2014/08/14

P2P型のCDNサービス『MistCDN』が最優秀賞に――KDDI ∞ Labo 6th DemoDay

KDDIは7月14日に、東京・渋谷のヒカリエホールで「KDDI ∞ Labo(∞ラボ) 6th DemoDay」を開催した。今年3月にスタートしたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」の第6期プログラム最後のイベントで、第6期参加チームがこの3カ月間で作り上げたサービスの最終プレゼンテーションを実施し、各賞の発表が行われた。

「原点にかえる」として「0→1」をキーワードにした第6期プログラムには、100チーム以上の中から選ばれた5チームが参加した。いずれも、世の中にまだ出ていない新しいサービスのアイデアを持つチームばかりで、各チームに対しては、設備や開発環境の提供のほか、経験豊富なKDDI社員がメンターとしてサポートし、頭の中にだけ存在していたアイデアをカタチにして具体的に事業化するまでのバックアップを行った。

すぐにも使いたい魅力的なサービスが次々にリリース

DemoDayでは、まずは各チームが5分間という短い制限時間で、開発したサービスのプレゼンテーションを行った。このプレゼンのあとに、来場者が自分のスマートフォンで投票を行う「オーディエンス賞」が決定するので、重要なアピールの場でもある。ステージ上、客席ともに熱気は高まり、会場の雰囲気は盛り上がった。

そんな中で最優秀賞を受賞したのは、ブラウザ間でコンテンツ交換を行うP2P型コンテンツ配信プラットフォーム「MistCDN」だ。開発したMist Technologiesは学生枠での参加チームだ。各チームの発表内容と受賞した賞を紹介しよう。


最優秀チームに選ばれたMist Technologies株式会社の田中晋太朗さん

MistCDN(Mist Technologies、代表・田中晋太朗さん) 最優秀賞、ベストエンジニア賞http://www.mist-t.co.jp/

MistCDNは、最新のWeb技術 (WebRTC) を使い、サーバーやクラウドに依存しないP2P(ピア・トゥ・ピア)型のコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)サービス。ユーザーのPCにコンテンツをキャッシュして、同じコンテンツを視聴するユーザーのPC間でコンテンツを交換する。アクセスが集中するほど配信元となるPCが増えて転送速度が向上する仕組み。「MistCDNはアクセス集中することを味方にするのが強みで、現在はHTML5コンテンツ配信やライブストリーミング配信を行っています」と田中晋太朗さん。従来のCDNと比べて60~80%コストダウンできるという。この日からトライアルキャンペーンを開始し、KDDI ∞ Labo 6th DemoDayの様子もMistCDNで動画配信された。


filme(フィルミー)(コトコト、代表・門松信吾さん) ファミリータイズ賞、オーディエンス賞http://www.myfil.me/

スマートフォンで撮影した子どもの動画に、時間があるときにコメントを付けるだけで動画日記を作れるサービス。「母親がスマートフォンで撮った子どもの動画を、編集・共有する機会がない」という悩みを解決する。日々の動画が20日分たまると、その期間の成長を振り返る「成長シネマ」1編が自動的に作成されるのが特徴だ。独自開発の動画編集エンジンにより、成長シネマには、子どもの表情や動き、声を分析してベストシーンを集めることができる。無料プランでは保存容量に制限があるが、有料プランは容量無制限で、成長シネマのDVDが定期的に届けられる。8月からサービス開始した。「思い出振り返りのプラットフォームで動画版のフォトブックを目指します。いずれはDVDの送付先として祖父母をターゲットとしたシニア層や、旅行、ペット市場なども考えています」と代表の門松信吾さん。


QuaQua(クアクア)(ダックリングズ、代表・高木紀和さん) ニューワークスタイル賞https://quaqua.me/

国内に1,000万人はいるというハンドメイドクリエイターの新しい働き方を創造する製造・販売のプラットフォームを開発した。「ハンドメイド市場は盛り上がっているにもかかわらず、クリエイターはそれだけでは生活できず、実力のあるクリエイターが埋もれている」(代表の高木紀和さん)という現状を変えるべく、クリエイターををバックアップする。まずは、クリエイターが制作したジュエリーを、どのように生み出されたものかという背景も含めて紹介することで、プラスαの価値観ごとユーザーに届ける。作品の撮影や購入者への発送を代行することで、クリエイターが作品作りに専念できるようサポートする。7月14日にサービスインした。


macaron(マカロン)(SPWTECH、代表・吉田圭汰さん) キー・オブ・ビューティー賞(appstore)

