2013/12/03

街と情報の調和を目指して 岡山市でバスロケーションシステムと連動したO2Oサービスの実証実験を開始

2013年10月30日、KDDIと両備ホールディングスは、岡山市内でバスロケーションシステム、デジタルサイネージ、スマートフォンおよびタブレットを連動させたO2Oサービスの実証実験を開始することを発表した。

本実証実験では、参加店舗・団体がタブレット端末からSNSに投稿する要領で、写真とともに簡単・リアルタイムに入稿する情報をKDDIが提供するバス車内に設置したデジタルサイネージと、連動するスマートフォンアプリ「まゆせチャンネル」に情報配信する。

目指すのは「生活に本当に役立つICT」

同日岡山市内で開催された記者発表会に登壇した、両備ホールディングス CEO 小嶋光信氏(左)と、KDDI 執行役員ソリューション事業本部長 東海林 崇

システムの全体像と役割

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左・スマートフォンアプリに、デジタルサイネージに表示されているクーポン情報が表示される。右・店頭でクーポン利用時に画面を下にスワイプして「もぎる」ことで、クーポンが利用されたことが記録される

この実験を通してKDDIが目指すのは、「街と情報の調和」により「生活に本当に役立つICT」を提供することである。KDDI執行役員ソリューション事業本部長 東海林崇は「従来の交通広告のポスターや看板の延長だったデジタルサイネージに、画像圧縮技術やモバイルブロードバンド技術を活用することでリアルタイム情報を提供し、新しい街づくりや地域活性化モデルを岡山から世界に発信していく」と述べた。

従来型のデジタルサイネージは、ディスプレイに事前に作られた画像や映像を表示するだけで、見る人にとっては中吊り広告とあまり変わらなかった。また、街中でさまざまな店舗が発行しているクーポンは大量で、本当にユーザーに役立つものが分かりやすく提供され、利用されているとは言い難い状況だった。

今回の実証実験では、店舗がタブレットから入稿する情報をほぼリアルタイムにバス内に設置したデジタルサイネージとスマートフォンに表示する。そのため、「雨が降ってきたから雨の日クーポンを発行」「タイムセールの時間に合わせてサイネージに情報を表示」など、提供する側にとっても利用する側にとっても使いやすく役立つタイミングで情報を表示できる。

クーポンを利用するには、アプリ上でクーポンを保存し、店頭で提示して「もぎる」動作をする。これによりクーポンを利用した場所と時刻の情報が得られるため、店舗は発行したクーポンが「いつ」「どれだけ」利用されたかを定量的に把握できる。

リアルタイムにバスロケーションサービス、デジタルサイネージ、スマートフォンおよびタブレットを連動させるサービスは国内初となる。両備ホールディングスのグループ会社であるリオスが2000年から運用しているバスロケーションサービスにKDDIのネットワークが利用されていたことに加え、両備ホールディングスは、バスという公共交通機関に加えてスーパーマーケットや百貨店、飲食店など、生活に密着した事業をグループ内で複数展開しており、KDDIの「街と情報の融和」という課題への挑戦に最適なパートナーだったことが、今回の実証実験につながった。

参加者の見込みは2万人 街の回遊性を高める

サイネージが設置されたバス車内の様子。左の列はバスロケーションシステムによる交通情報、右の列には参加店舗などから提供される地域情報を表示する

表示される情報画面のイメージ

店舗からのクーポン登録は、iPadのアプリで行う。写真を撮影してそのままSNSでシェアする感覚でクーポンを作成・送信できる

実施路線は岡山駅から西大寺線(13.7km・所要時間約30分、1日運行本数約200本、1日乗車客数5000人)。実施期間は2013年11月15日から2014年5月31日まで。実験参加者は2万人を見込んでいる。

31両のバスに13インチサイズのデジタルサイネージを1両あたり最大5台程度設置し、バスロケーションシステムによる到着予想時刻などの運行状況案内と地域情報を表示する。表示される地域情報は、1枠15秒程度。実証実験参加店舗がタブレット端末から入稿するおすすめ情報や割引クーポン情報のほか、岡山市役所、岡山県警などの公共機関も情報提供する。バックボーンネットワークにはWiMAXを使用する。

スマートフォンアプリでは2013年春から両備グループの「バーチャル社員」として活躍する七瀬院まゆせが情報を発信する。バスロケーションサービスによるバス運行情報と、「お得情報」として参加店舗が提供するクーポン情報が表示され、バスのサイネージに表示されているクーポンをスマートフォンアプリで表示する機能もある。アプリはまゆせチャンネルで2013年11月15日以降ダウンロードできるようになる。auだけでなく他事業者のスマートフォンでも利用できる。

スマートフォンと連動したO2Oサービスで問題となるのが、来街者のスマートフォンに専用アプリをインストールしてもらうための導線作り。今回の実証実験では、バス車内のサイネージが情報配信を行うと同時にスマートフォンアプリを訴求するメディアとしても機能する。地域密着型の情報を日常的に利用する路線バスの中で告知するところから始め、将来は店頭にもデジタルサイネージを設置して活用する。

両備ホールディングス CEO 小嶋光信氏は、「まもなく大型商業施設ができる岡山駅前と伝統ある表町商店街に回遊性をもたせるためには、お客さまが移動しながらいかに情報を持つかが大事。情報がないと人は動かない」と述べた。グループの目指す「歩いて楽しいまちづくり」実現に向け、移動中の生活者に情報をタイムリーに提供することで回遊性を高め、街の活性化を目指す。

利用者の要望に応じて精密な位置情報の活用も検討

デジタルサイネージやアプリを使ったリアルタイムマーケティングとはいえ、精緻な位置情報やターゲット属性による提供情報の出し分けといった複雑な処理はあえて行わず、時間帯と路線だけをターゲットにした。あまり複雑にし過ぎると、情報を提供する側の店舗にとって敷居が高くなってしまうため、できるだけシンプルな仕組みから始めることにした。利用者の要望があれば、バスロケーションシステムと連動したバスの現在位置による情報の出し分けなども検討していく。

位置情報については、2014年1月を目標に、周辺の電波強度をデータベース化しておくことで、電波強度のみから位置を導出可能な電波照合測位技術の検証を開始するなど、O2Oへの位置情報活用についても実験を行う意向だ。KDDIは、リアルタイムに情報が取得できるO2Oサービスの提供を通して街づくりや地域活性化をサポートするとともに、さまざまな実験を通して将来の商用化に向けたモデルケースを目指す。

文:板垣朝子

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