2015/02/20

【世界のドローン6】今年のCES会場に見る、ドローンブームのこれから

今年のCESでは、紙飛行機や鳥型、ソーラーパネルを搭載したタイプなど、さまざまなアイデアのドローンが出展されていた。写真はQsolarが開発中のQCP-D1

ドローンブームの先駆けであるParrotのブースでは、音楽に合わせて正確に空中でダンスを披露するデモが大人気だった

複数のGoProカメラを装着できるホルダーを搭載し、360度の風景撮影を可能にする「360Heros」ドローン

TRACEのR1はカメラパーツとしてドローンやラジコンカーに設置できる

DJIのInspire1 Camera Mountは、ドローンで安定した映像を撮影する機能が応用されている

Voxel8は、ドローンを構成する本体パーツと電子基盤をそれぞれ3Dプリンターで出力し、自分で組み立てられる、手のひらサイズのドローンのキットをオンラインで発売する予定だ

アメリカは今、まさしくドローンブーム。

ラスベガスで毎年1月に開催される、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー (Consumer Electronics Show, CES)では、前年度の家電市場調査データが発表されるが、その中でドローンはテレビやモバイル、ウエアラブルと並ぶ成長カテゴリーとして取り上げられている。これまでに34万以上の機体が発売され、市場は前年から49%も成長し、市場売り上げ金額は100万ドルを超えているとの数字が発表されている。

CESでも会場内のあちこちでドローンを展示したブースが見られたが、3Dプリンターやロボットのようにまとめたコーナーではなく、ゲームやカメラなど、それぞれのターゲットに合わせてさまざまなカテゴリーエリアに出展されていた。ドローンブームを作り出したフランスの「Parrot」をはじめ、「DJI」、「HOBBICO」といったドローン市場を拡大してきたメーカーが大きなブースを出展しており、飛行デモがあちこちで行われていた。展示内容は主力製品の紹介や、ドローンに搭載されたカメラで撮影した動画を見せるほか、コントローラーとなるモバイルデバイスを持ちやすくする周辺機器なども並んでいた。

また、ドローン市場にこれから参入するスタートアップもまだまだ増えており、オーソドックスなクワッドロータータイプのドローンはもちろん、鳥や紙飛行機のカタチをしたユニークなデザインのドローンや、ソーラーパネルを搭載したドローンなどが注目を集めていた。

全体を見ると、ドローンの開発傾向には大きく3つのポイントがあるようだ。ひとつ目は、正確な操縦性。墜落や失速のニュースが続いたことから、長距離や悪天候でも安定して飛行できる点をアピールするメーカーが多かった。例えば、「Parrot」は複数のドローンをミュージカルのように音楽に合わせて群舞させるデモを数十分間隔で行っていた。単体で飛ばす以外に、自律飛行機能をあらかじめプログラミングすることで、ドローン同士が等間隔でぶつからず、しかもそこそこのスピードで飛行できる性能の高さをアピールしていた。

ふたつ目は撮影機能で、「GoPro」のようなアクションビデオカメラをはじめ、4Kの高精細度や広角レンズカメラなど、ドローンで撮影できる動画にもバリエーションが求められている。複数のカメラを組み合わせて360度の方向を同時撮影できる「360Heros」は、撮影した映像を球状やパノラマ状にして再生できるソフトを合わせて提供している。被写体を自動で追尾撮影できる「HEXO+」も、クラウドファンディングでの資金調達を経て正式発売を開始しており、映画やプロモーションビデオの作成で活用されることが増えると、会場でもさまざまなメディアから注目を集めていた。

ドローンに搭載するカメラを別の製品として展開したものもあり、「TRACE」が開発する「R1」カメラは、取り外してドローンやラジコンカーに付け替えられるようになっている。「DJI」は最新ドローンの「INSPIRE 1」の4K高精細度カメラを搭載する機構であるジンバルの部分だけを使って、スマートフォンでも動きのある映像を手ブレせずに撮影できるハンディグリップ「Inspire1 Camera Mount」を発売すると発表している。

3つ目はカスタマイズ性である。「Voxel8」は、同社が開発している電子基盤を出力できる3Dプリンターを使った、ミニドローンの制作キットを近くオンラインで販売する予定だ。商用ではないが、オンラインで大きさやカタチを自由にオーダーできるドローンを販売する動きは国内でもすでにあるそうで、これからは、自分好みのドローンが手に入れやすくなるかもしれない。

デアゴスティーニから、毎週発売される雑誌に付いてくるパーツを組み立てるとドローンが完成する「週刊スカイライダー・ドローン」が創刊され、日本でもヒットが期待されているが、これからはオモチャ以外の用途で、どれだけ新しい機能や利用方法が提示できるかが、ブームを継続する鍵になりそうだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。