2014/09/19

作ってみたい欲求をそそる身近な先端技術でいっぱい Ogaki Mini Maker Faire 2014 レポート(前篇)

Maker Faireというものづくりコミュニティーのためのイベントをご存じだろうか。技術系工作からガレージキット、手作り楽器にアプリ開発、手芸、クラフトなど、幅広いジャンルの作り手たち=メイカーズが一堂に会する、発明と創造を共有するイベントで、2006年にカリフォルニアのサンマテオで初めて開催されている。日本でも2008年春に初めて開催されてから、会場も規模もどんどん変化し、2012年からMaker Faire Tokyoとして大規模な展示会を実施している。

今年は11月23〜24日に東京ビッグサイトで開催されるイベントに先駆けて、8月23〜24日に「Ogaki Mini Maker Faire 2014」が開催された。東京と同じく2012年から毎年開催されており、1/1スケールの戦車プラモデルや手作り無人機の飛行デモと内容は盛りだくさんで、先端技術やものづくりの楽しさを身近に感じられる機会となっていた。

ソフトピアジャパン・センタービルの1階と吹き抜けから3階展示ホールを使って開催され、「つくることから、はじめよう。もの/あそび/ぶんか」をテーマに約100組のメイカーズが集まった。

2回に分けて会場内で注目されていた出展作品を写真とともに紹介していく。

プラモデルを1/1で作る会による実物大の空挺戦闘車

35分の1プラモデルを基に、実物大サイズで製作された空挺戦闘車ヴィーゼルIIは、パーツの切り出しから板金作業まですべて手作業。ディーゼルエンジンを積んでおり、砲塔部分もきちんと動く。製作者は以前に機動戦士ガンダムに登場する車両なども実物大で作成している。それぞれの得意分野を持つメイカーズがチームで製作しているため、本物に近いクオリティに仕上がっている。

空撮用マルチコプター

空撮で使われるマルチコプター(3つ以上のローターを搭載したヘリコプター)も展示されていた。最近では海外の報道やプロモーションでマルチコプターを使った空撮を頻繁に見かけるようになっている。展示を行っていたホットプロシードは、マルチコプターを利用した日本初のパーソナルユースの空撮システムを提供している。

造形学習向け知育玩具「マス・マグネット」

複雑な技術を使った展示がある一方で、アイデアを感じさせるシンプルなものも出展されている。「マス・マグネットスティック」は、ネオジム磁石がついた紙のようにしなるスティックを使って造形学習を行うキットで、子どもから大人まで楽しめるようになっている。イベントの主催団体の一つであり、大垣市にある情報科学芸術大学院大学IAMAS(イアマス)関係者のグループGenerative Idea Flowが制作。

失読症患者向けウエアラブルデバイス「OTON GLASS」

「ディスレクシア」と呼ばれる文字が読み取りにくい失読症や難読症などの問題を抱える人たちのサポートを目的としたウエアラブルデバイス。まばたきなどの動きをトリガーにしてメガネの横に付いたカメラで文字を読み取り、音声に変換してくれるというものだ。脳梗塞により、読み取り能力に障害が残った父親の存在が開発のきっかけになっていることからOTON(オトン)と名付けらている。開発しているのはIAMASの学生で、現時点ではアイデアを自分たちができる範囲の技術を使ってカタチにしただけなので、今回の発表を機に実用化を目指したいとしている。

デザイニウム「アンビエント・トイ」

リアルとバーチャルをアプリでつなぐ作品もいくつか見られた。福島県会津地方の民芸品「あかべこ」「おきあがりこぼし」「天神さま」をスタイラスペン代わりに加工した「アンビエント・トイ」は、タブレットの上で人形を動かすと、アプリ上の地図にいろいろな情報が表示されるIoTならぬ「Internet of 民芸品」に取り組んでいる。プロトタイプを作成中で、オーダーに応じた開発を受け付けている。

Gocco

アプリを使ったプロモーションを手掛けるGoccoは、独自開発の特殊インクを使った、印刷物でコンテンツを呼び出すソリューションを紹介。ペットボトルのキャップに専用の紙をつけるとiPhoneの画面に表示されたターンテーブルでDJプレイできたり、雑誌から切り抜いたレコード型のカードをiPadに重ねると音楽が再生されるなど、高い技術力とデザインセンスを見せてくれた。

kuralabグッズとARアプリ

kuralabこと大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルアート・アニメーション学科 ヴィジュアルデザインゼミは、専用ARアプリを起動したiPhoneのカメラで写すとキャラクターが動き出すTシャツなどを販売。キャラクターの仕上がりが良く、これからもアプリはバージョンアップされる予定。ARはめずらしくないが、商品としての完成度が高い展示だった。

(後編に続く)

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。