2015/10/22

街全体を省エネする『スマートシティ』と、『ICTにできること』

「温室効果ガスの削減」や、石油などの資源の減少・枯渇を回避するための「省エネルギーへの取り組み」は、地球規模で解決すべき喫緊の課題だ。

この問題に対し、これまで、各家庭やオフィスビル、工場などが、ソーラーパネルを設置することなどによって、個別に発電、蓄電することによる個別の省エネルギー化が進められてきた。しかし、先端技術を活用し、街全体で連携して取り組むことができれば、さらなる効率的な運用が可能になる。また、災害に強い街をつくることにもなる。

こうしたエネルギー消費を抑える仕組みを備えた環境配慮型都市のことを「スマートシティ」と呼び、現在、スマートシティを掲げた街づくり・都市再開発は世界各地で進められている。

欧米でスマートシティ実現へ向けた動きが始まったのは、2009〜2010年ごろで、日本でも東日本大震災に伴う原発事故や電力不足を契機に構想が打ち出されるようになった。

現在、神奈川県横浜市、愛知県豊田市などで実証事業が行われており、太陽光・風力・バイオマス発電など再生可能エネルギーによる「エネルギーの地産地消」、電気自動車や燃料電池車向けの充電・水素ステーション設置などが計画に盛り込まれている。

ほかにも「けいはんな学研都市(京都府京田辺市・木津川市・精華町)」、北九州市で、経済産業省主導の実証事業を実施。三井不動産も、千葉県柏市で「柏の葉スマートシティ」の開発を行っている。

それらのシステムに不可欠なのがICT(情報通信技術)である。

柏の葉スマートシティの一般家庭に設置されたHEMS画面(画像提供:三井不動産)

スマートシティ×ICT?

スマートシティは、再生可能エネルギーによって電気を「つくる」と同時に、効率的に「使う」仕組みを備えている。こうしたエネルギー消費の効率化は、コンピュータを用いたシステム「EMS(Energy Management System)」によって行われる。

一般家庭向けEMSは「HEMS(ヘムス)」、オフィスビル向けは「BEMS(ベムス)」、工場向けは「FEMS(フェムス)」と呼ばれる。そしてスマートシティの要となるのが、地域のエネルギー管理を担う「CEMS(セムス)」だ。これらのシステムの連携に不可欠なのが"通信"の力というわけだ。

各EMSの連携によって、エネルギー消費の少ない時間帯に蓄電し、電力需要のある時間帯にはスマートシティ全体でその電気を共有する、といったことも可能だ。これによって、各家庭・企業の活動に滞りを起こさず、効率的なエネルギーの使い方ができる。

スマートシティではほかにも、電気自動車が普及するためのインフラや、デジタルサイネージ、高齢者への生活サービスの充実にいたるまでが取り組みの一環となる。最先端のICT技術を活用することによって、何かを「我慢」することなく、むしろ生活の質を高めながら、エネルギーの効率的利用が可能になるというわけだ。

なお、日本の首都・東京も2020年に向けたスマートシティ化を検討しており、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)地区など、都心部の再開発を契機とした導入を目指している。そのときには、スマートシティとなった東京で、環境に優しく快適な"おもてなし"を世界の人に披露できるかもしれない。

文:藤麻 迪

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