2014/11/12

「ゲームの要素」で、お役所のウェブサイトへのアクセス20%UP

行政情報から住民サービス、産業・観光情報まで、自治体にとってもウェブは重要な情報発信手段になっている。大いに利用したいところだが、お役所のウェブサイトは退屈で分かりにくく、使いづらい場合が多いのも事実。そんな常識を覆そうとしているのが、アメリカのハワイ州だ。住民にサービスを提供している以上、効率的かつ有効な方法でサービスを届ける必要がある。そこでゲーミフィケーション(ゲーム化)を取り入れ、5カ月で利用が20%アップしたという。

ゲームの要素を追加するといっても、シューティングゲームやRPGのように大掛かりにする必要はないし、政府機関のサイトにはそうした要素は似つかわしくない。ハワイ州がしているのは、州への申請を書類ではなくオンラインで行った人への「バッジ」や「リーダーボード(ランキング上位のリスト)」表示のほか、オンライン申請によって、どれだけ時間やコストを削減できたのかを可視化したり、完了した作業とこれから行なわれる作業を区別して表示したりするといった程度。これらをログインの必要な住民のパーソナライズドページ(My.Hawaii.gov)に提供することで、住民個々に向けた「サービス」を提供している。デザインも、お役所のウェブサイトとは思えないもので、当然ながらモバイルにも対応している。

こうしたサイトを開発するには税金を投入しなければならないが、住民サービスをオンラインで提供できれば、公務員の業務も効率化できて経費削減につながる。Hawaii.govは、NAGW(全米政府系ウェブ協会)やウェブマーケティング協会で最優秀賞を獲得するなど高い評価を得ている。

最近アップグレードしたハワイ州のポータルページはGoogle翻訳を利用して多くの言語で表示できるようになり、役所やEVステーション(電気自動車の充電スタンド)、ファーマーズマーケットなどの位置情報提供も行っている。知事室や州政府、郡、市の各組織が運営しているソーシャルメディアは270以上あって、それらへのリンク集も用意されている。flickrの写真集や20本のYouTube動画もあり、登録ユーザは40万人を超えている。

お役所とゲームとは、いかにもなじみが悪そうに見えるが、住民へのサービスを向上させ、業務効率を上げる手段として、確かに機能しているようだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。