2014/05/15
| 更新
2020/09/14
『Bluetooth』ってなに? Wi-Fiとの違いは? 接続方法や便利な使い方を徹底解説
無線通信技術「Bluetooth®(ブルートゥース)」。スマホやPCなど、店頭に並べられる多くのデジタル機器に内蔵された機能だ。気づかないうちに使っている人もいるだろう。
本記事では、そのBluetoothの仕組みやメリット、接続方法から便利な使い方を解説。使ったことがないという人も、その便利さをぜひ感じ取ってみてほしい。
そもそもBluetoothってなに?
さて、まずは「Bluetoothとはなにか」から説明しよう。
Bluetoothとは、無線通信の規格のひとつだ。対応した機器同士は、ケーブルなどを接続しなくてもデータをやり取りできる。有効範囲はおよそ10m以内。国際標準規格のため、対応機器なら各国のどんなメーカー同士でも接続可能だ。
「いまいちピンとこない……」という人は、事例を聞くとわかりやすいかもしれない。たとえば「Bluetoothイヤホン」を想像してみてほしい。
これまでのイヤホンは、ケーブルの先端をスマホやPCに挿入する仕組みだった。しかし、Bluetooth対応のイヤホンをスマホとつなぐならケーブルは不要だ。スマホからイヤホンへとワイヤレスで音楽データを送信するため、Bluetoothイヤホンは耳栓のように独立した形状でも成り立つようになった。
AppleもiPhone 7以降、イヤホンジャックを廃止。Bluetoothイヤホンの需要はますます高まっている。
Wi-Fiとの違い、Bluetoothのメリットは?
では、BluetoothとWi-Fiはいったいどう違うのか?
まずはお馴染みのWi-Fiだが、こちらは複数の機器を同時接続させることに長けている。インターネットにつながるハブのような役割としてつくられているのだ。通信速度も非常に速く、大量のデータ通信が得意。ただし、そのぶん消費電力が大きいため、コンセントから電力供給できるルーターのような据え置き型の機器に採用されている。
一方のBluetoothは、1対1での通信を想定してつくられた技術。通信速度・通信距離ともにWi-Fiと比べて弱いが消費電力が少なく、キーボードやマウスといった長時間使用する機器に導入できるのがメリットだ。これらの機器は一度に通信するデータ量も小さいため、データの遅延は起こりにくい。
Bluetoothの使い方は?ふたつの機器を接続する「ペアリング」
そんな便利なBluetoothの使い方はシンプルだ。最初に機器同士を認識させる「ペアリング」を行う。やり方は簡単で、まずは受信側(スマホやPC)のBluetooth設定をオンにする。iPhoneなら、コントロールセンターからワンタップでできる。
次に、送信側(イヤホンなど)のBluetoothマークを押す(ものによっては不要な場合もある)。続いて、iPhoneの「設定」アプリから[Bluetooth]をタップすると、受信側の画面上に接続可能な機器が一覧されるので、あとは対象を選択するだけ。
一度ペアリングしたデバイスは、電源を再度オンにしても自動的にスマホへと接続するため、毎日でもストレスなく利用できる。
ちなみに、1対1を想定した通信技術という解説をしたが、Bluetoothも年々進化しており、最近では1台のBluetooth機器(イヤホンやスピーカーなど)に複数の機器(パソコン、スマホ、タブレットなど)の設定情報を登録=接続できる「マルチペアリング」機能が搭載されている製品もある。ひとつのイヤホンをPCやスマホなどいろんな機器に接続して使いたいひとは、マルチペアリング機能のあるBluetoothイヤホンを選択しよう。
Bluetoothがより便利になる「方向探知機能」
方向探知機能は、2019年1月にアップデートされた「Bluetooth 5.1」から搭載されている。この機能では、Bluetooth機器のアンテナから発信されるシグナルによって送信角度や受信角度を割り出し、ペアリングされているBluetooth機器がどの方向にあるのかを教えてくれる。
