2014/08/07

急用の電話をデバイスで演出

Tiyo(This Is Your Out)

あまり気の進まないデートやミーティングから抜け出すために、適当な時間になったら友だちに電話してもらい、急用を装ってその場を立ち去るというのは、世の東西を問わず、昔から使っていた手のようだ。

「訪問セールスのために立ち寄った先で、話し好きだけど、保険に加入してくれる気配のない人の相手を長時間しなければならなかったら商売上がったりになる。相手の気分を害することなく退散しなければ、ノルマ達成はおぼつかない」。そんな悩みを持つ保険外交員を奥さんに持った人が開発したのが「Tiyo」である。

Tiyoという名前は、This is your out(あなたの逃げ道)の略だそうだ。キーホルダーくらいのデバイスで、こっそりボタンを押すと、Bluetoothを介して携帯電話に着信が入る。社会的なシチュエーションにおける"緊急脱出ボタン"なのだそうだ。カスタマイズ可能で、発信者IDをセットするなどの技も備えている。電話に出ると録音された音声が聴こえるが、これをオウム返しに繰り返せば、自然に急用の電話を受けているような演技ができる。2015年2月に発売予定で、予定価格は35ドル。ただし、Indiegogoでの資金調達は苦戦している。

20世紀の固定電話全盛時代には、長電話にうんざりして「ごめんなさい、キャッチホンが入っちゃって」とウソをついて電話を切る人がいたし、こうした言い訳には昔からニーズがあるのだろう。ただ、携帯電話を誰もが持っている今では、マナーモードの着信に気づいたフリをして電話を耳に当て、急用の対応に見せるのはそれほど難しそうではない。ガジェットの機能で言い訳するか、自身の演技力のみで勝負するかの違いだが、ウソで状況を逃れるという点では五十歩百歩かもしれない。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。