2016/09/29
キッズセキュリティ最前線! 登下校の見守りは、ビーコンとクラウドとAIにおまかせ
子どもたちだけで登下校する日本にアメリカはビックリ
アメリカの朝の人気ニュース番組『CBS THIS MORNING』が、2015年に「子どもたちを1人で通学させる日本の親たち」というタイトルで、東京の小学生の通学風景を取り上げた。日本人にとっては当たり前のことだが、アメリカ人にとっては、子どもたちが親の同行なしに自分たちだけで町を歩き、電車に乗り、通学するのは超ビックリなことなのだ。番組ではレポーターが、日本がとても安全な社会だからこそ可能なこと、と説明していた。
とはいえ、そんな日本だって100%安全であるとは誰も断言はできない。ニュースに登場した日本の小学生のお母さんは、子どもがいまどこにいるのかがわかるGPS端末を子どもに持たせていた。言いかえれば、登下校時に必ず親が同行するか、そうでなければスクールバスを使う欧米では、子どもにGPS端末など持たせる必要はない。子どもたちだけで登下校できる、安全な日本だからこそ、むしろ見守りシステムが必要というわけなのだ。
かつては、おばあちゃんやおじいちゃんといったご近所さんが、町ぐるみで取り組んでいたことではあるが、いまはビーコンとクラウドとAIが子どもたちを見守るというわけだ。
日本の子どもたちの通学風景を取り上げたCBSのニュースがこちら
ランドセルに取り付けた電子タグが活躍だ
ご近所さんに取って代わった最初の見守りシステムが、メールだろう。不審者や事件、事故などのさまざまな情報を学校や地方自治体が保護者にメールで知らせる「見守り情報共有タイプ」と呼ばれるこのシステムは、今でも多くの学校で運用されている。
その次に登場したのが「登下校確認タイプ」。たとえば、私鉄が始めた交通系ICカードと連動したサービスで、契約している子どもが最寄り駅の自動改札機にカードをタッチすると、保護者に「お子さんはいまから電車に乗りますよ」とか「いま駅に到着しましたよ」というメールが自動的に届くというわけだ。
このサービスは、電車通学をしない子どもは利用できない。そこで生まれたのが電子タグでの校門の通過確認だ。子どもたちのランドセルに取り付けられた電子タグを、校門にあるセンサーが感知。自動的に保護者に「いま下校しました」というメールを届ける。
しかし、校門だけだと心配だ。途中でなにが起こるかわからない。そこで、このシステムは「通学見守りタイプ」へと進化する。校門だけにあったセンサーを、地域の要所要所に設置するのだ。このチェックポイントを子どもが通るたびに、学校や市役所に置かれたサーバーに情報が送られる。保護者はパソコンやスマホでサーバーにアクセスして、子どもがどのあたりを移動しているかを知ることができるというわけだ。
当然、チェックポイントを増やせば増やすほど、情報はきめ細かく、正確度を増す。しかし、一方でお金がかかる。そこで登場した最新のシステムが、ビーコンとクラウドを利用するものだ。ここで、再び町のおばあちゃんやおじいちゃんが登場する。
見守りアプリをインストールしたスマホがセンサーに
仕組みはこうだ。まずは、Bluetoothの電波を発射する小型のビーコン端末を子どもたちに持たせる。校門やバス停など、さまざまなチェックポイントにこのビーコンをキャッチするセンサーを設置する。ここまで旧来型とはほぼ同じだ。違うのは地域の住民が人間センサーになるということだ。
地域のボランティアが見守りアプリをスマホにインストールし、見守り人となる。この見守り人のそばを、ビーコン端末をランドセルに取り付けた子どもが通ると、見守り人のスマホのアプリが反応し、スマホから自動的にクラウドに子どもの位置情報が送られるという寸法だ。
見守り人はなにもしなくてよいし、プライバシーも守られる。また、多くの見守り人が協力してくれるほど、情報もより正確になり、チェックポイントを設置する費用も不要となる。ビーコン端末も安価で提供できるので、学校や地方自治体にとってはコストをかけずに見守りシステムが導入できるというわけだ。
otta社の見守り人を利用したシステムをわかりやすく説明する動画
ほかにも、会話もできるGPS端末を利用するものや、緊急事態にはボランティアや警備会社が駆けつけることになっているものなど、さまざまなシステムが登場し、実際に多くの地域で運用されている。クラウドに集められた情報をAIが監視・分析し、不審な動きなどがあれば、アラートを関係機関に発するというシステムももうじき登場するという。安全な社会だからこそ、登下校見守りシステム先進国となった日本。願わくば、日本だけではなく、見守りシステムが活躍するような安全な世界になってほしいものだ。
文:太田 穣
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