以前のBluetoothバージョンでも、電波の強さから機器が遠くにあるのか近くにあるのかだけはメートル単位で知ることはできたが、Bluetooth 5.1以降は、機器がどの方向に置いてあるのかまでセンチメートル単位で割り出せるようになった。
この機能を活用することで、家の中のどこかに置いたイヤホンもすぐ見つかるようになる。また、財布やカギなどにBluetoothタグを付けておけば、紛失してもすぐに見つけられるようになるだろう。
Bluetoothの使い道は? イヤホン、マウス、テザリングなど幅広く導入
では、実際にBluetoothはどんな場面で活躍するのだろう。代表的な実用例を紹介したい。
・イヤホン
冒頭でも触れたが、人気なのが「Bluetoothイヤホン」だ。ワイヤレスなので、ポケットやバッグの中で絡まって解けなくなったり、電車内でほかの乗客に引っ掛けてしまったりすることもない。防水やはずれにくいタイプも存在し、ランニングやスポーツジムでの使用にも重宝する。
・スピーカー
音楽分野では、スピーカーとBluetoothの相性もいい。有線のスピーカーでは置き場所に制限があるが、ワイヤレスなら部屋の好きな場所に配置できる。音質にこだわった大型タイプから持ち運びに適した小型タイプまで、商品のバリエーションも豊富だ。ベッドサイドに設置して就寝前に曲を流すなど、用途に応じて最適なアイテムを選びたい。
・キーボード、マウス
Bluetooth対応のワイヤレスキーボード、マウスなど、PC周辺機器も数多く存在する。ただでさえコード類のかさむPC周りは、なるべくワイヤレス化してスッキリさせたい。また、スマホやタブレット向けにつくられたコンパクト設計のキーボードもおすすめだ。打鍵感に優れたもの、ケースと一体型のものなど機能性も年々高まっている。
・テザリング
最近のスマホなら標準搭載されている「テザリング」。スマホをルーター代わりにして、PCやタブレットなどの端末をモバイルネットワークへと接続させる機能だが、実はWi-Fiだけでなく、Bluetoothでも接続できる。ただしWi-Fiに比べて通信速度が遅いため、大きなデータを扱う場合にはあまり実用的でない。
・beacon(ビーコン)
beaconとは、小売店を中心に広まっているBluetoothの発信機のこと。店舗にbeaconを設置し、近くの通行人のスマホへとクーポンやセール情報を送信するなど、さまざまな用途に使われている。
そのほか、Appleが展開する腕時計型ウェアラブル端末「Apple Watch」、セルフィー撮影に使われる「自撮り棒」などにもBluetooth技術が搭載されている。
Bluetoothの通信距離はどれくらい?
Bluetoothには「Class」という概念がある。同じBluetooth製品であっても、認定されるClass次第で電波の強度が違うのだ。つまり、通信可能な距離も変わる。
Bluetooth製品を買ってから「電波が届かなかった……」とならないように、購入前にあらかじめ必要なClassを確認しておこう。Classは1〜3の3種類ある。
製品選びの際に注意したいのは、Class1の機器だからといって、必ずしも最大通信距離の400m以上に届くわけではないということ。たとえば、通信距離20mのイヤホンや、50mのマイクもClass1に分類されている。つまり、最大出力が「Class2以上であり100mW以内」なら、すべて等しくClass1に分類されるということだ。
このように同じClassの製品だとしても、通信距離にはばらつきがある。もし距離を重視したい場合は、製品ごとの最大出力をチェックしよう。
また、使用する国や地域によっても、出力可能な電波の強度は異なる。日本の電波法では50mWほどが上限だが、海外ではその限りではない。そのほか、受信側のアンテナやパワーアンプの性能次第でも距離は増減するため、一概に測れないことは頭に入れておこう。
そもそも「Bluetooth」という名前は、ノルウェーとデンマークを統合した王の名前に由来している。そこに込められているのは、「乱立する無線通信規格を統合したい」という願いだ。今後はさらに通信速度・通信距離の向上が予想されるBluetooth。名前の通りの世の中が来る日も近いかもしれない。
文:佐藤宇紘