2014/08/05

Google Glassで診察・治療を記録

活動量計(アクティビティトラッカー)やスマートウォッチのビジネスは、ハードウェアが何百万台売れたかの勝負ではなく、最終的には個人の健康記録を誰が握るかという覇権争いだ。消費者の目は、どうしてもトラッカーのメーカーであるFitbitやMisfit、あるいはスマートフォンのサムスンやアップルに向かうのだが、その裏でマイクロソフト(HealthVault)やDossia、GEヘルスケア、エピックシステムズなどがEHR(電子ヘルスレコード)やPHR(パーソナルヘルスレコード)のデファクトスタンダードを目指し、熾烈な競争を繰り広げている。個人の健康情報がたくさん集まれば、医療機関、医薬品、医療器具だけでなく、保険、サプリメント、食品、スポーツ、遺産相続・管理、墓地に至るまで、広範な産業のマーケティング部門垂涎のデータになる。アップルとサムスンはエピックシステムズとの提携を発表している。

2009年設立のdrchrono社(カリフォルニア州マウンテンビュー)は、クラウド型EHRを提供するスタートアップだが、クラウドストレージのBox社と連携して、医師向けのGoogle Glassアプリケーションを開発した。もちろん患者が同意すればだが、問診や手術の記録をGoogle Glassで撮影して静止画や動画などでBoxのクラウドに残すことができ、患者とシェアすることもできる。問診中に患者の医療記録をGoogle Glassで確認することもできる。

Google Glassに関しては、さまざまな業界で応用事例が続々と登場している。パソコンやタブレットではどうしても両手または片手がふさがってしまうが、医者、警官、航空機の整備士など、仕事中に両手が使えないと不便な人が大勢いるということだ。医師の場合には、NUANCE社の音声認識ソフトを使ってカルテの入力も声で行うというニーズがあるほどで、診察の際に患者とパソコンの両方に向き合っていては、効率が上がらない。

drchrono社のGoogle Glassアプリは、ベータテスト参加者を募集中(米国のみ)。試験中なのでアプリは無料で提供されているが、正式版では有償化されるものと思われる。診察の後、おもむろにカルテに手書きで患部の様子を絵に描いて、所見や数値を記入して紙媒体で保管していた時代から見れば、ウエアラブル機器を使って両手で診察しているそばから記録が正確に残るというのは長足の進歩といえるだろう。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。