2014/11/07

偽造薬と闘うモバイルアプリ

マラリヤやコレラ、最近ではエボラ出血熱との闘いが続く西アフリカ諸国では、かねて偽造医薬品(カウンターフィット薬)との闘いも続いている。パッケージを偽造して、安価な薬を高価な別の薬として売ったり、薬でも何でもないものを医薬品らしく見えるパッケージに入れて売ったりする犯罪行為が横行しているのだ。単に薬が効かないだけでなく、有害物質が含まれているものがあったり、副作用を引き起こしたりすることもあり、人命に関わる重大な問題として各国政府が対策に乗り出している。

「mPedigree」は、モバイル(m)で医薬品などの出所(pedigree)を確認するモバイル用アプリで、ガーナのmPedigree Networkが開発している。mPedigreeプログラムに参加した製薬会社は、製品のシリアル番号などをmPedigreeのデータベースに登録する。医薬品を購入した患者は、ショートメッセージを使ってパッケージに印刷された番号を送り、その医薬品が正規品かどうかを確認する。2008年にテストが始まり、今ではガーナをはじめ、ナイジェリアやケニアなどにも広がりつつある。

8月にガーナの薬学会がmPedigree Networkと共同で始めた新しいプログラム「PREVENT(Patients' Research, Empowerment, Vigilance, and Education through New Technology)」は、正確性をさらに高めた確認方法を使っている。製薬会社は、スクラッチカードのようにコインなどで削ると見えるようになる形で、パッケージに12桁のユニークなコードを印刷して出荷する。この番号をSMSで送ると薬が正規品かどうか分かるという仕掛けだ。これによって、番号の偽造もしにくくなる。スクラッチは、西アフリカ諸国では携帯電話料金をプリペイドで購入する際に広く使われている方法なので、薬を処方された患者側にとっても分かりやすい確認方法なのだという。

照合結果が返るまでの時間は10秒程度。偽造薬だった場合には、通報のためのホットラインの番号など、次のアクションの指示が示される。さらに、PREVENTプログラムのサイト(preventfaking.com)やツイッター、フェイスブックのページを使って、ソーシャルメディアによる消費者教育も並行して行っている。

携帯電話に番号を入力して確認するという方法は、日本では商品に付いてくるくじなどに使われることが多いが、このようなシンプルな認証技術でも、利用方法次第で社会問題を解決するツールにもなるという好例だ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。