「女性の、女性による、女性のため」のきれいになるための知恵が集まるキュレーションアプリ。12名の女子大生がコンテンツをキュレーションし、社会人のようにお金をたくさんかけることができなくても美しくなれる情報を提供する。「内容だけでなく、つい指先でページをめくりたくなるような表現方法にこだわりました」(代表の吉田圭汰さん)というアナログに近いページ作りも特徴だ。iOSアプリはリリース済みで、Android版は年内にリリース予定。


左から、KDDI 髙橋専務、第6期参加チーム代表者のSPWTECH合同会社の吉田圭汰さん、ダックリングズ株式会社の高木紀和さん、最優秀賞チームに選ばれたMist Technologies株式会社の田中晋太朗さん、株式会社コトコトの門松信吾さん、Repro株式会社の平田祐介さん =渋谷ヒカリエホール(東京都渋谷区)

Repro(Repro、代表・平田祐介さん) グローバルクリエイト賞https://repro.io/

ゲームアプリ事業者向けツールで、ユーザーに利用し続けてもらうためのアプリ改善を効率的に行うためのソフトウェア開発キット(SDK)。SDKをインストールしたアプリをユーザーが操作すると、実際にどのようにアプリを使っているのか、画面の操作や遷移から、操作しているときの表情までの情報を取得し、データを蓄積・分析し、ユーザーがそのサービスを離脱した理由まで確認できる。アプリにコードを1行追加するだけで利用できるという簡易さが特徴。既に12社の16アプリで使われている。

13の企業とともに参加チームをサポートする「パートナー連合プログラム」を開始

左から、KDDI 髙橋専務、パートナー連合プログラム賛同企業のコクヨ株式会社兼コクヨファニチャー株式会社執行役員の吉田武史氏、株式会社セブン&アイ・ホールディングス取締役執行役員の小林 強氏、株式会社テレビ朝日ビジネス戦略部長の前田寿之氏、プラス株式会社ジョインテックスカンパニー執行役員ヴァイスプレジデントの伊藤羊一氏、三井物産株式会社次世代・機能推進本部新社会システム事業部長の渋田淳一氏

ベンチャー支援に関する新方針を発表するKDDIの髙橋誠代表取締役執行役員専務

KDDI∞Labo では、この日から第7期プログラムの募集を開始した。第7期からは、スタートアップ企業支援をさらに強化するため、KDDIに加えてKDDI ∞Laboの趣旨に賛同する13の企業とともに「パートナー連合プログラム」を展開していくと発表した。このプログラムではコクヨやセブン&アイ・ホールディングス、テレビ朝日、プラス、三井物産の5社がメンタリング企業、近畿日本ツーリスト、ソフトフロント、大日本印刷、東京急行電鉄、凸版印刷、パルコ、バンダイナムコゲームス、三井不動産の8社がサポート企業としてアセットやノウハウを提供する。メンタリング企業は、KDDIと共に、選出されたチームのメンターも務める。

KDDI ∞Laboでは、これまでもKDDIグループ以外の大手企業との連携を行なってきたが、その都度探す連携企業と、プログラムに主体的に関わるパートナー企業とでは、サポートのスピード感や関わり方が変わってくる。DemoDayでは、メンタリング企業5社からの代表者も登壇し、KDDI ∞Laboへの意気込みを披露した。

KDDIの髙橋誠代表取締役執行役員専務は「KDDI ∞Laboが求めるのは、オンラインに閉じない、もっと広い世界を目指している人たち、環境の変化に合わせて柔軟に対応できる姿勢を持った人です。これまでのようなアプリやサービス関連だけでなく、ハードウェアの製造開発を伴うスタートアップ企業も受け入れます」と語った。応募締切は8月15日までとなっている。

文:松本佳代子  撮影:斉藤美春

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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