2012/12/27

ユーザーのウォンツに応えて 2012年度内に全国の地下鉄をほぼ100%LTE化

最近、地下鉄で携帯電話がつながる場所が増えていることをご存じだろうか? すでに地下鉄の全駅が「圏内」になっていることに加え、2011年末からは駅間のトンネル内のエリア拡張も進んでいる。

KDDIは、2012年9月21日からiPhone 5向けに、11月2日からAndroid向けに「au 4G LTE」を提供開始した。実は、そのサービス開始と同時に、地下鉄の駅構内や駅間の多くの場所もLTEに対応させている。KDDIが、地下鉄のLTE化に迅速に取り組む理由について、コンシューマー事業本部 次世代ビジネス戦略部 LTE推進グループリーダー 課長の佐々木秀則氏と、建設本部 auエリア統括部 計画推進グループ 課長補佐の桑山直樹氏に話を聞いた。

高速通信を利用したい場所は、地下鉄が2位

KDDI次世代ビジネス戦略部の佐々木グループリーダー。LTE推進施策において統括役を務める

「当社は『エリアの広がり』『電波のつながり』『auのこだわり』に重点を置き、ネットワーク構築を進めています。屋外のオープンエリアでもLTEの開始と同時に、広いエリアをカバーしましたが、地下鉄においても同様に、サービス開始に間に合わせるべく準備を進めてきました。当社が行ったユーザー調査では、高速通信を利用したい場所として、自宅の次に、地下鉄を挙げる人が多く、重要性を感じていました」(佐々木氏)

全国には40路線の地下鉄があり、700以上の駅があるという。KDDIは、すでに3Gのエリア化が完了している地下鉄の駅については約9割のLTE化を完了しており、2013年3月までには関東、北海道、東北、福岡が100%、名古屋が98%、関西が96%、全国でみると99%と、ほぼ100%LTE化を実現する見通し。駅間は、すでにエリア化されている路線・区間については、2013年3月までにLTEに対応させ、今後、エリア化される路線・区間は、最初から3G・LTEのどちらにも対応させる計画だという。また、地下区間のある私鉄やモノレール、大規模な地下街においても、一部を除き、2013年3月を目途にLTE化を実施すべく、対策を進めている。

地下鉄のエリア化はKDDIだけが行っているわけではない。地下鉄構内はオープンエリアとは異なり、無線機を設置できる場所や工事を行える時間帯などに制約がある。このため、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4事業者が共同で対策を進めている。

LTE化を見越した準備が奏功、早期LTE対策に成功

「駅間のエリア化について4事業者で協議を始めたのは2010年頃。具体的に動き出したのは2011年からで、今年は急速にエリア拡張が進み、ようやく実りの秋を迎えたという状況です。4事業者が共同で工事を行い、同じ設備を利用するので、エリア化が実現するのは4事業者同時です。ただし、どのタイミングでLTEに対応させるかは事業者の判断によって異なります。LTEサービスの開始と同時に地下鉄でも使えるようにしたのは当社だけですし、現時点でも、圧倒的に当社のLTE対策が先行していると認識しています」(桑山氏)

KDDI auエリア統括部の桑山課長補佐。地下鉄を含めた屋内のエリア構築を担当する

地下鉄では、オープンエリアとは異なる、地下専用のエリア構築が行われている。ベースとなる基地局を設営し、駅構内では天井などに4事業者共同の屋内アンテナを設置、トンネル内には電波を受発信する漏洩同軸ケーブルを壁面に這わせている。

「漏洩同軸ケーブル全体がアンテナの役目を果たすので、つなぎ目がなく、走行中でも安定して通信できる仕組みになっています」(桑山氏)

KDDIでは、iPhone 5向けには2GHz帯、Android向けには800MHz帯と1.5GHz帯を用いてLTEサービスを提供している。地下鉄においてもほぼ同様で、iPhone 5向けには2GHz帯、Android向けには800MHz帯が使われている。

「地下鉄に設置している事業者共同設備は、あらかじめ3GでもLTEでも利用できるようになっています。ですので、3G対応済みの駅や区間では、ベースとなる事業者設備をLTEに対応させるだけで、駅構内に張り巡らせたアンテナ設備に対する新たな工事は必要ありません。LTE導入を見越して準備を始めたことが、早期のLTE化につながりました」(桑山氏)

人口カバー率より、ユーザーのニーズに沿ってエリア構築

携帯電話のサービスエリアの広さを表す指標として、人口カバー率が用いられることが多い。その算出方法は事業者によって異なるが、KDDIでは、全国の土地を500m四方のメッシュ状に区切り、エリア化したメッシュの人口を計上し、実人口カバー率を算出している。

「地下は、そもそも人が住んでいない場所でもありますし、地下鉄のエリア化状況は実人口カバー率には反映されません。しかし、地下鉄は大都市の中心部にあり、生活導線として非常に重要なものです。そうした場所でも、お客様に快適にご利用いただけるようにすることが、われわれの使命と考えています」(佐々木氏)

KDDIの田中孝司社長は、LTEネットワーク構築の施策として「利用者が多い場所から面でカバーしていく」方針を明らかにしている。 「地上でLTEがつながる場所では、地下に入ってもLTE、地下での移動中もLTEにつながる。そういう環境を作りたいと思っています。それが『auのこだわり』でもあります」(佐々木氏)

全国地下鉄LTE化において中心的に動く両人。打ち合わせと工事遂行でタイトな日々だという

スマートフォンでは、従来型の携帯電話以上にインターネットの利用が多くなる傾向がある。通勤・通学時にスマートフォンで、ウェブを見たり、メールをチェックしたりする人は少なくないだろう。地下鉄の駅間のエリア化により、メールを送るために途中駅で一旦下車するといった不便はなくなる。高速通信のLTEに対応した駅間では、ウェブ閲覧はもちろん、動画の視聴やアプリのダウンロードも快適に行えるはずだ。

「これからはタブレットも増えてきます。大画面のタブレットで快適にウェブを見るにはLTEの速度が必要だと思います。地下鉄でつながることが当たり前になり、速い速度にも慣れてきたら、逆につながらないことを不満に感じるようになってくるはず。お客様のニーズは、どんどん快適なほうにシフトしていきますし、その期待に応えていかなくてはならないと感じています」(桑山氏)

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