2014/01/24

auスマートパス開発の原点――スマートフォンをもっと楽しむための“入り口”を作る

2012年3月にサービスを開始してから、およそ2年が経過した「auスマートパス」。月額372円(税抜、以下同様)で数百本のアプリが取り放題になることに加えて、クーポンでお得な買い物ができたり、クラウド上のストレージを利用できたりと、特典が目白押しだ。そんなauスマートパスは、どのような思いを込めて作られ、どのように運用されているのだろうか。auスマートパスの裏側を探ってみた。

話を聞いたのは、KDDIでauスマートパスを担当する天野 圭。「auスマートパスは2013年9月に800万加入を突破し、その後も順調に加入を増やしています。多くの人に活用してもらっているauスマートパスを作る最初のきっかけは、スマートフォンをもっと楽しんでもらいたいという思いでした」と語る。


誰もが安心して楽しめる“浅瀬”をインターネットに作る

スマートフォンをもっと楽しむとは、どういうことだろうか。それはフィーチャーフォンからスマートフォンに変わって、コンテンツの楽しみ方が大きく様変わりしたことに起因する。「フィーチャーフォン時代は、コンテンツを提供する場を通信事業者がお膳立てする“ゲートウェイモデル”を採用していました。しかしスマートフォン時代には、ユーザーはいきなりインターネットの大海原に投げ出されることになります。せっかくたくさんのアプリがあっても、選択の難しさやセキュリティリスクから、ユーザーはアプリをなかなか使ってくれません。この状態はユーザーに対して通信事業者として無責任ではないか? と考えたのです」と天野は当時を振り返る。

アプリがあってもユーザーは使わない。アプリを作ったコンテンツプロバイダーも、クレジット決済などのハードルを越えられず売上が伸びないという状況。それではスマートフォンの普及の先行きは不透明になってしまう。

それならば、オープンインターネットの大海原に、初心者でも楽しめる“浅瀬”のようなサービスを作ったらいいのではないか。スマートフォンでできる楽しいことが、こんなにあるということを手軽に体験してもらいたい。そしてスマートフォンやインターネットを使いこなせるユーザーになってほしい。そんな思いから、他社にない圧倒的なサービスを作ろうとして生まれたのがauスマートパスだと言うのだ。

厳選したアプリはセキュリティと品質も審査

最初の企画段階からauスマートパスを担当する天野 圭

auスマートパスは、月額372円で提供するインターネットの安全な“浅瀬”で、当初から「アプリ取り放題」「クーポン」「50GBのデータお預かり(オンラインストレージ)」という3つのサービスが提供された。そしてオープンから2年近くが経った今、サービスは一層の充実を見せている。

当初から目玉だったアプリ取り放題について、天野は「アプリを手軽に安心して使ってもらえるように始めたサービスで、今では800~900のコンテンツが並びます。auスマートパスには、月に2回の入れ替えをして厳選されたアプリが掲載されています。定番アプリだけでなく、スマートフォンの新たな利用方法を提案するアプリもありますよ」と語る。

新しく入れるアプリ候補には、Google Playなどでの人気アプリ、海外の人気アプリ、開発者からのオープンエントリーに加え、KDDIが実施しているインキュベーションプログラムの「KDDI ∞Labo」で生み出されたアプリも含まれる。セキュリティと品質を審査したアプリを厳選して提供することで、ユーザーは安心してアプリの楽しさを体験できる。auスマートパスでアプリの使い方に慣れたら、Google Playなど大海へ漕ぎ出していってもらえばいいとの考えだ。

コンテンツプロバイダーに対してもメリットのあるビジネスモデルを作った。サービス開始当初から会員数数百万人を前提とした予算を組み、コンテンツプロバイダーに利益分配するというものだ。会員が少ないときから、auスマートパス内で人気アプリになれば一定の売上が立つビジネスモデルで、コンテンツプロバイダーを後押しした。「3日間でそれまでの1カ月分のダウンロードがあったコンテンツプロバイダーもあったそうです」と天野は述懐する。

おトクなだけでなく会員限定の特別な体験を提供

2013年12月に期間限定で提供した「auスマートパス会員限定クーポン」

一方、会員限定のクーポンは、アプリを使わない人にもメリットを感じてもらうためのサービスとの位置づけだ。「1つはプレミアムな体験で、特別価格で海外ツアーやレストランのディナーなどを提供します。もう1つは“日々のお得”で、コンビニのスイーツやおにぎり、カフェのドリンクなどが無料でもらえたり、優待価格で購入できることから、372円の月額料金の元を取ってもらえます」(天野)。

