ひとりの意識が変わらなければ、本当の働きやすさにはつながりません」と、永島室長。

当事者である女性社員に対しては、女性が活躍できる職場環境という受け皿づくりとともに、意識啓発、仕事と生活との両立支援、そして女性リーダーの育成を柱とした、より具体的なアプローチを行った。

「女性社員が少ないため、部署を越えて女性社員同士が交流するチャンスも少なく、どうしても女性社員の声が届きにくい環境となってしまいます。そこで、女性社員向けのフォーラムやロールモデルの紹介などを通して、女性社員同士のネットワーク構築や、互いに刺激し合える環境づくりをサポートしています」

出産・育児をはじめとするライフイベントの支援

男女を問わず、結婚、出産、育児、介護など数々のライフイベントがある中で、継続して働いていくには、仕事と家庭のバランスをうまくとっていかなければならない。KDDIの女性社員のうち、子どものいる社員は3割(約700人)、そのうち500人ほどが未就学児のいる、まさに子育て世代だ。出産や育児のために休職していた社員が安心して復職し、仕事と育児を両立するための支援がより重要となってくる。そこで活用されるのが、1カ月単位の変形労働制だ。2011年の導入以降、制度の利用者は、男性も含め、年々増え続けているそうだ。また、通信ネットワークを介してオフィスと同様な業務環境を実現できるシステムを導入して、自宅で仕事ができるテレワーク勤務制度も導入しており、社員一人ひとりが業務状況に応じて利用できる環境を整えている。

さらに、出産や育児休職を終えた社員が復職するにあたっては、復職者本人と受け入れ側の上司のそれぞれに向けて、復職前フォーラムも実施している。復職する社員が、休職中のブランクを埋め、少しでも安心して職場復帰を果たし、職場でパフォーマンスを上げられるようにというのが狙いだ。

出産・育児休職から復職する社員を対象に行ったフォーラムの様子

子ども連れで参加できるよう、当日は臨時で託児ルームを設置

「復職する社員には、事前に会社の現状やこれからについての情報共有を行います。また、どういう環境なら働きやすいのか、活躍できるのかといったことを共有していくことで、復職者と上司、お互いの立場への理解を深めています」

復職前フォーラムに参加した復職者からは、「先輩社員の話が復職の不安を払拭してくれた。同じ状況の社員との意見や情報の共有は有意義だった」「仕事に対する気持ちのあり方を見直せた」「上司の方々がどのように感じているかを知ることができて良かった」などの感想が寄せられている。また、上司の側からも「初めて復職者を迎えるにあたって不安に思っていたので役に立った」「復職者の気持ちがよく分かった」などの感想が寄せられたという。

女性リーダーの育成に向けて

女性の特性や能力が意思決定の場でも発揮されていくようにと、KDDIでは、女性のリーダー育成にも力を入れている。

「これまでの取り組みを通して、2008年には1.8%だったKDDIの女性管理職比率は、年々上昇し、2013年度には3.5%まで上がりましたが、厚生労働省の調査による日本企業における女性管理職比率11.9%から見れば、まだまだ低い数字です」と、永島室長は現状を打ち明ける。

2012年3月に行った社内アンケートで、社員が実際に携わる業務内容を性別・年齢層別に集計したところ、男性社員は年齢を重ねるにつれて着実にリーダー層へとキャリアアップを果たしているのに対し、女性は年齢に関わらず、上位者からの指示・判断を適宜得ながら実行する仕事に携わっている社員が圧倒的に多かった。この状況に対する具体的なアクションとしてスタートしたのが、女性ライン長登用プログラムなどの「女性リーダー育成プログラム」だ。

KDDIにおいて、組織の意思決定をできるのは、グループリーダーであるライン長以上となる。このプログラムでは、2015年度の女性ライン長の候補者を選抜して育成していく選抜型プログラムを展開している。

女性が活躍するためには、女性自身の意識改革が必要だといわれている。それではKDDIの女性社員は、自分のキャリアアップに対して、どのように考えているのだろうか。

女性若手社員と上司が一緒に学ぶペア研修の様子

2012年に実施されたアンケートでは、「KDDIにおける昇進・昇格についてどのように考えているか?」といった質問に対し、男性社員は半数以上がライン長以上のキャリアアップを考えているが、女性社員のうち、ライン長以上を志望するのは1割にとどまっているという結果が出た。このアンケートは2011年にも実施されているが、結果はほぼ同じだったという。この結果からは、社内環境や制度を整えても、社員の意識は男女ともになかなか変わっていかないとも見てとれる。しかし、この結果は、これまでの男性を中心とした社内環境、いや、日本の社会全体が作り出してきた意識の結果だといえる。それを変えていくには長い時間がかかることは言うまでもない。

永島室長は、「この登用プログラムは、まだ始まったばかりです。リーダー育成と合わせて、若手社員に向けてもロールモデルを提示し、フォーラムやセミナー開催を通して、キャリア育成への意識啓発をしています。今後も、2015年度に女性ライン長約90名の登用を目指し継続的に推進していきます」と、今後へ向けた抱負を語る。

女性リーダーが育成され、活躍していくことで、若い世代が自分の未来を重ね合わせるロールモデルとな得るに違いない。女性役員比率の高い企業のほうが経営指標が良く、ワーク・ライフ・バランスの環境整備に取り組む企業のほうが社員の生産性が高いという研究結果もある。また、既に述べたように、企業にとって顧客の半数は女性であり、女性の力なくして消費者の期待に応える企業であることは難しい。女性にとって働きがいのある職場づくりは、誰にでも働きやすいユニバーサルな職場となり、企業の競争力向上にもつながっていく。KDDIにおける女性活躍推進の取り組みは、KDDIのさらなる成長を目指して拡大を続けている。

文:大久保真理

presented by KDDI