2014/12/02

ソーシャルメディアを探知機に インフルエンザや風邪の流行を素早くキャッチ

2011年に公開されたアプリ「Sickweather」は、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークにおける人々の健康状態に関する発言をスキャンして、位置情報、つまり地図と紐づけて、病気の広がりを観測した結果を表示してくれる。いわば病気の気象観測レーダーである。

公共の保健所などが、病院や診療所からの報告をとりまとめて発表するとなると時間がかかるが、Sickweatherは人々が発熱や体調の異常について書き込んだ内容をスキャンし、本当に病気に関する投稿なのか、比喩的な表現なのかを区別して分析する。例えば、アイドルに「熱を上げる」とか、不正事件に「吐き気を催す」といった発言は除外するわけだ。分析結果を地図で表示してくれるほか、感染している人の多いエリアに利用者(のスマートフォン)が近づくとアラートを発してくれる。

同社によれば、2012年には、インフルエンザの流行をCDC(米国疾病管理予防センター)よりも6週間も早く察知したという。報道メディアよりも2週間早く百日咳の広がりを見つけたこともあるそうだ。現在は、アプリの名前(会社名も同じ)のとおりに、病気と天候の関係を調べているという。

Googleも、検索キーワードを分析することで、世界のインフルエンザの流行を探って公開している(Flu Trends、インフルトレンド)。今シーズンからは、精度をより向上させるために、検索データだけを使用したシンプルなモデルではなく、CDCの公開データと組み合わせてインフルエンザ発生の現状分析と予測を行うようにしたという。

日本でも、インフルエンザが含まれるツイートの数と広がりを地図や時系列で表示してくれる「ツイートフル」や、Yahoo! JAPANによるビッグデータ分析などの取り組みが行われている。情報源はインフルエンザなどの単語が含まれているかどうかなので、不正確な情報が混じっている可能性はあるが、それでも医療機関よりもネットの情報の方が早くて網目が細かいのは確実だ。100%鵜呑みにするのは危険だが、医療機関からの発表よりも早くインフルエンザなどの流行を察知するには、TwitterやFacebookの投稿、GoogleやYahoo!の検索ワードの分析が有効な手段であることは間違いなさそうだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。