しかし、提供するのは金銭的なメリットだけではない。ほかではできない体験を得られるようにすることで、auスマートパスの価値を高めようという戦略だ。天野は、「例えばぴあと共同で、ライブチケットの先行販売やアーティストのバックステージ招待などをメニューに採り入れています。楽屋でお気に入りのアーティストと一緒に写真を撮った人には、auスマートパスが特別なものになり、満足度が上がるでしょう」と説明する。確かに、ユーザーがauスマートパス会員で良かった! と思える瞬間になりそうだ。

スマホ向けエンターテインメントサイト「up!(アップ)」。「auスマートパス」会員向けにさまざまなイベント、特典プレゼントなどを提供している

安心セキュリティ対策アプリ「ウイルスバスター(TM)for au 。あなたのスマートフォンをしっかり守ってくれる

オンラインストレージもとても利用価値の高いサービスだ。「あまり目立っていないかもしれませんが、50GBもの大容量ストレージが利用できます。写真や動画、メールなどを保存しておけば、もしものときに“良かった”と思ってもらえると思います」(天野)。

もう1つ、セキュリティ対策もauスマートパスが提供するサービスとして価値があるものだ。Android端末向けには、単体だと月額約250円の「ウイルスバスターfor au」が含まれているので、それだけでも月額372円の半分以上を回収できる。iPhone/iPad向けにはauスマートパス会員限定で、修理代金のサポートが受けられる。最大1万4858円のサポートで、これはアップルが提供する有料の「Apple Care+」に加入していれば、実質0円で2回、修理を受けられる金額に設定されている。「これがあるからauスマートパスに入るというユーザーも多いです」(天野)。

タイムライン表示でピックアップした情報を

auスマートパスの試みはコンテンツそのものにとどまらない。その特別な価値を伝える手段として、タイムラインUIを採用したトップ画面を導入したこともチャレンジの1つだ。

「372円分の価値をユーザーに探してもらうのではなく、キュレーションして情報を提供することで、ユーザーとの接点を作ろうと考えました。タイムラインUIは、SNSなどで馴染みが深く、その時に不要な情報ならばさっと読み流せます。フェイスブックやツイッターのページを見るように、暇なときにながめてもらえるようなホーム画面を目指しました」(天野)

タイムラインUIでは、あくまでもコンテンツが主役。華やかなデザインではなく、モノクロのシンプルなデザインでコンテンツを引き立てている。キャラクターも親近感を感じさせるデザインを採用し、肌身離さないスマートフォンを一層身近なものに感じてもらおうという戦略だ。

タイムラインUIで流れていくコンテンツは、KDDIできちんと編成した情報だという。天野は、「24時間態勢で、10人以上の部隊がコンテンツを編成しています。キャッチコピーを熟慮するだけでなく、興味を持ってくれた人がリンク先のコンテンツを読み物として楽しんでもらえるような方向を目指しています。例えば商品の紹介であっても“あれを買って、これを買って”ではなく、商品のこだわりを伝えるような読み物としてのリンク先ページを用意するようにしています」と説明する。

実際によく読まれているのは、「ニュース」「芸能人などの話題」「クーポンなどのお得な情報」といった順番だという。タイムラインUIで流れるコンテンツには、auスマートパス会員ならではの特典があるサービスを紹介するものもある。会員が無料で一部の作品を楽しめる「ビデオパス」「ブックパス」や、会員なら送料無料になる「auおまかせショッピング」などだ。タイムラインUIを通じて、新しいスマートフォン体験の入り口を提供しているのだ。

タイムラインでは、今後さらにおもしろいことが起こりそうだ。「履歴に応じて、興味のある分野のコンテンツが多めに表示されるような、新しいユーザーインタフェースの提供も検討しています。スポーツ好きの人には、スポーツニュースなどを多めに表示するようなカスタマイズです。また、コミックを読む人に最新刊の案内をしたり、アプリを楽しむ人には人気最新ゲームをお知らせしたりと、ユーザの利用に応じた、プッシュ型の情報提供も考えています」(天野)。

月額372円払っているauスマートパス会員は、アプリの取り放題だけで満足していたらもったいない。会員ならではのさまざまな気付きと特典が得られるauスマートパスを使いこなせば、スマートフォンの利用価値がさらに広がっていくだろう。

※表示金額は特に記載のある場合を除き全て税抜です。

文:岩元直久

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