2015/02/12

IF文で日常生活を自分好みに“カスタム”できるサービス『IFTTT』

「ガレージのドアが開いたら部屋の照明とエアコンをつける」「好きな野球チームが勝ったらチームの応援歌を流す」「スマートフォンの住所録に新しい知人を登録したらFacebookの友達申請をする」「eBayの入札価格が上がったら庭に水を撒く」......プログラミングの知識がなくても、日常生活をちょっと快適に、楽しく「カスタム」できるサービスが「IFTTT(イフト)」だ。

サンフランシスコで創業したIFTTTは、FacebookやEvernote、Gmailなど複数のWebサービス同士を連携させるWebサービス。「IFTTT」はIf This Then Thatの頭文字を並べたもので、つまりはプログラミングで使うif文である。「もしThisならばThatを実行せよ」という命令文だ。

この名前のとおり、「もし、Foursquare(位置共有サービス)でチェックインしたら」(トリガーという)「ツイートせよ」(アクションという)というプログラム──この全体をレシピという──を誰でも書いて、公開することができる。レシピはプログラミングのスキルがなくても作れるし、他の人が作ったレシピを使うこともできる。2011年9月のローンチ以来、1,600万ものレシピが集まっている。2013年以降、iOSやAndroidに対応したので特にアクション部分の柔軟性が高まった。

トリガー(きっかけ)やアクション(行動)に使えるサービスは「チャネル」と呼ばれていて、BOX(オンラインストレージ)やInstagram(画像共有SNS)などのほか、天候情報のWeather、小売りのBest BuyやスポーツチャネルのESPNなど範囲も広がって163に達している(2015年2月現在)。もし、買いたいゲーム機の値段が下がったらiOSにプッシュ通知を出す、といったアクションもできるのだ。

サービスが始まった2011年当時と2015年の現在には大きな違いがふたつある。ひとつはFitbitやJawbone UPに代表されるアクティビティートラッカーの普及。多くのトラッカーがWebサービスを提供していて、APIを公開しているが、IFTTTの利用者がさまざまな観点から多種多様なレシピを開発している。「Withing社の(Wi-Fi対応)体重計で測定した体重が目標に達したらフェイスブックに投稿する」くらいのレシピは簡単にできる。

もうひとつの変化はスマートホーム用のガジェットの増加だ。グーグルが買収したことで話題となったNestのサーモスタット(サードパーティのデバイスと連携できる)や、フィリップスのhue(スマート電球)、Belkin社のWeMo(遠隔操作できるコンセント、電球、モーションセンサーなど)がチャネルに加わった。つまり、ネットとリアルをIFTTTでブリッジすることが可能になったため、応用範囲が大きく広がったのだ。Logitech社のスピーカーや、Garageio社の車庫ドア開閉システム、Honeywell社の暖房装置、Rachio社のスプリンクラーなど、チャネルは拡充し続けている。

IFTTTは無料サービスだが、プレミアム(有料)サービスの導入も視野に入れている。多くのガジェットやサービスの提供事業者と、多くの利用者とをつなぐハブとして、ホームオートメーションやIoT(モノのインターネット)のプラットフォームに成長する可能性が十分にあると言えそうだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。