2015/01/14

通勤ラッシュの苦痛を解消 ビッグデータを活用して需要に応じて運行するバス

年末年始の休みも終わり、なまった体に通勤・通学がつらいという人も多いと思うが、「Bridj」という米国のスタートアップ(マサチューセッツ州ケンブリッジ)が、バスの運行にビッグデータを取り入れて、公共交通を変革しようとしている。

通勤客や学生が大勢乗る時間帯と路線は超満員で、そうでない時間帯にはガラガラの電車やバスを走らせるのは非効率だ。ビッグデータ時代にはもっとスマートな運行が可能になると同社は考えている。

そこで、Bridj創業者のMatthew George氏が考案した運行アルゴリズムは、すでに全米各地の大学キャンパスへの通学に使われるBreakShuttleで利用されており、例えばアラバマ州のオーバーン大学では20マイル圏内に住む9,000人の学生に対して4ルートだけで送迎を行っているという。また、Bridjは小型バスを用いて、2014年5月からボストン中心部と周辺地域の一部でパイロット運行も開始している。

「人々がいつどこにいて、どこに向かいたいのかスマートフォンの位置情報などを活用して把握し、運行ルートやスケジュールを調整し、(日本では当然のことだが)座席をきれいにして、Wi-Fiアクセスを提供し、無駄な迂回をせずに最小限の停車回数で目的地に連れて行ってくれるバス」を同社は目指している。

ボストン周辺でのパイロット運行では、専用アプリからバスに乗りたい場所と時刻、それに下りたい場所を入力すると、最適なバスを提示してくれ、席を購入すればバス停まで道案内してくれる。乗るバスが今、どこまで来ているかももちろん表示してくれる。路線は、利用したい人が多い場所に新設される。ソーシャルメディアの投稿を分析することで、野球の試合などのイベントも勘案し、突発的な移動ニーズが発生したら増便することも可能だという。公共交通機関とタクシーの中間に当たるサービスといえ、料金もバスや地下鉄より少し高い程度に設定されている。

とはいえ、運行ルートや時刻を需要に応じて変更するバスを公共交通機関として認可する枠組みが現在はないため、同社は、当面は行政当局との交渉に労力を割かざるを得ない。このような新しいサービスが広まるための大きな課題は、法制度の整備だろう。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。