2014/06/25

「じっくり見て、触って」――デザイン・ディレクター小牟田氏が語る、au夏モデル2014の魅力とこだわり

今年も、auから待望の夏モデルが発表された。今夏のラインアップは定番のXperia™やisaiをはじめ、おなじみのURBANOなど全8シリーズ。それらの横断的なデザインディレクションを担当したのが、Kom&Co.Design代表の小牟田啓博氏だ。これまでも「INFOBAR」など、革新的デザインをモバイル業界に送り出してきた小牟田氏に、携帯電話のデザインに懸ける思いと、今年の夏モデルへのこだわりを聞いた。

――これまでも数々のプロジェクトに携わってこられた小牟田さんですが、こと"プロダクトデザイン"を手掛ける上で心掛けていることは何ですか?

「プロダクト=人が使うもの」だからこそ、「みんなが使いやすいものになっているかどうか」を常に意識しています。プロダクトデザインにおいては、自分が良いと感じるものをつくるのではなく、誰のためにこの製品をつくっているのか、ということを考えなければなりません。では、「みんなにとって使いやすいかどうか」はどのように判断するのか? そこでまず参考になるのが、多くの人たちからの客観的な意見です。例えば、色を決めるときにも、数百人にアンケートをとったり、社内やメーカーさんなど、できるだけたくさんの人の客観的な印象や感覚を聞いたりしています。そして、もう一つが自分の経験。僕はこれまで、十数年携帯電話のデザインに携わらせていただいており、恐らく、日本で一番、携帯電話を見てきた人間なのではないかなと。その積み重ねてきた経験値が、日々のデザインに生きていると感じています。

――小牟田さんといえば、これまで「INFOBAR」や「iida」など、数々の斬新なデザインを世に送り出してこられましたが、このようなデザインにチャレンジしてこられた理由は何だったのでしょうか?

これは僕がKDDIに入る前、カシオで働いていた時から考えていたことだったのですが、当時の携帯といえば、一般的にどれも似通った銀色のデザインのものばかりでした。そこで、こんなことではいけないと思い、デザインを見ただけで買いたいと思うような携帯を作る必要があると考えました。いまも僕は「飛距離」という言葉をよく使うのですが、既存の概念を壊すには、現状からどれだけ飛距離のあるものを作れるかがカギだと考えています。だから、INFOBARも、グレーの川の中を泳ぐ鮮やかな錦鯉みたいな、そんな存在を作ろうと思って始動したプロジェクトでした。そう志してからは、ものすごいスピードで動き始めました。KDDIに入った一週間後には、もうデザイナーの深澤直人さんにお声掛けして、お会いしていましたね。

――そのスピード感は、KDDIならではのものだったのでしょうか?

そうですね。入社してKDDIという会社に感じたのは、"自由度"、"勢い"、そして"決断の早さ"でした。当時はまだ、KDDIの前身であるDDIだったのですが、あの頃からKDDIは「これやりたいです」っていうと「やっちゃいなよ!」ってポンとOKしてくれる、大きな器の会社だったんです。それで、あの斬新なデザインも生まれました。KDDIがすごいのは、あのデザインを地球で初めて世の中に出したことですよね。1個目を出せば、2個目、3個目は必然的に出るものなのですが、この「えいや!」と踏み出す一歩が大変。それをやってのけたのは、完全にKDDIの力ですね。僕は、デザインを作ることはできるけど、それを量産化することは会社でしかできないですから。あの一歩を踏み出したことは、大きな財産だったと思います。

――今回の夏モデルでの「デザインディレクション」という立場では、具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?

個々の端末でのデザインディレクションというと、音楽の「編曲」のような役割になります。歌手が何か楽曲を作ろうとしたときには、まず作詞作曲をしますよね。でも、生の楽曲というのは、まだかなり荒っぽい状態です。そこで、それを人の感動を呼べるような商品に仕上げるのが、編曲という作業です。さらに、全体のマッピングのような部分も任せていただきました。例えば、普通にマーケティング調査をした場合、カラーは白・黒・ピンクの3択以外が候補に挙がることはほとんどありません。それに対して、全体のラインアップを見ながら、カラーパレットをきれいにそろえていくような作業です。そうした全般のプロデュースと、個々の端末のデザイン監修を合わせてやらせていただきました。

――今夏のラインアップの見どころや、こだわりを教えていただけますか?

スマホっていうと、昔と比較しても、一見あんまり変わっていないように見えますよね。でも、技術は確実に進歩していて、本体のサイズは小さくなっているし、液晶も大きく見やすくなっている。今後もそういう部分での消費者の欲求は、技術の進歩が埋めてくれる。加えて、スタイリングという面から差別化を図るには、形状だったり、質感や材料へのちょっとしたこだわりが、すごく重要になってくると思うんです。なので、持ち心地とか、指への当たり方とか、本当に細部まで、ミリ単位での調整を重ねています。そうすることで、実際の使い心地はもちろん、見た目の印象まで変わっていくので。

今回も、そうして細かいところまで気を使っている分、確実に良いデザインになっているので、まずはぜひ、まじまじと、食い入るように見てほしい。そして、手に持って、触ってもらったら、気持ちいい感じはすぐお分かりいただけると思います。また、待ち受け画面などにもau仕様のこだわりを施しているので、そういった楽しみ方もしていただきながら、親しんでもらえれば嬉しいです。

文:田代くるみ 撮影:今井裕治

小牟田啓博/こむたよしひろ
1969年神奈川県生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、携帯端末のデザインディレクションを通じて携帯電話事業に貢献。2006年、デザインコンサルティング会社Kom&Co.を創業、2008年にKom&Co.Designを設立。極真空手歴15年、娘がギターを始めたのをきっかけに、小牟田氏もギターが趣味に。

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