2014/02/27

サンノゼ市『光アート』プロジェクトを動かすKDDIのビッグデータ技術

アートスペース「Zero1 Garage」の様子

アメリカ・カリフォルニア州サンノゼ市といえば、サンフランシスコと対をなすシリコンバレーの大都市。しかし、姉貴分のサンフランシスコと比べ、文化面では圧倒的に地味で、昼間はコンベンション・センターに人がたくさん集まっても、夜7時を過ぎれば皆ホテルの部屋でテレビを見るだけで、街は閑散としてしまう。

そのサンノゼ・コンベンション・センターの一本裏の通りに、「ZERO1 Garage」というアート・スペースがある。「アートとテクノロジーが出会う場」という非営利団体で、各種技術を使ったアートの展示やイベントなどを常時開催している。そのプログラムの一つである「フェローシップ」にKDDIが参加することになった。

コーポレートスポンサーの中で、唯一、挨拶を行った、KDDI研究所の土生由希子主任エンジニア

「フェローシップ」では、イベント一発ものでなく、やや長期にわたってスポンサー企業が特定アーティストのプロジェクトを金銭・技術両面で支援するという形をとる。フェローは4グループあり、アーティスト同士のマッチアップ・サービスや、アートを活用したスマートフォン・アプリなどがあり、グーグル、アドビなどもスポンサーとなっている。

その中でKDDIは今回、サンノゼ市と共同で、ベルギーのANTIVJスタジオが手掛ける「光アートの街探索」をテクノロジー・スポンサーとしてバックアップする。

2014年1月22日に開催されたお披露目イベントでは、街のあちこちに光アートが映し出されているコンセプト動画が展示され、ANTIVJのSimon Geilfus氏がプレゼンテーションを行った。フェロー各チームは、それぞれアーティストだけが登壇したが、KDDIは今回Zero1プロジェクト初参加ということもあり、KDDI研究所の土生由希子主任エンジニアが数あるコーポレートスポンサーの中で、唯一、挨拶を行った。

スマートフォンのアプリを起動し、建物にかざすと光アートが現れる

この企画のミソは、サンノゼ市が保有する行政データを「オープンデータ化」し、KDDIのデータ解析技術で加工し、それを使って「光アート」を動かそう、というコンセプトだ。詳細はこれから作るのだが、ダウンタウンのあちこちの建物に映し出される光アートを、スマートフォン・アプリを使って「宝探し」して歩く、というものになる予定だ。コンベンション・センターに来た観光客はもちろん、サンノゼ市民にも利用してもらうことで、街の新しい魅力や新しいお店との出会いの場を創出し、街の「閑散」を解消したい、というのが狙いだ。

このプロジェクトの仕掛け人で、KDDI研究所データ・マイニング応用グループの小野智弘グループリーダーによると、「リアルタイムの"人の動き"を把握できる公共データを使い、"今、この場所に人が集まっている"といった情報をもとに、KDDIの行動変容技術(人の行動を変えるきっかけを提供する)を応用してユーザーを誘導する、といった双方向性、リアルタイム性を盛り込みたい。つまり、プロジェクト参加者の状況をプロジェクションマッピングやスマホアプリで市民と広く共有するなど、市民にインセンティブを与えることで、市民の導線や生活パターンを変え、街を永続的に魅力化したい」と考えているそうだ。

自治体のオープンデータというと、例えば、消火栓やトイレの位置、消防出動回数などといった、地味で実用的なものが一般的だ。アメリカではサンフランシスコ市やニューヨーク市、日本では鯖江市や金沢市などの取り組みが知られている。サンノゼ市でもこうしたオープンデータはすでに実施されているが、今回新しく提供するデータもあり、特に期待されるのが交通や環境のセンサー・データだ。土生氏は「こうしたデータを、アートのエンジンとして使うのはこれまでにない新しい試みで、今回のプロジェクトに注目した動機」と語る。

サンノゼ市側の担当者、チーフ・インフォメーション・オフィサーのVijay Sammeta氏に見せてもらった環境センサーは7~8センチ四方ぐらいの大きさで、二酸化炭素、二酸化窒素、温度、湿度、騒音、光度などが測定でき、Wi-Fiで毎分1回データを飛ばす。現在、1週間に5個のペースで市内屋外あちこちに設置中だそうだ。交通センサーは、道路の下にすでに設置されており、車の速度や密度を計測して、信号のタイミング調整などの交通流量制御に使われている。いずれも、今回のプロジェクト目的ではなく、一般的な行政目的で集めているデータを応用する。

チームメンバーの皆さん

ZERO1 Garageは、会員がイベントに随時集まって交流するという「コミュニティ」でもある。今回のお披露目イベントでも、KDDIが挨拶をしたこともあり、自然に溶け込んで会話がはずんでいた。サンノゼ市のSammeta氏と、Jennifer Eastonシニア・プロジェクト・マネージャーが、口をそろえて「KDDIは大企業だが、チームメンバー個人はみんなとても考えが柔軟で、一緒に仕事していて楽しい」と笑顔で話してくれた。

シリコンバレーといえば、ベンチャーでお金儲けという面ばかりが強調されがちだが、実は「人と人のつながりで、公共目的のために一緒に汗を流す」という精神文化が底流にある。今回、KDDIが参加したきっかけも「人の紹介」であり、「人の縁を大切にし、コミュニティー貢献活動を通じてエコシステムに入る、というのがシリコンバレー流で、私たちもその流儀でいく」(土生氏)ということで、どうやらうまく滑り出しているようだ。

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