2014/06/13
ビッグデータで『犯罪予測』
フィリップ・K・ディックの小説で2002年に映画化された「マイノリティ・リポート」は、3人の予知能力者の力によって起こり得る犯罪を未然に防ぐことで治安が守られているという世界が舞台だったが、オーストラリアでは予知能力者ではなく、ビッグデータを犯罪予測に活用しようとしているようだ。
ACC(オーストラリア犯罪委員会)の「プロジェクトフュージョン」は、過去と現在のトレンドやパターンなどから予測分析を行い、その地域での警察などによる防犯活動を強化するというもの。例えば、「シドニー、ワラビー通り42で近日中に何かが起こる」ことを、現在のさまざまな兆候や過去のデータから予測して、迅速に対応できるようにしておくのが目的で、「犯罪者を犯行前に逮捕する」ような怖い近未来映画とは違うようだ。
特定の犯罪や事件を対象にしているのではなく、それらのリスクの高まりを知って準備しておけば、実際に犯罪が発生した際に即応することができるようになる。関連機関への情報提供も正確かつ迅速になると期待されている。また、犯罪だけでなく事故の予測などにも応用できる。
ちなみに、ACC長官は4月にオーストラリア国内のインターネットと電話のサービス提供事業者に対して、顧客のデータを集めて2年間保管しておくべきだとの意見を表明している。こちらは個々の犯罪への対応が主眼のようだが、そのためには法改正も必要。コストもかかることから、携帯会社の協会AMTA(Australian Mobile Telecommunications Association)は、行政側が負担すべきとの見解らしい。
著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)
NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。